気づけばずっと同じ姿勢で座りっぱなしということはありませんか? 座りすぎは、こりや腰痛だけでなく、さまざまな健康リスクの要因に。悪影響を解消するには、30分に1回立ち上がって動く「ブレイク30」が効果的です。日本人の座りすぎ研究の第一人者である岡 浩一朗先生が詳しく解説します。
- 〔目次〕
- 「座りっぱなし」・「座りすぎ」の健康リスクとは?
- 生活習慣病の予防には30分に一度立つ「ブレイク30」が効果的
- 仕事中や家の中で座りすぎない生活のコツ
- 立ったときにできる「ついでのストレッチ」
- 座った状態でできる血流促進ストレッチ
「座りっぱなし」・「座りすぎ」の健康リスクとは?
日本人の成人が1日に座っている時間は平均8~9時間で、実に起きている時間の半分ほどを占めます。生活が便利になったことに加え、コロナ禍での外出自粛やテレワークの普及も座りすぎの生活を加速させたのではないでしょうか。
さまざまな調査で、一日の中で座っている時間が長いほど、健康リスクが高まることが報告されています。特に近年問題視されているのが「連続して座っている時間」。座っている合計時間に加え、座りっぱなしを解消することにも意識を向けましょう。
まずは以下の項目で生活習慣をチェック。1つでも心当たりのある人は「座りすぎ」の可能性があります。
- 〔座りすぎ生活をチェック〕
- □ 仕事中、30分以上座りっぱなしのことが多い
- □ ちょっとした移動で電車やバスを利用する際でも真っ先に座席に座る
- □ 家では座りっぱなし
30分の座りっぱなしで血流速度が7割低下
座って5分もすると血流速度が急激に下がり、30分座り続ければ血流速度が70%も低下するという実験結果があります。
また、「第二の心臓」であるふくらはぎや太ももの筋肉を動かさないと、足に下りた血液を心臓まで押し上げて戻すという循環が上手くいきません。その結果、酸素や栄養を体の隅々にまで行き渡らせることができず、老廃物も回収されないため代謝機能が低下。血液中に糖や中性脂肪が増え、高血圧や糖尿病を引き起こして動脈硬化が進み、心血管疾患のリスクが高まります。
座りすぎはこうした生活習慣病以外にも以下のようなリスクも高めます。
冷えやむくみ
血流が悪いと体の末端まで熱を運ぶことができず、足先が冷えやすくなります。冷えによってだるさやむくみを引き起こすことも。
首から腰のこり
座った姿勢は立った姿勢と比べて椎間板(ついかんばん)への負担が40%も増えるため、腰痛が起こりやすくなります。また肩甲骨周りの筋肉が緊張した状態が続いて筋肉が硬くなると、肩や首にこりや痛みを感じるようになります。
足腰の衰え
座りすぎにより骨や関節、筋肉など運動器の機能が低下。サルコペニア(全身の筋肉量と筋力が低下した状態)やフレイル(虚弱)になりやすくなります。
認知機能の低下
長時間同じ姿勢でいることで血行が滞ると脳への血流量も低下。頭の中が活性化せず、認知機能が低下していくといわれています。
普段運動している人ほど「座りすぎ」に要注意
アメリカでは普段運動をしていても、それ以外のときに座っている時間が長い人のことを「アクティブカウチポテト」と呼ぶことがあります(「カウチポテト」とは、長いすに寝そべってポテトチップスを食べながらテレビにかじりついている人のこと)。
生活習慣病の予防には30分に一度立つ「ブレイク30」が効果的
「中断なし条件」(連続5時間座りっぱなしの状態)と「低強度で中断」(20分間座った後に、2分間、立って軽く体を動かした場合)の食後血糖値及びインスリン抵抗性の影響を比較。(Dunstan et al. Diabetes Care, 2012より抜粋)
座りっぱなしによる悪影響を解消するには、30分に1回は立ち上がってブレイク(中断)する、「ブレイク30」を取り入れるとよいでしょう。最低でも1時間に1回立ち上がるだけで、脚の筋肉の収縮運動が起こり、血流がよくなります。
トイレに行ったりお茶をいれたりして、2~3分動くだけでも十分効果的。
筋肉に強めの負荷をかけなくても、頻繁に立って動くだけで、血糖値も下がりやすいことがわかっています。
