代表的な生薬の1つ「防風(ぼうふう)」は、解熱作用や鎮痛作用などをもち、肥満症を改善する漢方薬「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」にも使用されています。防風および防風通聖散の効果・効能と副作用、名前の意味や特徴などについてもご紹介します。
生薬の「防風」とは

防風(ぼうふう)は夏に白い花を咲かせるセリ科の多年草で、風邪(ふうじゃ)を防ぐ重要な生薬として、お屠蘇(とそ)にも古くから用いられてきました。
その根と根茎の部分を水洗いし、日干ししたものが生薬の防風として使われます。
主な産地は中国北部(黒竜江省や内モンゴルなど)の乾燥地帯。江戸時代に中国から苗が伝わり、幕府の命を受けて現在の奈良県の森野旧薬園で栽培されました。
なお、同じセリ科で刺身のつまや正月料理のあしらいなどに使われる浜防風(はまぼうふう)は、名前や香りは似ていますが別の植物です。
浜防風は中国では北沙参(ほくしゃじん)と呼ばれ、鎮咳・去痰薬として利用されます。防風の効果・効能とは内容が少し異なりますが、日本では防風が入手困難だった時期に代用され、現在でも防風の代用薬として使われることがあります。
- 〔防風〕
- 分類(科・属名)...... セリ科Saposhnikovia属
- 原産地 ...... 中国
- 使用部分 ...... 根、根茎
- 主な作用 ...... 発汗、解熱、鎮痛、消炎
防風の効果・効能
防風の主な効果・効能には、解熱作用、消炎作用、抗炎症作用などがあります。
発汗・解熱作用
発汗・解熱作用は防風の代表的な効果・効能で、古くからカゼによる頭痛、悪寒、発熱や予防薬として使われています。
鎮痛作用
痛みを止める作用もあることから、関節炎、筋肉痛、身体疼痛・リウマチなどにも用いられます。
抗炎症作用
消炎作用もあり、湿疹や皮膚のかゆみ、皮膚が化膿する病気の場合には、薄荷(ハッカ)や荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)などの生薬と合わせて使われます。
その他の作用
上記以外にも、防風の有効成分などには、抗ウイルス作用、血圧降下作用、胃粘膜を守る作用があることが薬理実験で報告されています。
また防風は薬酒に使用される生薬で、独特な香りの精油成分がアルコールによって効果的に引き出されます。
漢方薬「防風通聖散」の効能・効果と副作用
防風を使用した代表的な漢方薬「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」の主な効能・効果と副作用には、以下が挙げられます。
- 〔防風通聖散の効能・効果と副作用〕
- 効能・効果 ...... 体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、皮疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症
- 副作用 ...... 消化器系の症状(腹痛・下痢・胃部不快感)、皮膚の異常(発疹・かゆみ)、全身のだるさ、黄疸、尿量減少、顔や手足のむくみ、高血圧など
防風通聖散には、防風、麻黄(まおう)など一般的には18種類の生薬が配合されています。さまざまなメーカーから発売され、ドラッグストアなどで購入可能です。
防風通聖散は体の代謝を促す漢方薬で、皮下脂肪が多く、便秘がちの人によく合います。胃腸の熱を取り、過剰な食欲を抑える作用もあるので、最近は肥満を解消する薬としても使われています。
防風通聖散は比較的安全なイメージがある漢方薬ですが、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。特に、胃腸の不調や皮膚の異常が報告されることが多くみられます。
副作用とみられる症状があらわれた場合は服用を中止し、必ず医師に相談しましょう。
防風に関するQ&A
防風について、特に多く寄せられる質問についてお答えします。
Q. 防風とはどんな植物?
防風は、夏に白い花を咲かせるセリ科の多年草です。根と根茎の部分を水洗いし、日干ししたものを使います。
江戸時代に中国から伝わり、幕府の命を受けて現在の奈良県の森野旧薬園で栽培されました。なお、同じセリ科で食用に使われる浜防風(はまぼうふう)は、名前や香りは似ていますが別の植物です。
Q.「防風」という名前の由来は?
防風の名前は、古い書物によると「風邪(ふうじゃ)を防いで癒やすのに最要のもの」に由来します。風邪とは漢方医学用語で外部由来の病気の原因(邪)の1つで、ほかに寒邪、暑邪、湿邪などがあります。
Q. お正月のお屠蘇(とそ)に使われているって本当?

防風は、お屠蘇の材料に使われる生薬の一つです。
屠蘇の原処方を考案したのは、中国後漢時代の名医である華佗(かだ)です。当時流行した疫病を抑えるために処方がつくられました。
この原処方には防風は使用されていなかったのですが、その後、中国唐代の名医・孫思邈(そんしばく)がまとめた「華佗神医秘伝」では、原処方に防風が加わった「屠蘇散(とそさん)」が記載されています。
その処方は平安時代に日本に伝来し、当時流行した疫病に加え、健康的な生活を送っていたとはいえない貴族の間では大いに歓迎され、宮中の正月行事として屠蘇散をお酒に浸してつくった「屠蘇酒」が飲用されたそうです。江戸時代にはこの処方が詩歌に詠われるなど広く庶民まで普及しました。正月に邪気を払い、無病息災と長寿を願っていただく風習は今でも残っています。
日本国内では、この屠蘇散に由来する処方が多く生まれましたが、その多くには防風が処方されています。近年まで用いられてきた有名な処方は、医師であり漢方学者の矢数道明(やかずどうめい)が記した「延寿屠蘇散<矢数方>」です。
- 〔延寿屠蘇散<矢数方>〕
- 防風
- 丁子(ちょうじ)
- 桂枝(けいし)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 桔梗(ききょう)
- 山椒(さんしょう)
※ 現在市場に流通している処方は、薬事行政制度との関係から防風は使用できず、浜防風に置き換えられて使用されています。















