健康維持のために、誰でも気軽にできるウォーキング。効果的に歩くためには、筋肉をバランスよく使うことが重要です。
日常生活のクセが原因で、足裏の重心の位置や体の軸のバランスが悪い「ゆがみ歩き」になっているとウォーキング効果は半減します。せっかく歩いても体のゆがみが助長されて腰痛や膝痛などの不調をきたすことも。
そこで「ゆがみ歩き」を改善する方法を、コンディショニングトレーナーの有吉与志恵(ありよし よしえ)先生に教えてもらいました。体のゆがみを整えて筋肉をバランスよく使い、ウォーキング効果をアップさせましょう。
「ゆがみ歩き」セルフチェック
まずはセルフチェック。以下のいずれかに当てはまる場合は、「ゆがみ歩き」になっている可能性があります。ゆがみの原因を探して、筋肉を整えましょう。
- ☑ 背筋を伸ばして立つと、母趾球(ぼしきゅう:親指の付け根の膨らんだ部分)と小趾球(しょうしきゅう:小指の付け根の膨らんだ部分)、かかとの3点が床に均等につかない
- ☑ 綱渡りをするように片足のつま先にもう一方のかかとをつけるようにして歩くと、体がフラフラする
自分の体を観察してゆがみの原因をチェック
「ゆがみ歩き」の原因は、筋肉の使い方のクセや関節のゆがみにあります。まずは自分の体を観察して、ゆがみのある場所をチェックしましょう。
そして、ゆがみの原因がわかったら筋肉を整える「コンディショニング」の実践を。ウォーキング前の準備運動として行うのが効果的です。
姿勢チェック
脚を閉じて真っすぐ立ったとき、太ももとふくらはぎ、くるぶしがついているのが理想。鏡の前に立ってチェックしましょう。どこかがつかない場合、そこにゆがみの原因があるため、それぞれ紹介しているコンディショニングを試してください。
☑太ももの内側がつかない
- 〔原因〕
- 太ももの外側を使い過ぎている
- 太ももの内側を使えていない
- 股関節が内に向いている
☑ふくらはぎがつかない
- 〔原因〕
- 膝下が外を向いている
- 膝が曲がっている
☑くるぶしがつかない
- 〔原因〕
- 足裏のつき方が悪く、母趾球・小趾球・かかとの3点で体を支えられていない
巻き肩チェック
自然に立って横から見たときに、肩の位置は耳と一直線上にあるのが理想です。
真横より前にある場合、肩から胸の筋肉が縮んでいるため、【肩の外回し】を実践しましょう。
膝のゆがみチェック
脚を肩幅に開いて立って軽く膝を曲げたとき、両脚が平行になるのが理想です。
膝が内側に入る場合、股関節が内に向いているので、【股関節を調整するコンディショニング】を行ってください。
足指チェック
真っすぐ立ったとき、足の指がすべて真っすぐになっていて、床に着いているのが理想です。以下のどれかに当てはまる場合は、足の使い方にクセがあるため、歩く前に【指分け&足首回し】の実践を。
- ☑ 外反母趾(がいはんぼし:親指が人差し指側に寄っている)
- ☑ 内反小趾(ないはんしょうし:小指が親指側に倒れている)
- ☑ ハンマートゥ(指が曲がっている)
- ☑ 浮き指(うきゆび:指が浮いている)
ゆがみタイプ別のコンディショニング
「コンディショニング」には「リセット」と「アクティブ」の2種類の動きがあります。筋肉をバランスよく使って歩くため、ウォーキング前にセットで行いましょう。
- ☑ リセットコンディショニング
硬くなっている筋肉を、使いやすい弾力のある状態に戻す運動。筋肉に意識を向けずに、脱力して関節を動かすのがポイント。 - ☑ アクティブコンディショニング
使えていない筋肉を使える状態にする運動。息を吐きながら、動かす筋肉を意識すると効果的。
なお、回数の目安はありません。感覚が変わったと感じていればOKです。
股関節を調整するコンディショニング
リセット:クルクルトントン
股関節を楽な状態にします。
- 楽な姿勢で座る。片方の脚を伸ばして脱力し、膝下にタオルを入れる。もう片方の脚は楽な場所に置く。
- 太ももを両手で挟むように持ち、左右にクルクルと回す。股関節から脚を引き抜くイメージで。
- 脚は脱力し、手を動かして脚をタオルに強めにトントンと打ちつける。
- もう片方の脚も同様にする。
アクティブ:アブダクション
股関節を外側に開きます。
- ウエストの下にタオルを入れ、頭から尾骨までが一直線になるように横に寝る。両脚をそろえたまま膝を90度程度曲げる。
