ハーブの有効成分には、人や環境には害を及ぼさない抗菌・消臭効果を持つものが多くあることをご存じですか?
近年、話題になっている「重曹」や「クエン酸」などの天然素材を家庭用洗剤として活用する「ナチュラルクリーニング」にハーブの力をプラスすると、清潔度がさらにアップ。香りを楽しみながら快適に掃除をすることができます。
今回は、精油(アロマオイル)を使ったナチュラル洗剤の作り方、ナチュラルクリーニングの方法をご紹介します。やり方はいたってシンプル。基本は重曹やクエン酸に精油(アロマオイル)を加えていつも通りに掃除をすればOK。汚れもニオイもしっかりオフしてくれますよ。
〔目次〕
ティートリー、ラベンダー、ハッカなど! ハーブの抗菌作用でカビ繁殖を阻止
ハーブの抗菌作用を暮らしに役立ててきた歴史は古く、紀元前から感染症対策や防腐剤などに用いられてきたといわれています。
抗菌力が高いといわれてきたハーブ(精油)20種類を調査した近年の研究データ(※1)によると、ティートリー(ティーツリー、ティートゥリーとも表記)、ラベンダーなどの精油は、水回りに発生しやすいクロカビの繁殖を優位に阻止するという結果が出ています。そのほか、シナモン、タイム、フェンネル精油も同様の力を持つことが明らかになっています。
※1 日本アロマ環境協会 アロマサイエンス研究所「精油の制菌作用」より
原著論文 「20種の精油の微生物に対する制菌効果」アロマテラピー学雑誌、Vol.12, No.1, 66-78, 2012
また日本の和精油「ハッカ油」にも、消臭のほか、カビや雑菌の繁殖を防ぐ働きがあるとされ、家中の掃除や掃除後の清潔さをキープするのにおすすめです。
バスルームは「重曹+精油」で汚れスッキリ! ハーブで防カビ
バスルームは、家の中でも特にカビが発生しやすい場所。カビは一度つくと落ちにくくなるので、こまめなお手入れでしっかり防ぎましょう。
カビやぬめりを落とすには、重曹が有効です。重曹は別名・炭酸水素ナトリウムと呼ばれる白い粉で、粒子が細かく、研磨作用がある天然素材。そんな重曹にカビの制菌に優れた精油を加えれば、汚れを落としながらカビ予防もできます!
重曹は肌に優しいので、手が荒れにくいのも嬉しいポイントです。
〔おすすめ精油〕
ラベンダー、ティートリー、ハッカ
- 〔用意するもの〕
- 重曹 1カップ
- 精油 15~20滴
- 蓋つきの容器
※重曹、精油の選び方については、文末コラム「精油の選び方」/「重曹の選び方」をご覧ください。
〔作り方〕
- 容器に分量の重曹、精油を入れる。
- 材料をスプーンなどでよく混ぜてできあがり。
- 〔掃除方法〕
- 浴槽や床・・・この重曹を振りかけてスポンジやブラシでこすり洗い。
- 壁・・・スポンジやモップに重曹をつけて磨く。
- 収納ラック・タイルの目地・・・重曹を振りかけて、歯ブラシなどでこする。
- 仕上げに、冷水シャワーをかけてすすぐ。
○ポイント
・保管の際はしっかり蓋をし、高温多湿を避けて2~3カ月を目安に使い切ってください。
・こびりついた汚れは、普段使っている石けんを泡立ててスポンジに取り、上から重曹を振りかけてこすると落ちやすくなります。
・入浴後に浴室全体に冷水をかけると、カビが発生しにくくなります。これを機に、入浴後の冷水シャワーを習慣にしましょう。
キッチンの油汚れは重曹で撃退! 柑橘系のキッチン磨き
キッチンの油汚れには、重曹が力を発揮。重曹はアルカリ性なので、酸性である油汚れを中和し、汚れや油のぬめりを落とします。
そんな重曹に汚れ落としや抗菌に有効な精油を合わせると、天然のキッチン磨きに。市販品にもオレンジの成分が入った洗剤などがありますが、スイートオレンジやレモンなど柑橘類に含まれるリモネンという成分は、油汚れをスッキリ落とすと言われているほか、抗菌作用も期待できます。
〔おすすめ精油〕
スイートオレンジ、レモンなど
- 〔用意するもの〕
- 重曹 1カップ
- 精油 15~20滴
- 蓋つきの容器
※重曹、精油の選び方については、文末コラム「精油の選び方」/「重曹の選び方」をご覧ください。
〔作り方〕
- 容器に分量の重曹、精油を入れる。
- 材料をスプーンなどでよく混ぜてできあがり。
- 〔掃除方法〕
- コンロや魚焼きグリル・・・表面に重曹を振りかける。汚れの程度にもよるが、汚れと重曹を30秒~1分ほどなじませたら、スポンジでこすり布で拭き上げる。
- シンクや水切りラック、生ゴミかご・・・重曹をつけたスポンジでカビや汚れをこすり落とし、仕上げに熱湯をかける。
○ポイント
・保管の際はしっかり蓋をし、高温多湿を避けて2~3カ月を目安に使い切ってください。
・頑固な汚れには重曹に泡立てた石けんをプラスして、スポンジでよくこすり、汚れが浮き上がってきたら、布で拭き取ると良いでしょう。
