病気が治ったばかりで体力が戻っていないときは、いつも通りには活動ができません。無理をせずしっかりと休息しながら、消化の良い食事で体に必要な栄養素を摂取し、徐々に日常生活を取り戻していくとよいでしょう。病み上がりのときの食事のとり方やおすすめレシピを紹介します。
病み上がりとはどんな状態?
病み上がりとは病気が治ったばかりの状態を指し、元通りに回復したつもりでいても実は体力が戻っていないということも。
免疫力や消化機能などが低下していることが多く、下痢や発熱があった場合、水分やエネルギーも不足しがちです。十分な食事や運動ができないことで、栄養不足や筋力低下のリスクもあります。
病気が治った後は、まずは体力を回復させることが大切。そのためにも食事は重要なのです。
病み上がりに意識してとりたい栄養素と食べ物
炭水化物
炭水化物は、消化酵素によって糖質と食物繊維に分けられます。糖質は体温の維持や活動のためのエネルギー源になるもので、不足すると疲労やだるさが生じます。
炭水化物は、米や小麦などの穀類、いも類といった食品に多く含まれています。
タンパク質
皮膚や筋肉、神経伝達物質、ホルモンなど、体のあらゆる組織の材料となるものであり、エネルギー源でもあります。そのため、弱った体や免疫力、体力の回復に役立ちます。
タンパク質は、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などに多く含まれています。
ビタミンA
皮膚や粘膜の健康をサポートし、抵抗力を高めるため感染症の予防に役立ちます。病気で弱った粘膜の修復にも有効で、消化器の粘膜を整えて栄養の吸収も助けます。
ビタミンAは、レバー、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜などに多く含まれています。
ビタミンC
ストレスに対処するホルモンの生成にかかわります。また、疲労回復や傷の修復に役立つほか、白血球の働きを強化して免疫力を高めます。
ビタミンCは、パプリカやトマトなどの緑黄色野菜、柑橘類やキウイなどの果物、じゃがいもなどに多く含まれています。
ビタミンB群
ビタミンB群は、8種のビタミンの総称で、いずれもエネルギー代謝を助け、疲労回復に役立ちます。
赤身の魚や肉、卵、牛乳、納豆、バナナ、未精製の穀類などに多く含まれています。
病み上がりにおすすめの食事・レシピ
病み上がりには、消化の良い食事であるおかゆやうどん、タンパク質のとれる卵や乳製品などがおすすめです。
以下で詳しく紹介します。
消化に良い食事でお腹に優しく
おかゆ、うどん
炭水化物は、消化しやすいおかゆやうどんなどでとるのがおすすめです。
食物繊維の多い玄米や味付けが濃く脂質も多いスパゲティ、ラーメンは胃腸の負担になるため避けたほうがよいでしょう。
鶏むね肉や白身魚、豆腐など
タンパク質は消化しやすい鶏むね肉やささみ、白身魚、はんぺん、卵、豆腐などでとるとよいでしょう。
脂身の多い肉や脂質の高い揚げかまぼこなどは、胃腸に負担がかかるので控えめに。
汁物
ビタミンB群やビタミンCは水溶性のビタミンです。そのため、野菜の栄養を余すことなく取り入れるには、スープや味噌汁などの汁物にして食べるのがおすすめです。
卵や乳製品
卵や乳製品は、ビタミンAやタンパク質などさまざまな栄養素が含まれる、"栄養密度"が高い食品です。いろいろなものを食べるのが難しい場合は、このような食品を意識してとりましょう。
病み上がりにぴったりな消化の良い食べ物は以下の記事でも詳しく紹介しています。
スタミナ回復のおすすめレシピ「中華風ふんわり卵がゆ」
- 〔材料〕2人分
- ご飯 ...... 1膳
- 水 ...... 500~700ml
- ブロッコリー ...... 2房
- かぼちゃ ...... 2片
- きのこ ...... 15g
- 卵 ...... 2個
- 鶏ガラスープ(顆粒) ...... 小さじ2
- しょうゆ ...... 小さじ1(香りづけ程度)
- ごま油 ...... 数滴
- おろし生姜 ...... お好みで
- 〔つくり方〕
- お湯を沸かし、小さく切った野菜やきのこを入れる。
- 1にご飯を加え、野菜に火が通り、ご飯が水分を吸ったら調味料を入れて、卵でとじる。
- 器に盛り付けてごま油をたらし、お好みでおろし生姜をのせる。
病み上がりは食事法を工夫しよう!
食事のとり方とタイミング
食欲がないとき
無理をせず、ときには食べないという選択をしてもよいでしょう。その場合、食事で補えていた水分の摂取量も減るので、意識して水分をとるようにしてください。
少しでも口にできるなら
喉越しがよく必要な栄養素を含んだゼリー飲料などを活用してもよいでしょう。また、少しずつしか食べられないときは、食事の回数を増やすのも一案です。
ただし、就寝前の食事は睡眠の妨げになり、体力の回復を遅らせる可能性があるので避けましょう。
少しでも消化をよくするために
よく噛むことも消化を促すのに有効です。食べ過ぎは体に負担をかけますが、よく噛むことは食べ過ぎの予防にもなります。
食事を用意するときのコツ
食材は小さく、やわらかく
調理の際、食材を小さく切ったり、やわらかく煮たりすると消化しやすくなります。
油ものはなるべく避ける
油の多い食事は胃腸に負担をかけるため、揚げ物や炒め物より、煮物や蒸し料理、しゃぶしゃぶ、鍋、スープなどがおすすめです。
できるだけ種類を多くする
体力が回復せず調理するのがつらい場合は、コンビニやスーパーのお総菜、レトルト、フリーズドライの食品なども活用してみてください。
その場合も、「消化に良い」「胃腸に負担をかけない」「栄養バランス」を意識し、できるだけ単品ではなく、量は少なくても主食、主菜、副菜を用意しましょう。
病み上がりのときに避けたい食べ物
病み上がりのときは、胃腸に負担のかかる次のような食べ物は控えたほうがよいでしょう。
食材について詳しくは「薬用養命酒Q&A」のQ6の回答にある一覧表をご参考ください。
- 〔病み上がりのときに避けたい食べ物〕
- 味の濃いもの
- 辛味や酸味が強いもの
- 脂質や食物繊維の多いもの
- 熱すぎたり冷たすぎたりするもの
また、生野菜や刺身など生で食べる食品は加熱処理をしないため細菌などが付着している可能性があります。免疫力が低下しているとき、胃腸が弱っているときは避けるようにしてください。
この方にお話を伺いました
順天堂大学医学部附属浦安病院 管理栄養士、公認スポーツ栄養士、健康運動指導士 小池(本多) ゆみえ (こいけ(ほんだ) ゆみえ)

病院に約10年勤務したのち、フリーランスとなる。現在は大学病院の非常勤で栄養指導に従事しながら、食品メーカーでの健康相談や専門学校の講師、企業のセミナー講師、記事の執筆・監修など幅広く活動中。スポーツ栄養ではプロ野球選手、大学や高校野球部のサポートやスポーツ小学生の保護者への食事アドバイスを行う。