秋の養生には、夏に消耗した気と潤いを補うことが大切です。呼吸機能をコントロールしている秋の臓「肺」は外気と接しているため、乾燥が苦手。特に空気が乾燥して気温も低くなる中秋から晩秋にかけては「肺」を潤す食材を取り入れましょう。
※薬膳の基本の考え方については「薬膳とは?いつもの食材でできる薬膳の基本」をご覧ください。
また、秋の食事では冬に向けて栄養を蓄えることも重要なポイント。「酸味」には収斂(しゅうれん)作用があり、エネルギーを体にとどめてくれます。旬の栗やいも類、穀類などエネルギーを補う食材とあわせてとりましょう。
さらに、サバやサンマなどの旬の魚は、気を養う上にビタミン・ミネラルが豊富。これら旬の食材を取り入れた薬膳ご飯で、寒くなるこれからの季節に備えましょう。
◯秋の養生食材
サバ/れんこん/ねぎ/春菊/ゆり根/ピーナッツ/白きくらげ/梨/さつまいも/ぶどうなど
- 〔目次〕
- 滋養たっぷり「サバと小松菜の生姜風炒め」
- 食後血糖値を上げにくくする「たっぷり豆と根菜の中華風スープ」
- 香りで気を巡らせる「春菊と焼きのりの和え物」
- イライラしたときにおすすめ「ゆり根とじゃこの炊き込みご飯」
- だる重い秋バテ対策に「酢豚風常備菜」
- 自分に必要な食材をプラスして食べる「オートミール朝食」
- 夕食後のデザートに「カスタードのピーナッツがけ」
滋養たっぷり「サバと小松菜の生姜風炒め」
サバには気を補う作用の他に、血液をサラサラにする効果もあります。腸を潤す作用のある小松菜と辛味のある生姜を合わせた、滋養たっぷりの一品。
- 2人分(1人分270kcal/塩分1g)
- サバ(切り身。骨は抜く)...180g ■A
- 酒..........................................大さじ1
- しょうゆ...............................大さじ1
- 生姜汁..................................大さじ1/2
- 小松菜..............................4株(150g)
- ねぎ......................................1/2本
- 小麦粉...................................適量
- オリーブオイル.....................大さじ1
- 生姜.......................................5g
- 酒..........................................大さじ1
- しょうゆ...............................大さじ1/2
- みりん...................................大さじ1/2
〔作り方〕
- サバはAに5~10分漬けておく。小松菜は3cmの長さに切る。ねぎは斜め薄切りにする。
- サバを一口大に切り、汁気を切って小麦粉をまぶしておく。フライパンにオリーブオイルを熱し、千切りした生姜を入れて香りが出るまで炒めたら、サバを加えて両面色よく焼く。
- サバを端に寄せ、小松菜の軸を炒める。ねぎを加えて軽く炒めたらサバを戻し、小松菜の葉を入れて酒を振り、蓋をして30秒蒸らす。しょうゆ、みりんを回しかけ、全体に混ぜ合わせる。
○アドバイス
・小松菜は下ゆでしても良いでしょう。
・サバは鮮度が落ちると臭みが強くなるため、新鮮なものを手に入れましょう。
・シメサバを使用しても良いですが、その際は材料のAからしょうゆを抜きます。
食後血糖値を上げにくくする「たっぷり豆と根菜の中華風スープ」
豆類や根菜類には食物繊維が豊富なため、血糖値ケアに有効。また、れんこんには「肺」を潤す作用もあります。風邪予防になるねぎや、体を潤すごま油の香りが食欲をそそるスープです。
- 〔材料〕2人分(1人分90kcal/塩分0.4g)
- 豆水煮缶.........................1缶(110g)
※ゆで大豆やむし大豆などお好みの豆でOK
■A
- 人参.........................................40g
- れんこん..................................40g
- 生姜.........................................4~5枚
- 水.............................................400ml
- 酒............................................大さじ1
- 鶏がらスープの素...................小さじ1
- 塩・こしょう..........................各少々
- 白ねぎ.....................................大さじ1
- ごま油.....................................小さじ2
- 小ねぎ(彩り用)....................少々
〔作り方〕
- 人参、れんこんは1cm角に切り、生姜は薄切りにする。
- 鍋にAを入れて火にかけ、沸騰したら鶏がらスープの素と豆水煮を加える。野菜がやわらかくなるまで煮たら塩、こしょうで味をととのえる。
