胃腸はとてもデリケートな臓器であり、さまざまな原因によって機能が低下してしまいます。食欲がないからといって食事をおろそかにしていると、栄養補給が十分にできず、健康を損なってしまう恐れがあります。「食べたくないからしょうがない」と放置せず、何らかの形で栄養補給しましょう。
本記事では、食欲がない原因と食欲がないときにおすすめの食べ物やレシピを紹介します。
食欲がない原因とは
1:ストレス・疲労
ストレスや疲労によって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の働きが損なわれ、食欲も低下します。ただし、逆に食欲が増す場合もあります。
以下の記事で、ストレスの緩和が期待できる瞑想のやり方を紹介しているので、参考にしてください。
2:夏バテ
夏バテすると自律神経が乱れて胃腸の不調が現れやすくなり、食欲が落ちます。
3:生活習慣の乱れ
運動不足や睡眠不足といった生活習慣の乱れは、自律神経のバランスを崩し、食欲にも影響します。また、食べ過ぎや飲み過ぎ、冷たいもののとり過ぎも、胃腸の負担となって食欲不振に陥る場合があります。
4:妊娠
妊娠するとホルモンバランスが変化し、胃腸の働きが低下して食欲不振に陥ることがあります。症状には個人差があり、中には妊娠初期に食欲が増す「食べづわり」の人も。多くの場合、つわりが落ち着くと食欲も元に戻ります。
5:加齢
年齢を重ねると、以前のように体を動かしにくくなります。運動量が減少すればお腹も空きません。食べなければ栄養不足となり、筋力が落ちて、ますます動かなくなるという負のスパイラルに陥り、フレイル(加齢による心身機能の低下で虚弱になること)のリスクも高まります。また、加齢による消化吸収機能や味覚の低下も、食欲が落ちる原因になります。
6:何らかの病気
病気による消化機能の低下や服用している薬の影響、味覚・嗅覚の異常、呼吸のしにくさが食欲不振につながることがあります。また、虫歯や歯周病など口腔内の不調も原因になります。
食欲がないときにとりたい食べ物
食欲がないときにとりたい栄養素
三大栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質
身体活動のエネルギー源であり、体のさまざまな組織の材料でもあるため、食欲がなくても積極的にとる必要があります。
ビタミンB群やビタミンC、ビタミンK、ミネラル
体にため込んだり、体内で十分な量をつくったりすることができないため、食品などで摂取する必要があります。
ビタミンB1やクエン酸
食欲増進効果があります。食欲がないときは意識してとるとよいでしょう。
食欲がないときにおすすめの食べ物
食欲がないときは、食欲を増やす効果があるゴーヤ、セロリ、トマト、ナスや炭酸飲料、さらに胃を刺激するにんにくや生姜などがおすすめです。
以下で詳しく紹介します。
食欲を増進させる作用のあるもの
ゴーヤやセロリ、トマト、きゅうりなどの野菜には、食欲を増進させる成分が含まれています。
少量の炭酸飲料
炭酸飲料は胃や腸を刺激し、活性化する働きがあります。食前に少量飲むことで食欲増進に。ただし飲み過ぎると逆にお腹が満たされてしまうので注意しましょう。
味のアクセントとなり胃を刺激するもの
スパイスや酸味のある食べ物、にんにく、生姜、紫蘇、みょうがといった香味野菜は味に変化をつけたり、胃の粘膜を刺激して胃液の分泌を促したりして、食欲をアップさせます。
食欲がないときの栄養補給法
食べやすくなる調理のコツ4選
1:口当たりや喉越しをよくする
おかゆやお茶漬け、うどんやそうめんなどの麺類、スープや味噌汁、ゼリー寄せや煮こごり、スムージーなど、口当たりや喉越しがよいものは、食欲がないときでも口にしやすいでしょう。
2:味に変化をつける
スパイスや薬味などで味に変化をつけると、食欲が刺激されます。
3:食材を小さく、やわらかくする
