【和ハーブ連載】いくつわかる?「和ハーブ検定(生活・文化編)」に挑戦!
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【和ハーブ連載】いくつわかる?「和ハーブ検定(生活・文化編)」に挑戦!

和ハーブ協会の古谷暢基(ふるや まさき)さんによる不定期連載。 第6回は、「和ハーブ検定」で実際に出題している問題から、少し珍しいハーブの知識をお話しいただきました。


前回記事では、私たちのご先祖様の命の営みを支えてきた"食の和ハーブ"と"薬の和ハーブ"に関連する問題に挑戦していただきました(前回記事参照 )。

今回は"生活文化の和ハーブ"にまつわる問題から3問ご紹介。クイズ形式なのでぜひ皆さんも答えながら読み進めてみてください。

それぞれ問題のあとに解説がついているので、そちらもチェックしてくださいね。

日本人の生活に欠かせない「イネ(稲)」の使い道

日本の季節の暦や儀式には、イネの季節毎の成長の様子や、種まき・田植え・収穫などの仕事を基準にしたものが多く、まさにイネは古くから日本人の生活に欠かせない植物なのです。

問題1 日本人の生活に欠かせない「イネ」の食材以外の有用性について、当てはまらないものを次のうちから1つ選びなさい。
石鹸
香料

正解はこちら

イネは穀物の米の原料植物で、現代人にとっては食のイメージが強いですが、農村ではそれ以外のジャンルでも非常に有用な和ハーブでした。

米糠を石鹸代わりに活用

米糠

刈り取ったイネを脱穀した後、果実部分である米を玄米から白米へと精製する過程で「糠(ぬか)」が生じます。これを布袋に入れると、適度な油分と他の成分が界面活性効果をもたらす"和ハーブ天然ソープ"に。江戸時代の銭湯文化には欠かせない携帯品で、石鹸がない時代に重宝されました。

また、イネの果実の果皮や胚芽部分である糠は、タンパク質や脂肪分のほか、ミネラルやビタミンB群などが豊富。

食材を糠に漬け込む「糠漬け」は現在でも日本漬物文化の代表で、冷蔵庫が無い時代の保存機能を果たしていました。また発酵過程で香りや風味だけでなくビタミンCも増加するため、農家の人たちの健康にも寄与してきました。

日本酒は神様との交流のツール

日本酒

米は主食としての役割だけでなく、日本のお酒である「日本酒」「焼酎」の原料にもなります。

日本酒のルーツは、神様にお供えする「お神酒(おみき)」。お神酒はそもそも新嘗祭(にいなめさい)を始めとするイネの豊穣を祈願・祝福するものです。

イネが伝来した縄文後期には醸造酒文化も渡来していたといわれ、そのもっとも古い形の一つが、神に使える巫女が蒸した米を噛んで樽などに吐き出したものを発酵させた「口噛み酒」なのです。

人々は現代と同じく、お酒で普段のストレスを発散し、仲間たちと親交を深め、そして酩酊することで神との交流をしたといわれます。

藁は靴をはじめ生活用品の原料に

藁の靴

米を収穫した後の茎・葉部分を乾燥させれば、劣化しにくく保存しやすい万能素材の「藁(わら)」となります。藁は化学繊維が無かった時代にあらゆる生活用品の原料となり、広範囲に渡って無駄なく使い尽くされていました。

衣料品
草履(ぞうり)、藁沓(わらぐつ:雪道を歩くための靴)、笠(かさ)、蓑(みの)など

運搬用具
俵(たわら)・畚(ふご:四隅に紐のついたカゴで棒にぶら下げて使う運搬具)など

生活用具
筵(むしろ)・箒(ほうき)など

建材
藁葺き屋根

さらに、余ったものは燃料や堆肥、貴重な労力だった牛や馬の餌に。冬の農閑期、農民は次の一年に備えた"藁仕事"に精を出しました。

ということで、この問題の答えは「香料」ですが、日本の民俗文化は奥が深く、調査を進めれば人知れず山奥で糠の香りをアロマにしていた...なんていう情報も出てくるかもしれません。これが和ハーブ文化探訪の醍醐味です。

問題1の答え → 2.香料

同じ用途でも地域によって異なる種類が使われた和ハーブ

問題2 「フジ(藤)」「クズ(葛)」「カラムシ(苧)」の3種類の和ハーブが良く使われた、共通する生活材のジャンルを、次のうちから一つ選びなさい。
入浴剤
染料
香料

正解はこちら

フジ、クズ、カラムシは"日本三大古代布"の原料(※)。これら"繊維の和ハーブ"から紡がれた糸は、衣服などの素材として私たちのご先祖様の生活を支えてきました。

※「カラムシ」ではなく「シナノキ」がとりあげられる場合もあります。

フジ

フジの花

フジはマメ科の蔓性の木本植物。初夏に垂れ下がる紫色の美しい花は観賞用の他、食用にもされ、九州南部の山村には「藤豆腐」という美しい伝統料理が今でも引き継がれます。

藤豆腐

藤豆腐

フジの花が棚一面に広がる「藤棚」といえば現代も人々の目を楽しませるものですが、自然林においてフジはその旺盛な生命力で他の木に巻き付きながら繁殖し、最後にはまるで大蛇のように巻き付いた木を絞め殺してしまう恐るべき存在です。

