教えてくれた先生
天気痛ドクター・医学博士佐藤 純(さとう じゅん)先生
医師・医学博士。名古屋大学教授を経て、中部大学大学院教授、愛知医科大学客員教授。
1987年、アメリカ・ノースカロライナ大学に留学。慢性疼痛と自律神経の関係について研究を行う。2005年より愛知医科大学・学際的痛みセンターで、日本で唯一の「天気痛外来」を開設。天気痛研究・診療の第一人者としてNHK「ためしてガッテン」などさまざまなメディアで活躍する。著書に『天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!』(扶桑社)、『天気痛』(光文社新書)、『「雨ダルさん」の本』(文響社)など。
最近、なんだか頭痛が続いていて、ちょっとフラフラするし調子が悪くて…。外はずっと雨だし気分も沈んじゃう。
その痛み、もしかして「天気痛」が原因かもしれませんよ。
「天気痛」ですか? 天気と頭痛に何か関係があるのですか?
昔から「雨が降ると関節が痛い」とか「梅雨になると古傷が痛む」とか言うでしょう。それはただの言い伝えではなく、天候の移り変わりによって人間の体調に変化が現れることは、近年の研究で明らかになっているのです。私が行った大規模アンケート調査を元にした推計ですと、日本人の1,000万人以上が天気痛の症状を自覚しているという結果にもなっているのですよ。
推定1,000万人!!その天気痛が起きやすい季節ってありますか?
天気痛は春〜梅雨、そして秋など気圧の変化が多い時期に表れがちです。低気圧が続く梅雨はめまいや痛みなどの症状が起きやすい時期なので要注意ですよ。
どうして気圧が変化すると不調が起きやすいのですか?
それは気圧の変化によって体内の自律神経が乱れてしまい、それが痛みやだるさなど不調の原因となっているのです。今回は自律神経が乱れにくくなるモーニングルーティーンをご紹介します。さらに乱れた自律神経を整えるツボを取り入れることで効果アップが期待できますよ。
やった〜! 早速トライしてみます。
天気が乱れると体調も悪化する原因は?
天気が悪化するに従って体調も崩れてしまう理由は、気圧の変動にあります。天気の変化とともに気圧も変動していますが、その変化を感じるセンサーが、耳の奥にある内耳と考えられています。
内耳が急激な気圧の低下や上昇を感じると、体を緊張させる「交感神経」と、体をリラックスさせる「副交感神経」からなる自律神経のバランスが乱れてしまいます。交感神経が活発になりすぎると痛みの神経を刺激し、頭痛や関節の痛みなどが起きてしまいます。一方、副交感神経が活発になりすぎると、倦怠感や気分の落ち込みを感じます。「天気痛」が起こりやすい方は、内耳が敏感で、気圧の変化を感じ取りやすい性質を持っている状態と言えます。
この内耳の血流が悪くなって、気圧のセンサーや自律神経に影響していることも少なくありません。そのため、両耳を指で軽くつまみ、上下や前後に引っ張ったり、前や後ろにくるくると回したりする耳マッサージを行うことも効果的です。内耳の血流が良くなると自律神経が整い、天気痛の予防や改善につながりますよ。
天気痛さんのためのモーニングルーティーン
朝の時間には、自律神経を整えるためのアクションが集まっています。
忙しい時間帯でもできるモーニングルーティーンを上手に取り入れて、天気痛になりにくい体を目指しましょう。
モーニングルーティーン その1
朝目覚めたらまずは朝日をしっかり浴びること。眠りを促すホルモン・メラトニンが下がってきて、心と体のバランスをとるセロトニンが作られることで覚醒が促されて、体が動くようになってきます。朝日の刺激が体内時計の調整に役立ち、必然的に自律神経の安定にもつながります。
モーニングルーティーン その2
目が覚めてもすぐに起きて活動するのは億劫ですよね。そんなときは寝床でもできる天気痛改善ストレッチを行って、徐々に体をスイッチオン。そもそも天気に左右されにくい体にするためには、日頃から体を動かし、筋肉を柔らかくしておくことが大事です。このストレッチはベッドなど寝床でできるのでお手軽さが特徴。睡眠中は同じ姿勢を続けることが多いので、意外にも体は固まってしまっています。ボールを使うことで普通のストレッチでは伸びにくい、深部の筋肉にも働きかけます。筋肉に直接圧を加えて伸ばし、緊張をほぐします。目覚めて慌てて起き上がると交感神経が一気に上がってしまうので、ストレッチをしてから活動を始めたほうが体にも負担がかかりません。
