高麗人参は滋養強壮作用、疲労回復、病後の回復を早める働きがあるとされ、古くから漢方薬として用いられてきました。最近ではその他にもさまざまな健康効果、美容効果があることがわかっています。
高麗人参がもつ効果・効能と副作用の有無、一般的な摂取方法と注意点、そして高麗人参の歴史や栽培法などについても解説します。
- 〔目次〕
- 高麗人参とは?
- 高麗人参の効果・効能と成分とは?
- 高麗人参を摂取するときの注意点
- 高麗人参の食べ方・飲み方
- 高麗人参のQ&A
- 古くから貴重な薬草だった! 高麗人参の歴史
- 手間暇かけて育てる高麗人参
高麗人参とは?
高麗人参は、多くのサプリメントやエナジードリンクにも使用されている、滋養強壮に優れたことで有名な生薬です。
和名はオタネニンジン(御種人参)。「人参」といっても野菜のニンジンとは別物で、野菜のニンジンはセリ科の植物ですが、高麗人参はウコギ科の多年草。学名「Panax ginseng(パナクス ジンセング)」の「Panax」は、ギリシャ語で「万能薬」を意味する単語です。
原産は中国や朝鮮半島で、「高麗人参」や「朝鮮人参」と呼ばれるのは、産地にちなんでのこと。生薬として使われるのは主に根で、表面も根の中も淡黄褐色をしており、太く肥大した根から細い根がたくさん出ているのが特徴です。
- 〔朝鮮人参〕
- 分類 .... ウコギ科
- 生態 .... 多年草
- 原産地 .... 中国・朝鮮半島
- 使用部分 .... 根
- 主な作用 .... 疲労回復、滋養強壮、病中病後の体力回復、免疫機能の活性化、アンチエイジングなど幅広い効能をもつといわれている
高麗人参の効果・効能と成分とは?
高麗人参の有効成分の代表は「サポニン」です。サポニンはさまざまな植物の根、葉、茎などに含まれていますが、効果は植物の種類によって異なります。
高麗人参に含まれるサポニンは「ギンセノシド(Ginsenosides)」と呼ばれる種類の物質です。10種類以上のギンセノシドが存在し、それぞれが異なる健康効果を示すことが知られています。このほか、パナキシノール、セスキテルペン、ペプチドグリカンなどさまざまな有効成分を持つことが報告されています。
これらが複合的に作用し、健康維持効果を生むと期待されている高麗人参。病気というわけでもないのに元気が出ない人や、なんとなくスッキリしないという人、食欲がない、疲れが取れない、病み上がりで早く体力を回復したいという人が体調を整えるのにもおすすめです。
ここでは高麗人参が持つ多くの効果・効能の中から、特に期待できる8つについてご紹介します。
冷え性(冷え症)の改善と血行促進
冷え性になる原因はホルモンバランスの乱れなどいくつかありますが、特に多いのが血行不良によるものです。手足の末端など部分的な冷えでも、体全体の不調につながってしまいます。
高麗人参に含まれる成分・ギンセノシドは、血管拡張を促進して血液循環を改善する作用があり、冷え性の改善に役立つとされています。
抗酸化作用
私たちの体は大量の酸素を取り入れながら生活をしていますが、その際、体内で常に活性酸素が生じています。活性酸素は細菌やウイルスを撃退する役目をしていますが、増えすぎると細胞を傷付け、老化や生活習慣病の原因になると考えられています。
この活性酸素を消去する能力を抗酸化力と呼びます。
高麗人参のギンセノシドには抗酸化作用があり、活性酸素によるダメージを防ぐのに役立つと考えられています。
ストレス軽減
ストレスは体にさまざまな悪影響を及ぼし、頭痛や肩こり、下痢など不調の原因になります。また、飲酒量や喫煙本数を増やしたり、暴飲暴食を引き起こしたりして、生活習慣病の発症や悪化にもつながることも。
高麗人参のギンセノシドには、中枢神経系に作用してストレスや精神的な負担を緩和する効果があるといわれています。
ホルモンバランスの乱れに
男女ともに更年期はホルモンバランスが乱れ、さまざまな症状が引き起こされます。女性はホットフラッシュや疲れやすさ、抑うつなど、男性はやる気の減退や性欲の減少などが知られています。
高麗人参には幸福感の向上効果があり、摂取することで更年期の抑うつ症状が軽減したという報告があります。
疲労回復と滋養強壮
高麗人参には、体内での代謝を促進してエネルギー生成を助ける働きがあり、古来より、疲労回復・滋養強壮などの効果をもつ民間薬として広く用いられてきました。
さらに、血行促進や赤血球を増やす作用があり、滋養強壮効果が期待できます。
美肌効果・アンチエイジング
高麗人参は古くから肌をキレイにする効果があるといわれており、皮膚に対する有効性の研究も盛んに行われています。
これまでにメラニンの生成阻害による美白効果や保湿作用による抗シワ効果などが報告されており、アンチエイジング製品への応用が期待されています。
肥満予防効果
高麗人参のギンセノシドには脂質代謝促進によるコレステロール値の上昇抑制や、糖代謝促進による中性脂肪の蓄積抑制効果があることが報告されており、肥満予防効果が期待されています。
肝臓や腎臓への効果
高麗人参は肝臓でのタンパク質合成能やコレステロール値上昇抑制などの肝機能向上効果が報告されています。また、腎機能改善作用も報告されています。
高麗人参を摂取するときの注意点
高麗人参による副作用は少ないとされていますが,過剰に摂取した場合や体質によっては、睡眠障害や食欲不振、動悸、発熱,ほてりやめまいなどの症状が出ることもあるようです。特に気を付けたいポイントについて解説します。
高麗人参を飲んではいけない人は?