そして日本人は古より、この"大蛇"の皮から糸を紡ぐ「藤織り」文化を受け継いできました。衣服を始めとして、畳の縁・帯・暖簾など様々な用途に使われましたが、織り目が粗いこと、原料の採取が大変なことから、麻や綿などにとって代わられました。

クズ

クズ

クズは同じくマメ科の蔓性の草本植物で、根を材料にした食材「葛粉」や生薬「葛根」がよく知られます。

茎の部分からとった繊維で上手に仕上げられた白い「葛糸」は美しい光沢を放ちます。かなり古い時代から使われてきた記録があり、平安時代には庶民のみならず、貴族の装束として重宝されました。

葛布

葛布

現在は保存会などでかろうじて引き継がれているだけですが、クズ自体は旺盛な生命力で都会から山奥まで旺盛に繁殖しています。厄介な雑草ではありますが、枯渇しにくい自然素材と捉えれば、美しい葛糸の伝統技術は地域活性のコンテンツになると考えらます。

カラムシ

カラムシ

カラムシはイラクサ科の草本植物で、日本全国の日当たりの良い場所に生息します。

直径が2㎝ほどに成長した茎の皮を剥ぎ、水につけながらヘラなどで擦ると、美しい白糸が現れます。他の2つの古布に比べて採取・加工の手間が少なく、人里の環境でも育成が簡単なことから、かつて米沢藩の名君であった上杉鷹山は、農村の重要な収入源として奨励していました。

カラムシはまさに日本人の衣服繊維の代表的な素材であり、現在も「苧麻(ちょま)」という名前で広く使われます。

karamushi_seni.jpg

カラムシの繊維

問題2の答え → 1.糸

海外と日本で違う顔を持つハーブ

問題3 アーユルヴェーダでは多様な薬効で「神の木」と呼ばれ、日本では強い除虫効果で知られる、主に西日本に生息する和ハーブを次の内から選びなさい。
ケヤキ(欅)
マテバシイ(馬刀葉椎)
センダン(栴檀)
アカガシ(赤樫)

正解はこちら

南アジアでは「ニーム」という名前で知られ、葉や果実を乾燥させた生薬はその様々な効能から「神様がくれた奇跡の木」として人々に重宝されているセンダン(※)。日本では伊豆半島以西に生息し、主に生活材として重用されてきました。

※正確には「インドセンダン」といい、日本のセンダンとは種が異なります。

センダンの幼木

センダンの幼木

センダンの果実

センダンの果実

毒性が強いセンダンは古くから除虫・殺菌効果が知られており、苗木を植えて僅か20年ほどで丈夫な大木となることから、沖縄では女の子が生まれると庭にセンダンを植え、嫁入り時にタンスなどの家具材にしたようです。

本州や四国などでは強い除虫力を利用し、土葬の際の棺桶や"さらし首"の台として利用。地域によっては「不吉な木」と忌み嫌われてきたようです。また静岡県の一部の地域では、材を落とし便所の木枠に、葉は用便後に便器に投げ入れ、防虫や消臭に用いていました。

問題3の答え → 3.センダン

このように、日本人は飲食のみならず生活のあらゆる側面において、あらゆる植物のあらゆる特性を生かして、生活と命を支えてきました。和ハーブ文化の追究は、私たち日本人の生き方の歴史そのものに触れる作業でもあるのです。

過去の記事

第5回
【和ハーブ連載】いくつわかる?「和ハーブ検定(食・薬編)」に挑戦!
2020.12.01
第4回
【和ハーブ連載】植物は丸ごといただく!人と植物の関係と活用法
2020.8.21
第2回
【和ハーブ連載】和の香りの王様クロモジと「クロモジ三兄弟」
2020.2.21
第1回
【和ハーブ連載】日本古来のハーブ「和ハーブ」の種類とクロモジ
2019.10.25

この方にお話を伺いました

(一社)和ハーブ協会代表理事、医学博士 古谷 暢基 (ふるや まさき)

古谷 暢基

2009年10月日本の植物文化に着目し、その文化を未来へ繋げていくことを使命とした「(一社)和ハーブ協会」を設立、2013年には経済産業省・農林水産省認定事業に。企業や学校、地域での講演、TV番組への出演など多数。著書は『和ハーブ にほんのたからもの〈和ハーブ検定公式テキスト〉』(コスモの本)、『和ハーブ図鑑』((一社)和ハーブ協会/素材図書)など。国際補完医療大学日本校学長、日本ダイエット健康協会理事長、医事評論家、健康・美容プロデューサーでもある。

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