- 器に粗みじん切りにした白ねぎとごま油を入れて2.を注ぎ、小ねぎを散らす。
香りで気を巡らせる「春菊と焼きのりの和え物」
「肺」を潤し、気を巡らせる作用のある春菊がたっぷりととれる一品。のりとごまの香ばしさに箸が進みます。
- 〔材料〕2人分(1人分45kcal/塩分0.4g)
- 春菊........................................1束
- 焼きのり.................................1枚
- ごま油.....................................大さじ1
- 塩............................................少々
- 炒りすりごま(白)................小さじ2
〔作り方〕
- 春菊は軸と葉に分けて茹で、冷水に取る。軸は斜め薄切りに、葉は水気を絞って食べやすい長さに切る。
- ボウルにごま油と塩を入れて混ぜてから、春菊、すりごま、6~7cm角にちぎった焼きのりの順に加え、さらによく混ぜる。
イライラしたときにおすすめ「ゆり根とじゃこの炊き込みご飯」
精神を安定させ、安眠を促すゆり根と、脳を落ち着かせるトリプトファンを含むじゃこを合わせた養生ご飯です。
- 〔材料〕2人分(1人分346kcal/塩分1.15g)
- ゆり根......................................80g
- じゃこ......................................大さじ1
- 米.............................................1合
- 水.............................................180g
- 三つ葉の軸...............................3本
〔作り方〕
- 米を研いでざるにあげる。ゆり根は洗って、汚れている所を切り落とす。じゃこは酒をふって混ぜておく。
- 炊飯器に米と水、じゃこを酒ごと加えてよく混ぜる。上にゆり根をちらして炊く。
- 炊きあがったら、5分蒸らし、ゆり根が崩れないように混ぜ合わせ茶碗に盛る。三つ葉の軸を刻み、散らす。
○アドバイス
・ゆり根が手に入らない場合、水を牛乳に替え、固形スープの素(ブイヨンまたはコンソメ)と塩を加えて炊いても良いでしょう。牛乳にも安眠を促す作用があります。
・上に散らす三つ葉は、ゆずの皮を刻んだものにしても美味しくいただけます。
だる重い秋バテ対策に「酢豚風常備菜」
疲労回復に有効な豚肉とエネルギーを補うじゃがいもに、エネルギーを体にとどめる酸味を含むパイナップルと酢を加えた酢豚風の常備菜。皮膚粘膜を保護して潤いを与えるピーマンや人参も入った、秋にぴったりの一品です。
揚げないので簡単に作れて、さっぱりいただけるのが嬉しいポイント。
- 〔材料〕8食分(1食分 147kcal/塩分1.0g)
- 豚肉(ひき肉またはこまぎれ肉)...250g
- 酒.......................................................大さじ5
- 生姜汁................................................小さじ2
- 玉ねぎ.................................................1個
- ピーマン.............................................4~5個
- 人参...................................................小1本
- じゃがいも.........................................1個
- パイナップル.....................................120g
- 砂糖...................................................大さじ1
- 酢.......................................................大さじ3
- しょうゆ............................................大さじ3
- オリーブオイル.................................大さじ4
- 長ねぎ(みじん切り)......................1/4本
- にんにく(みじん切り)..................小1片
- 片栗粉(酒小さじ1で溶く)..........小さじ1
- ■スープ
- 鶏がらスープの素.............................小さじ1
- 湯...................................................... 50ml
- 〔作り方〕
- 豚肉に酒大さじ2と生姜汁を加えてなじませておく。玉ねぎ、ピーマン、人参、じゃがいも、パイナップルを1cm角に切る。じゃがいもは水にさらしてから水気を切り、ラップをかけて電子レンジで1分加熱する。
- 砂糖、酒、酢、しょうゆ各大さじ1とスープを混ぜておく。