横になった状態で硬式テニスボールに体を乗せ、ゆっくりと圧を加えていきます。頭のつけ根、首、あご下、頬、耳の下、肩甲骨の周辺など、各箇所で気持ちいい部分を探すように少しずつずらしながら行ってみましょう。
モーニングルーティーン その3
忙しさやダイエットを理由に朝食をとらない人もいますが、それは天気痛対策としてはご法度です。朝は簡単なものでよいので必ずとりましょう。
朝食前に1杯の水を飲むと胃腸の神経が自然と刺激され、消化吸収もよくなります。
胃が空っぽの状態で食べる朝食は、1日のなかでもっとも栄養に気を配りたいところです。特に代謝を促し自律神経を整える働きのあるビタミンB1と、ストレスなど心の不調に役立つマグネシウムや亜鉛などは、天気痛持ちなら是非とも取り入れたい栄養素です。さらにミネラルは天気痛と密接な関係のある内耳に効果があるといわれています。
それでは具体的に、忙しい朝でも手軽に準備できる「お天気御膳」をご紹介します。
ご飯は「玄米ご飯」が理想的。それに「長ネギの味噌汁」と「納豆」、「海苔」を加えた昔ながらの和食がおすすめです。玄米ご飯はまとめて炊いて冷凍しておいたもの、長ネギの味噌汁はインスタントでも構いません。
この献立を紐解くと、自律神経を整えるビタミンB1は玄米や長ネギ、豆類に多く含まれています。長ネギにはアリシンという成分が含まれており、これはビタミンB1の吸収を助ける効果もあるので、より効果的です。また、亜鉛やマグネシウムを多く含む食材というと、海苔や胡麻、豆腐や油揚げ、煮干しなどが挙げられます。つまり、和食は自律神経を安定させる栄養素の宝庫といえるのです。旬の食材を使った和食を毎日食べることが、安定した自律神経の土台になると思います。
モーニングルーティーン その4
朝食後はお茶かコーヒーを飲んで一服するのがおすすめです。それは天気痛の原因の一つに、むくみが関係しているからです。むくみは余分な水分が体内にある状態のため、血行不良などを引き起こし、結果として自律神経の乱れを引き起こしてしまいます。
カフェインを多く含むコーヒーやお茶を飲むと利尿効果により、体内の余分な水分が外に排出され、むくみの原因を減らしてくれます。また、コーヒーやお茶は副交感神経から交感神経にうまく切り替える働きもあるので、朝の一杯は精神的な面からも効果的です。
\仕事や家事の合間にできる/
天気痛にプラスワンの対処法
手首にある酔い止めのツボを押してみよう
手首にあるツボ「内関(ないかん)」の主な働きは、自律神経の働きを整えること。鍼灸治療においては乗り物酔いやめまいの治療をはじめ、ストレスが原因となる胃腸の不調やうつ症状、慢性痛の緩和など、幅広い心身のトラブルに対して使われています。
内関の見つけ方
手首の内側にあるしわの真ん中から、ひじ方向に指3本分下がったあたりを親指の腹でゆっくりと押してみます。ズーンと響くような感覚があれば、そこが内関のツボです。内関は両腕どちらにもありますが、ツボには左右差があるので、より響く方を重点的に押した方がいいでしょう。
内関の位置は日によって微妙に変わることがあり、響く腕が左右入れ替わったりもするので、その時々で探してみてください。
内関の押し方
親指の腹を使って3秒間押し、その後3秒間使ってゆっくり力を抜いていきます。そのセットを3〜5回繰り返します。呼吸は押すときには息を吐きながら、そして力を抜くときに吸い込むようにします。このツボ押しは自律神経を整えるためのものなので、力を抜いてリラックスして行いましょう。
押すタイミングは?
1日に何回やってもよいですが、まずは1日に3〜5回を目安に取り組んでみましょう。また、めまいがするなど体調に変化があったときや、天気が崩れそうなタイミングなどに予防法として押すのもいいでしょう。
爪楊枝を使った裏技
指だけでなく、爪楊枝の尖っていない方を使ってつんつんと刺激を繰り返す「爪楊枝ツボ刺激」も効果的です。これは予約の取れない鍼灸師として知られ、私とともに内関のツボの研究をされている、若林理砂先生が提唱されている方法で、鍼(はり)に近いピンポイントの感覚でツボを押すことができおすすめです。
いままで自分でも理由が分からなくて、まわりの人にも理解してもらえなかった体の不調が、天気が関係していたのかもしれないと知ってなんだかすっきり。
バランスのとれた朝食を食べることや、徐々に体を目覚めさせるなどモーニングルーティーンは大事だね。
いままではぎりぎりまで布団に入っていて、起きたら10分でバタバタと出かけていたから反省しないとね(笑)。
そうと分かれば、朝ご飯に美味しい和食を作ってくださーい。食後のコーヒーも忘れずにね♪