- 骨盤と背中を動かさずに上の膝だけを開く。
- 同様に反対側も行う。
→アクティブコンディショニングが終わったら【かかと上げ】で体の軸のバランスを整えます。
膝関節を調整するコンディショニング
リセット:トントン
膝を楽な状態にします。
- 楽な姿勢で座る。片脚を伸ばして脱力し、膝下にタオルを入れる。
- 脚は脱力し、手を動かして脚をタオルに強めにトントンと打ちつける。
- もう片方の脚も同様に行う。
アクティブ:ニーエクステンション
膝をきちんと伸ばします。
- 骨盤を立てて座り、つま先を上に向けて片脚を伸ばす。もう片方の脚を手で支え背筋を伸ばす。
- 膝に意識を集中させ、伸ばしている脚の膝裏が床につくようにしっかり伸ばす。左右の脚で行う。
→アクティブコンディショニングが終わったら【かかと上げ】で体の軸のバランスを整えます。
足首を調整するコンディショニング
リセット:指分け&足首回し
足指を真っすぐにするとともに、アキレス腱とふくらはぎを整えます。
- 座って片脚を伸ばして膝下にタオルを入れる。もう片脚を伸ばした脚の上に乗せる。上のイラストのように椅子で行ってもよい。
- 両手で足指を持ち、足指を伸ばしながら指の間を1本ずつ前後に開く。
- 足指と手指を組み、もう一方の手でくるぶし辺りを押さえて円を描くように足首を回す。外回し、内回しともに行う。
- もう片方の足も同様に行う。
アクティブ:サムライシット
脚の接地をよくします。
- 膝とかかとをそろえて座る。足指のつけ根が床に着くようにつま先を立て、かかとにお尻を乗せる。
- 中心軸を意識する。かかとを中心に、上半身だけ右に傾けたり左に傾けたりと、左右交互に体重をかける。
※バランスを保つのが不安な方は、壁などに手を添えて行う。
→アクティブコンディショニングが終わったら【かかと上げ】で体の軸のバランスを整えます。
肩の外回し
肩回りの筋肉を整えます。
- 上腕を体につけ、手のひらを上にしてひじを曲げる。
- 肘は体につけたまま、息を吐きながら外へ広げたり閉じたりする。
かかと上げ(各タイプ共通)
体の軸を真っすぐに保ちます。
椅子などにつかまり、つま先だけ開き、脚は閉じた状態でかかとを上げる。重心が真っすぐ上に引き上げられるイメージで行う。
今すぐできる! 歩き方をよくする3つのコツ
コツ1:歩くときの目線は遠くに
鎖骨を引っ張り上げられているようなイメージで、目線を遠くにすると、姿勢よく歩けます。ただし、足の着き方や脚の動かし方、腕の振り方など、正しいフォームや姿勢で歩こうと体の部位を意識しすぎるとかえってぎこちなくなるので、周りの景色を楽しみながら、心地よく歩くようにしましょう。
コツ2:最後は早足にして運動強度を上げる
運動強度を高めたいときは、長時間歩くより、歩く時間の3分の1を早足にしましょう。たとえば10分歩くなら、最後の3分を早足にします。腕を大きく振って大股で歩くと、自然と後ろ足がけり上がり、筋肉も使えるように。
コツ3:ウォーキング後はストレッチ
歩いた直後は筋肉が縮まっているので、ふくらはぎやももの前後、背中などをストレッチで伸ばしましょう。また入浴後にリセットコンディショニングをすると筋肉が柔らかくほぐれます。
簡単なコンディショニングで、「ゆがみ歩き」は改善可能。体の軸が整い、筋肉がバランスよく使えるようになるとウォーキング効果は確実にアップします。また、ウォーキングは無理しないことも大切なので、これからウォーキングを始める人は、まずは今よりプラス10分、プラス1000歩から始めるのがおすすめ。
マイペースに楽しく歩きましょう。
■新着記事はFacebookでお知らせしています。
Facebook独自コンテンツもありますので、ぜひ「いいね!」してお待ちください♪
この方にお話を伺いました
コンディショニングトレーナー 有吉 与志恵 (ありよし よしえ)

コンディショニングトレーナー、一般社団法人日本コンディショニング協会(NCA)会長、株式会社ハースコーポレーション最高技術責任者(CTO)。日本体育大学卒業。運動指導者として30年以上のキャリアを積み、筋肉を鍛えるよりも整えることで体調と体形を劇的に改善できる「コンディショニングメソッド」を確立。セルフコンディショニング指導のほか、講演・講習会や指導者の育成にも情熱を注ぐ。著書は『ランナーのためのコンディショニング』(ベースボール・マガジン社)など多数。