和ハーブ協会の古谷暢基(ふるや まさき)さんによる不定期連載です。初回は和ハーブの種類や魅力、和ハーブの中でも注目のクロモジについて語っていただきました。
実は古くから日本で活用されてきた和ハーブ
ハーブというと、「バジル」や「ラベンダー」など、海外の香料植物をイメージするかと思いますが、実は日本にも素晴らしいハーブたちがたくさん存在します。すなわち「和ハーブ」とは、日本で古来(江戸時代以前)有用されてきた植物の総称です。
和ハーブの種類
例えば「ミツバ」や「サンショウ」など、食卓でなじみのあるものも和ハーブです。他にも"食"や"薬"の和ハーブは数多くあります。
[ゲンノショウコ]
日本人が最も使ってきた薬草といわれる"和のゼラニウム"です。ゲンノショウコそのものには馴染がなくても、案外整腸薬などでお世話になっているかもしれません。
[タチバナ]
和柑橘の元祖で天皇家でも重用されています。
[ナギナタコウジュ]
アイヌ民族のソウルハーブでシソの仲間です。
[ゲットウ]
琉球ハーブの代表です。
さらに、 "浴"の和ハーブとして、「ユズ」「セキショウ」などは入浴剤に、"色"の和ハーブ「ベニバナ」などは染色剤の素材に使われてきました。
まさに和ハーブは日本人の生活と遺伝子に寄り添い、私たちのご先祖様の命を支えてきた素晴らしい植物たち。みなさまも是非、海外のハーブだけでなく"日本の足元のたからもの"に注目していただきたく思います。
江戸時代から活用される和ハーブ、クロモジ
さて、少し前置きが長くなりました。本連載の主役「クロモジ」は、その香り・有効成分・奥深い文化・歴史など、当協会がもっとも推している、まさに"和ハーブの代表"ともいえる植物です。
北海道から九州の山間部に生える中低木で、クスノキ科のクロモジ。大きくはシナモンの仲間です。
クロモジといえば「楊枝」を思い浮かべる方も多く、実際に現在も高級和食店や寿司屋などで使われております。
江戸時代には楊枝というよりは歯ブラシとして使われ、それが時代とともに変化していきました。
同じく歯ブラシとしては、その薬効の高さから世界初の成分抽出による医薬品となった「ヤナギ」が使われました。そのことからもクロモジの素晴らしい薬効がうかがえます。
アロマやお茶、お酒など現在もさまざまに活用されているクロモジ。いつもの料理にちょい足しして楽しむのもおすすめです。
クロモジは日本の香りの象徴?
クロモジの香りについて、民俗学の開祖であり、日本人の生活習慣の大家である柳田國男先生は、著書の『神樹編』なかで「日本人の鼻の記憶、すなわちいつまでも忘れ難かった木の香」と記し、"日本の香りの象徴"と位置付けています。
そして「神に捧げる樹木はサカキではなく本来はクロモジだったのではないか?」とし、その香りのみならず、まさに日本人の魂における代表的な樹木ではなかったのか、という説を述べています。
次回は、私のクロモジとの出会い、そして知られざる"クロモジ三兄弟"の話などをしたいと思います。
この方にお話を伺いました
(一社)和ハーブ協会代表理事、医学博士 古谷暢基 (ふるや まさき)

2009年10月日本の植物文化に着目し、その文化を未来へ繋げていくことを使命とした「(一社)和ハーブ協会」を設立、2013年には経済産業省・農林水産省認定事業に。企業や学校、地域での講演、TV番組への出演など多数。著書は『和ハーブ にほんのたからもの〈和ハーブ検定公式テキスト〉』(コスモの本)、『和ハーブ図鑑』((一社)和ハーブ協会/素材図書)など。国際補完医療大学日本校学長、日本ダイエット健康協会理事長、医事評論家、健康・美容プロデューサーでもある。