食材を小さく切ったりやわらかく煮たりすることで、食べやすく消化もよくなります。少量でも栄養がとれるように、いろいろな食材を使うのがおすすめです。
4:食べやすい温度で提供する
温かいものを食べて胃腸の冷えを改善すると、食欲が出ることも。ただし、温かいと食べにくい場合は、無理をしないようにしましょう。例えば味噌汁も、暑い季節は冷まして氷を入れ、冷や汁風にすると食べやすくなる場合があります。
味噌汁の場合、豚汁のような脂っこい具材は避け、みょうがなどで風味を付けると美味しくいただけるのでおすすめです。
食欲がアップする食べ方のコツ5選
無理をせず少量ずつ。食べる回数を増やす
少量ずつでも食べる回数を増やせば、ある程度の量を食べることも可能です。おやつを食べてもよいでしょう。
「好きなもの」を食べる
好きなものであれば、食欲がなくても食べられるという場合があります。栄養バランスの乱れが気になることもあるでしょうが、まずは食べることが大切です。
よく噛んで消化をよくする
よく噛んで食べると、胃腸の負担を軽減し、消化を助けます。
少量ずつ盛り付ける
目の前にたくさんの料理が並ぶと、負担に感じてしまうことも。少量ずつ、見た目も華やかに盛りつけるなどの工夫をして、食べることにストレスを感じないようにするとよいでしょう。
食べたくなる環境を整える
一緒にいて楽しい人と食事する機会を設ける、好きな音楽を流すなど、気持ちを上向きにして食べたくなるような環境をつくってみましょう。
栄養補助食品や外食、総菜、カット済み野菜などを活用する
どうしても食事がとりにくいという場合は、サプリメントやゼリー飲料、ドリンク剤などの栄養補助食品を活用して、栄養を補いましょう。
また、食欲がないときは自分で料理するのが嫌になってしまうことも。外食やスーパー、コンビニのお総菜を活用してもいいですし、お好きなレトルトやフリーズドライの食品をストックしておくのもよいでしょう。
調理で意外と負担になるのが野菜。水洗いして、使う料理に合わせて切るのが面倒という場合は、カット野菜や冷凍野菜を利用してみてください。
食欲がないときのおすすめレシピ
食欲がないときは、豆板醤や香味野菜が味のアクセントとなり食欲をそそる、鶏となすの旨辛炒めがおすすめです。
片栗粉をまぶしてやわらかくトロッとした食感に仕上げた鶏むね肉に、なすとピーマンで彩りを加えました。
ご飯にのせて丼にするのもおすすめです。
- 鶏となすの旨辛炒め(2人分)
- 〔材料〕
- 鶏むね肉 ...... 160g
- 片栗粉 ...... 小さじ1
- なす ...... 1本
- ピーマン ...... 2個
- にんにく ...... 小2かけ
- 生姜 ...... 1cm
- 合わせ調味料
- オイスターソース ...... 大さじ1
- 料理酒 ...... 小さじ2
- しょうゆ ...... 小さじ1
- 砂糖 ...... 小さじ1
- 豆板醤 ...... 小さじ1/2(お好みで加減する)
- ごま油 ...... 小さじ1
- 〔つくり方〕
- 鶏肉を一口大のそぎ切りにし、片栗粉をまぶす。
- なすとピーマンは乱切りに、にんにくと生姜はみじん切りにする。
- フライパンにごま油を熱し、にんにくと生姜を入れて1を炒める。
- 鶏肉の周りが白くなったらなすとピーマンを加え、火が通るまで炒める。
- 合わせ調味料を回し入れ、全体に絡める。
この方にお話を伺いました
順天堂大学医学部附属浦安病院 管理栄養士、公認スポーツ栄養士、健康運動指導士 小池(本多) ゆみえ (こいけ(ほんだ) ゆみえ)

病院に約10年勤務したのち、フリーランスとなる。現在は大学病院の非常勤で栄養指導に従事しながら、食品メーカーでの健康相談や専門学校の講師、企業のセミナー講師、記事の執筆・監修など幅広く活動中。スポーツ栄養ではプロ野球選手、大学や高校野球部のサポートやスポーツ小学生の保護者への食事アドバイスを行う。