- フライパンにオリーブオイル大さじ2を入れて温める。そこに人参、じゃがいも、玉ねぎ、ピーマンの順に加えながら炒め、火が通ったら一度取り出す。
- フライパンを拭いてから残りのオリーブオイルと長ねぎ、にんにくを入れて中火にかけ、豚肉を入れて炒める。肉の色が変わったら残りの酒、2.を加えて炒める。
- 3.を加え、残りの酢としょうゆ、片栗粉を加えて全体に混ぜ合わせ、パイナップルを加えて火を止める。
酢豚風常備菜をアレンジ! 「あんかけ焼きそば」
- 〔材料〕2人分(1人分 249kcal/塩分1.3g)
- かた焼きそば.....................................1人前
- 酢豚風常備菜.....................................140g
- 〔作り方〕
- かた焼きそばを食べやすく割って器に盛り、温めた酢豚風常備菜をかける。
〇ポイント
・酢豚風常備菜はかた焼きそば以外に、ご飯やうどん、冷奴などにのせても美味しくいただけます。
自分に必要な食材をプラスして食べる「オートミール朝食」
エネルギーを補うオートミールは、水溶性食物繊維も豊富なので腸内環境を整えてくれます。さつまいもや甘栗もオートミール同様エネルギーを補う作用があります。また、バナナは体に潤いを与えてくれます。
クコの実やナツメなど薬膳食材が手軽にとれて嬉しい朝食メニューです。
ドライフルーツやナッツは以下のように、自分に必要なものを選んでアレンジするとよいでしょう。
〇体を潤したいとき
・松の実
〇エイジングケアをしたいとき
・クコの実
〇貧血予防したいとき
・干しぶどう
・プルーン
・ナツメ
〇脳の老化予防に
・クルミ
- 〔材料〕2人分(1人分 453kcal/塩分0g)
- 水....................................................300ml
- オートミール(インスタント)....90g
- ドライフルーツ..............................大さじ2
- さつまいも......................................1/6本
- 甘栗.................................................6個
- バナナ(輪切り)...........................1本
- ナッツ.............................................10g
- 豆乳(または牛乳).......................100~200ml
- はちみつ(お好みで)....................大さじ1
- 〔作り方〕
- さつまいもを蒸し、半月切りにする。
- 小鍋でお湯を沸かし、オートミールを加えてよく混ぜる。ドライフルーツ、さつまいも、甘栗を加えて一煮立ちしたら火を止め、バナナを加えて混ぜる。
- 器に盛り、ナッツを散らし、お好みで豆乳とはちみつをかける。
ちなみに、最近話題のオートミールは料理の味を邪魔しないのでさまざまな料理に加えて楽しめます。 例えば、お椀に温かい味噌汁を注ぎ、オートミールでお好みの量を加えると、食物繊維たっぷりの簡単おじや風に。朝食以外でも大活躍の栄養満天食材です。
お味噌汁のオートミールおじや風
夕食後のデザートに「カスタードのピーナッツがけ」
牛乳にはリラックス作用をもたらすカルシウムが豊富で、安眠に有効です。ピーナッツの種子は血液を補い、皮は血の巡りを促す作用があります。夕食のデザートにぴったりの一品。
- 〔材料〕バット1台分(1/12切れ102kcal/塩分0.05g)
- 卵黄...........................................5個
- 砂糖...........................................大さじ3
- 小麦粉........................................60g
- 牛乳...........................................500ml
- バターまたはオリーブオイル....適量 ■A
- 皮付きピーナッツ..................大さじ2
- 砂糖........................................大さじ2
〔作り方〕
- バターまたはオリーブオイルをバットに塗っておく。
- 卵黄と砂糖をよくすり合わせてクリーム状にする。小麦粉、人肌に温めた牛乳の順に加えて混ぜ、ざるでこす。
- 2.を火にかけ木べらで混ぜ、固まりかけたら勢いよく均等にかき混ぜる。沸騰したら火を止め、バットに入れ、表面を平らにする。1時間ほど冷やし固める。
- 3.を切り分けてミキサーにかけたAをまぶして器に盛る。
○アドバイス
・バットは15×13.5×4.5cmのものを使用しています。弁当箱など耐熱のプラスチック容器でも代用可能です。
・ピーナッツはミキサーにかける代わりに、すり鉢ですっても良いでしょう。
この方にお話を伺いました
料理研究家 管理栄養士 国際中医薬膳管理師 植木もも子 (うえき・ももこ)

中医学や雑穀などを取り入れた、 美味しいだけでなく、体によい料理が評判。『からだを整える薬膳スープ』(マイナビ)、『いちばんやさしいさかな料理の本』(日東書院)他著書多数。