多様な栄養成分を含み「スーパーフード」として知られるザクロ。その効果効能は古くから知られ、薬用として珍重されてきたという歴史も。健康や美容にどういった作用が期待できるのか、詳しく紹介します。
ザクロとは? その歴史と栽培方法
古代から栽培されてきたザクロ
ザクロとは、現在のイラン周辺の山岳地帯を原産とする植物です。紀元前1万年頃には栽培が開始されたと考えられており、紀元前3,000年頃の文献にも登場しています。日本には、平安末期から鎌倉時代に伝わったといわれています。
秋になると熟した果実の外皮が割れて、黄色みがかった果肉の中からルビーのような赤い種子があふれるように現れます。この様子から、世界各地で豊穣や実り、繁殖のシンボルとされてきました。
古代ユダヤの王であるソロモン王はザクロの農園を所有していたとされ、仏教では鬼子母神が手に持つ果実で「吉祥果(きちじょうか)」とも呼ばれます。ギリシャ神話やアラビアの『千夜一夜物語』、日本の『太平記』といった読み物や、メソポタミアやエジプトなどの装飾のモチーフにもザクロは登場し、古くから生活の中で大切にされてきたことがうかがえます。
ザクロは日本でも育てられる
ザクロは温帯に育ち、乾燥には比較的強く、暑さが長く続く場所を好みます。3~10m の高さまで成長し、枝にはトゲがあります。初夏にオレンジがかった朱色の花を咲かせ、秋に6cm ほどの実をつけます。庭木としての観賞用品種もあります。現代における主な栽培地は、イランやトルコ、インド、アメリカなど。日本でも栽培されていますが数は少なく、販売されている果実の多くはアメリカからの輸入品です。
自宅でも栽培は可能。根をしっかりと張る植物なのでプランターよりは庭に植えるのがおすすめです。植え付けの時期は12~2月頃、日当たりがよく水はけのよい場所を選びましょう。食べたザクロの種から育てることも可能ですが、実がなるまで数年かかります。
ザクロの効果・効能は?
ザクロの健康効果
抗酸化作用
ザクロはポリフェノールを豊富に含んでおり、老化や動脈硬化を招くとされる活性酸を取り除く働き=抗酸化作用があるため、まだ研究段階ではありますが、心疾患、高血圧、高コレステロール血症、がん、糖尿病など、さまざまな症状・疾患の予防や治療への効果が期待されています。
免疫力アップやストレス軽減
ビタミンCも豊富で、ポリフェノールと同じく抗酸化作用があるのに加え、免疫力アップやストレス軽減の働きもあります。
むくみの解消や疲労回復
カリウムも豊富で、余分な塩分を排出する働きがあるため、むくみの解消や高血圧予防・改善にも有効です。また、ビタミンB群やクエン酸が含まれることから、疲労回復にも役立つでしょう。ザクロの赤い色はアントシアニンによるもので、目の疲労回復にも有効です。
気管支の疾患のケア
薬膳では、ザクロに潤いの性質があり、「肺(はい)」の機能を高め、喉を潤すとされます。そのため、咳や喉の炎症など気管支の疾患を癒やすとされます。
更年期症状の緩和については疑問の声も
ザクロは女性ホルモン様成分も含有しています。女性ホルモン様成分とは女性ホルモンと似た働きをもつ成分のことで、善玉コレステロールを増やして血液をサラサラにしたり、更年期症状を緩和したりといった有効性があるとされます。ただし、ザクロに含まれるのは微量なため、効果を疑問視する声もあります。
ザクロの美容効果
ザクロには、女性ホルモン様成分が含有されることから、髪や肌の状態をよくすることや、ビタミンCが豊富なため、肌のハリやシミ予防、エラグ酸にもシミやシワ、たるみの予防といった美容効果が見込まれます。
また、ザクロが持つポリフェノール成分の一つであるエラグ酸は、長寿遺伝子として話題のサーチュイン遺伝子の活性化や、細胞を若返らせるオートファジー機能に関与するとして注目されています。
ザクロは女性だけでなく男性への効果も期待大!
ザクロは古くから女性の健康に有効な果実とされてきており、更年期症状の緩和や美容効果が見込まれると紹介しました。では、男性はどうかというと、男性ホルモンであるテストステロンの働きを助けることや、ホルモンバランスを整え前立腺がんを改善する効果が期待されており、いくつかの研究論文も発表されています。これからの研究が待たれます。
さまざまな栄養素を含み、スーパーフードとしても注目!
ザクロには次のような栄養素や機能性成分が含まれており、その効果の高さからスーパーフードと呼ばれることもあります。
- 〔ザクロに含まれる栄養素と機能性成分〕
- ビタミン類 ...... ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ナイアシン、葉酸など
- ミネラル ...... カリウム、亜鉛など
- アミノ酸 ...... グルタミン酸、アスパラギン酸など
- ポリフェノール ...... アントシアニン、エラグ酸、タンニンなど
- その他 ...... クエン酸、女性ホルモン様成分など
古代から健康に役立てられてきたザクロ
ザクロは食用としてだけでなく、薬用としても古代から珍重されてきました。例えば、古代ギリシャやローマでは、避妊薬、眼病や消化器の不調の治療、虫除けなど、古代エジプトや中国では寄生虫の駆除や治療、インドのアーユルヴェーダでは目の治療などに用いられています。また、中世ヨーロッパでは、咳や痰の治療のほか、女性特有の症状の緩和にも有効とされました。
生薬としては、樹皮や根皮を乾燥させた「石榴皮(せきりゅうひ)」と、果皮を乾燥させた「石榴果皮(せきりゅうかひ)」があります。「石榴皮」を煎じて寄生虫の駆除や喉の不調を改善するときに用います。また、「石榴果皮」を煎じて下痢止めに使うことも。ただし、樹皮や根皮にはアルカロイドの一種であるペレチエリンによる毒性があるので、使用には注意が必要です。
ザクロのおすすめの取り入れ方
ザクロで食べられるのは1粒1粒、ゼリー状でジューシーな仮種皮(かしゅひ・(種衣(しゅい)とも)の部分です。果皮には有毒な成分も含まれるので、果実を丸かじりするのは避けましょう。ほぐしてそのまま食べるほか、サラダやジュース、カクテルに活用する方法も。詳しくは以下の記事をチェックしてください。
この方にお話を伺いました
博士(農学) 元東京農業大学准教授 日本メディカルハーブ協会理事・事務局長 株式会社グリーン・ワイズ 木村 正典 (きむら まさのり)

専門は人間・植物関係学、都市園芸学、野菜、ハーブなど。ハーブの精油分泌組織の顕微鏡観察に長く携わるとともに、豊かな社会づくりのための園芸の役割や、建物緑化、都市緑化、環境回復型栽培、エコロジカルハーバリズム、学校菜園、コミュニティガーデン、市民農園、家庭菜園、ファーマーズマーケットなどの役割と意義について研究。講演活動のほか、学校や集合住宅の屋上などでの菜園指導も行っている。『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野菜』(GB)、『ハーブの教科書』(草土出版)、『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK出版)、『木村式ラクラク家庭菜園』(家の光協会)など著書多数。「NHK趣味の園芸 やさいの時間」旬ベジ二十四節気講師。