高麗人参は低血圧の人には良いとされていますが、逆に高血圧の人には向かないという説があります。
妊娠中や授乳中の人にも、ホルモンバランスに影響を与えるなど良くない影響を及ぼす可能性があるので、使用は避けた方がよいでしょう。
また、血糖値を下げる効果があるため、低血糖の人や糖尿病で血糖値を下げる薬を服用して いる方は使用を避けた方がよいでしょう。ほかにも何らかの薬を服用中の人や持病がある場合は、医師と相談した上で利用を決めることをおすすめします。
高麗人参の副作用
不眠症(睡眠障害)は高麗人参の副作用としてもっとも多くみられるものです。また、神経過敏になり、イライラなどの症状を伴う場合もあります。
その他の副作用としては、月経異常や乳房の痛み、心拍数の増加、高または低血圧、頭痛、食欲不振、消化不良などがあります。
これらの副作用が現れたり異変を感じた場合は、摂取を中断して、医師に相談することをおすすめします。
摂取量の目安
高麗人参の摂取量は乾燥根で1日500mg〜1gほどです。効果を高めようとして多量に摂取すると、かえって体に負担がかかることがありますので注意しましょう。
高麗人参が原料となっている漢方薬やサプリメントなどを利用する場合は、製品のパッケージに記載された摂取量を必ず確認し、決められた量を守ることが大切です。
高麗人参の食べ方・飲み方
高麗人参は幅広い効能をもつことから「生薬の王様」と呼ばれることもあり、人参湯(ニンジントウ)、人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)など多くの漢方薬に配合されています。
ほかにも下記のような形で摂取することが可能です。
健康食品やサプリメントで摂取する
高い健康効果を持つ高麗人参は、多くの健康食品やサプリメントにも配合されています。ドリンク、粉末、エキス、タブレット、カプセルなどいろいろな形状のものがありますので、自分のライフスタイルにあわせて飲みやすいものを選びましょう。
ビタミンなどほかの栄養素と一緒にとれるものも多いので、栄養バランスが気になる人にもおすすめです。
料理やお茶に取り入れる
高麗人参は酒に漬けたり、煎じてお茶にするなど、さまざまな摂取方法があります。
韓国では家庭料理で使用することも多く、鶏に高麗人参やもち米などを詰めて煮込む「参鶏湯(サムゲタン)」は栄養豊富で夏バテによいともいわれています。
料理に使う場合にも、エキスや粉末を利用すれば手軽に高麗人参をとることができます。
高麗人参のQ&A
Q. 高麗人参は寝る前に飲むと効果的?
基本的には、食品ですのでいつ飲んでも問題ありません。空腹時の食前や食間(食後2~3時間後)、朝食前やおやすみ前に飲むことも可能です。
ただし人によっては、寝る前に飲むと眠れなくなることがあります。その場合は避けた方がよいでしょう。いずれの場合も、自分の体に合った使い方が大切です。
Q. 高麗人参・朝鮮人参・オタネニンジンの違いは?
呼び方が違うだけで、すべて同じものを指しています。野菜の人参と区別して「薬用人参」と呼ぶ場合もあります。
ただし、栽培した地域が異なると機能性成分に違いがあることが知られています。
ちなみに韓国では高麗人参を「고려인삼(コリョインサム)」、英語ではginseng(ジンセン)またはAsian ginseng(アジアン・ジンセン)と呼びます。
古くから貴重な薬草だった! 高麗人参の歴史
高麗人参は古くから不老長寿の薬として重宝され、秦の始皇帝が求めた不老不死の生薬は高麗人参であったともといわれています。しかし、元々野生で数が少ないことから、秦の時代には大変に希少価値が高いものでした。
日本には奈良時代に伝わっていたようですが、貴重な薬草であったため使用できるのは一部の人に限られていました。
江戸時代になると朝鮮から献上されたニンジンの種子を使って、国内での栽培の試みが始まりました。将軍徳川吉宗は各藩に高麗人参の種子を分け与えて栽培を奨励しました。
そのため、高麗人参は将軍より賜った種で育てた人参ということで、オタネニンジン(御種人参)と呼ばれるようになったのです。
手間暇かけて育てる高麗人参
栽培が難しい上、手間暇かけてもほんの少しずつしか育たない高麗人参。
栽培年数とともに有効成分の含有量も増えるため、栽培年数によって「1年根」~「6年根」の6つに分類されます。3年根以下は薬効が十分でないため収穫されず、市場に出回るのは主に4~6年根です。
高麗人参の栽培の際は作付前に1~2年間畑をやすませて土壌改良することが重要で、ここでも手間がかかります。
また、加工法も「水参(すいじん)」「白参(はくじん)」「紅参(こうじん)」の3つがあります。
水参(すいじん)は畑から掘り起こした生の状態。 白参(はくじん)は水参を乾燥させたもの。 紅参(こうじん)は水参を蒸気で蒸した後に自然乾燥させて加工したもので、韓国では「ホンサム」と呼ばれることもあります。
紅参は健康成分の含有量が増えるため、貴重な上級品として人気です。ただし、加工に時間と手間がかかるため、市場に出回るのはわずか。その中でも「6年根を使用した紅参」は希少性があり、また薬効が高いことから、価値が高いとされています。
日本における高麗人参の栽培は、主に長野県や福島県、島根県などで行われています。
高麗人参の苗はインターネットなどでも購入できますが、直射日光と高温多湿を嫌うため、栽培するのはそれほど簡単ではありません。
漢方に使用される生薬の中では高価で、栽培中の盗難防止対策が必要となることもあるようです。