仕事中や家の中で座りすぎない生活のコツ
ちょこちょこ動く機会を増やすために、次のことを意識してみましょう。
- 〔仕事中に立つ機会をつくるなら〕
- お茶をいれる回数を増やすためにコップを小さめにする
- 電話の際は立ち上がるようにする
- デスクの上に取り外し可能な台を設け、立った姿勢でも作業ができるようにする
- こまめに外気に当たりに行く
- 〔テレビ視聴中に立つ機会をつくるなら〕
- テレビのリモコンを少し離れた場所に置く
- CMの度に立ち上がってストレッチをする
- ごみ箱などをそばに置かない
- タイマーを30分単位でセットし、休憩を挟む
立ったときにできる「ついでのストレッチ」
「ブレイク30」で立ち上がった際に、簡単な下半身の運動を行うと、血流促進効果がより向上します。
かかと上げ
ふくらはぎの筋肉を刺激することで血流がよくなります。脚のむくみ対策にもおすすめです。
- 〔かかと上げのやり方〕
- 真っすぐ立って、背伸びをするように両かかとを2秒かけて上げる。
- 両かかとを2秒かけて下ろす。
- 1~2を5回ほど繰り返す。いすやテーブルなどにつかまってもよい。
スロースクワット
太ももの前面にある大きな筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」に負荷をかけることで体中に刺激が伝わり、血流も代謝もアップします。膝の痛みの軽減にも有効です。
- 〔スロースクワットのやり方〕
- 真っすぐ立った姿勢から、2秒かけて膝を曲げて軽くしゃがんだ格好になる。曲げた膝がつま先より前に出ないように注意する。
- 2秒かけて膝を伸ばしながら元の姿勢になる。
- 1~2を5回ほど繰り返す。いすやテーブルなどにつかまってもよい。
立ちっぱなしも! 血流低下を招いて痛みの原因に
座りっぱなしだけでなく、同じ姿勢で立ったままい続けるのも、脚の血流が悪くなり膝や腰を痛めやすくなるため、よくありません。立っているときも脚を動かすことを心がけましょう。立ち姿勢を続けなければならないときは、かかと上げ運動がおすすめです。
座った状態でできる血流促進ストレッチ
どうしても立ち上がって「ブレイク30」が実践できないときは、座った状態でできるストレッチを行って、座りすぎのリスクを解消しましょう。
座った状態でかかと上げ
かかと上げ運動は座ったままでも効果があります。
- 〔座った状態でのかかと上げのやり方〕
- 姿勢を正し、足をそろえ、両かかとを2秒かけて上げる。
- 両かかとを2秒かけて下ろす。
- 1~2を5回ほど繰り返す。ふくらはぎを意識して、つま先に体重をかけながら行う。
片脚上げ
大腿四頭筋を刺激する運動です。机やテーブルの下でも無理なく行えます。
- 〔片脚上げのやり方〕
- 片方の膝を伸ばした状態で2秒かけて持ち上げる。つま先は天井に向ける。
- 上げた脚を2秒かけて下ろす。
- 1~2を5回ほど繰り返す。
腰上げ
30分に1度座りなおすだけで、軽くスクワットをしたことになります。動くことで股関節周りがリラックスし、お尻の筋肉もほぐれます。
- 〔腰上げのやり方〕
- いすから少し腰を浮かせて座り直す。
運動をしているからといって、座りすぎのリスクは変わらず、むしろ「健康面に自信あり」と思っているほど、座りすぎの落とし穴にはまりやすい傾向があります。座る時間が長いときは「ブレイク30」を取り入れて病気にならない体をつくりましょう。
この方にお話を伺いました
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 岡 浩一朗 (おか こういちろう)

1999年早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了後、同大学人間科学部助手、同大学スポーツ科学学術院准教授などを経て、2012年より現職。座位行動研究の世界的権威であるネヴィル・オーウェン教授と、座りすぎの健康リスクと対策に関する研究を進めている。日本における座りすぎ研究の第一人者。著書に『「座りすぎ」が寿命を縮める』(大修館書店)などがある。