・カビは60度で死滅するといわれているため、熱湯消毒が有効。食事の片付け後にシンクやラックにサッとこの重曹をかけて汚れを落とし、熱湯をかける習慣をつけると、蒸気に漂う香りに癒されながら、綺麗なキッチンをキープできますよ。
トイレは「クエン酸+精油」で爽やかに! ハーブの消臭スプレー
掃除しているつもりでも、便座のつけ根や温水洗浄のノズル、便器と床の境目などの細部にたまる汚れは見落としがち。こびりついてしまったアンモニア臭や水あかなど、アルカリ性の汚れや臭いは、クエン酸(酸性)で中和すると落としやすくなります。
クエン酸を水で溶かし、抗菌・消臭に優れたレモン、レモングラス、ユーカリ、ラベンダーなどの精油を加えると、汚れと共に臭いもオフできる爽やかな消臭スプレーのできあがり。ハーブの抗菌作用で掃除後も雑菌が繁殖しにくくなりますよ。
〔おすすめ精油〕
レモン、レモングラス、ユーカリ、ラベンダー
- 〔用意するもの〕
- クエン酸 小さじ1
- 水 1カップ
- 精油 15~20滴
- スプレー容器
※クエン酸、精油の選び方については、文末コラム「精油の選び方」/「クエン酸の選び方」をご覧ください。
〔作り方〕
- クエン酸を水で溶かし、精油を加え、スプレー容器に入れる。
- 使用する際に、容器をよく振ってからスプレーする。
- 〔掃除方法〕
- 便器の外側や床・・・全体的にスプレーをしてトイレットペーパーや布で拭きとる。
- 便器内・・・スプレーしてブラシでこすり洗いする。
※こびりついた輪じみは、重曹をトイレブラシにつけてゴシゴシこするときれいになります。
○ポイント
・保管の際は高温多湿を避け、1カ月を目安に使い切ってください。
・便座のつけ根やノズルなど、見落としがちな箇所もたっぷりスプレーしましょう。
・汚れと共に臭いもオフでき、掃除後も雑菌が繁殖しにくくなります。
・トイレにこのスプレーを常備してこまめに掃除することで、汚れ知らずのトイレにしましょう。
あまった重曹で簡単! ふわりと香るルームフレグランス
重曹には、消臭・防湿作用もあるので、余った重曹と好みの精油をジャムなどの空きビンに入れると、手軽にルームフレグランス(室内芳香剤)が作れます。靴箱やトイレ、冷蔵庫などに置くと脱臭剤にもなりますよ。
ただし、重曹のフレグランスは時間が経つと消臭・防湿効果が穏やかになります。1カ月を目処に、掃除に再活用すると良いでしょう。
精油や重曹・クエン酸の選び方&注意点
★精油の選び方
パッケージや瓶の表示をチェックし、100%天然のものを使用します。目安として「100% pure nature」や「AEAJ(日本アロマ環境協会)表示基準適合認定精油」と書いてあるものをセレクトするとよいでしょう。
精油はそれぞれ植物から採れる量が異なります。採油量の多い柑橘類やハーブ系は入手しやすいですが、量が採れないバラやジャスミンなどの花精油は高価です。そのため、雑貨店などで、バラもラベンダーもレモンも全て均一価格で売られているものは、合成オイルの可能性が高いので注意が必要です。
★精油の分量
人によっては香りが強いと感じるかもしれないので、香りを試してみて強く感じたら入れる分量は少なめから始めるとよいでしょう。
★ペットを飼われている場合
猫を飼われている場合は精油の使用は避けた方がよいでしょう。精油は濃度が高いので、鳥や犬など他の動物を飼われている場合も使用には注意が必要です。
★重曹の選び方・注意点
重曹には、大きく工業用(掃除用)と食用・薬用があります。食用・薬用を使用しても問題ありませんが、比較的安く手に入る工業用(掃除用)がおすすめ。薬局やスーパーマーケット、ネット通販などで手に入ります。
粒子が細かいため、研磨しても素材を傷つけにくいといわれていますが、初めて使う場合は、目立たない所で傷がつかないかどうか試してから使用してください。また、アルミニウムにかけると黒ずむので注意してください。
★クエン酸の選び方・注意点
クエン酸にも、大きく工業用(掃除用)と食用・薬用があります。食用・薬用を使用しても問題ありませんが、比較的安く手に入る工業用(掃除用)がおすすめ。クエン酸が手に入らない場合は、食酢で代用することも可能です。ただ、酢のにおいが気になる場合や香りを楽しみたい場合はクエン酸を使用することをおすすめします。
鉄につけるとサビたり、大理石につけると変色することがあります。また、塩素系の洗剤と混ぜると有毒ガスが発生し大変危険ですので、注意しましょう。
この方にお話を伺いました
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ所属 葛和恵奈子 (くずわ・えなこ)

英国IFAアロマセラピスト/AEAJアロマセラピスト/AEAJアロマセラピーインストラクター/メディカルハーブコーディネーター/RTAベビーマッサージセラピスト
編集者として取材で出会ったハーブ&アロマのチカラに魅せられ、メディカルハーブ健康術&生活術を学ぶ。専門学校講師として、またイベントやセミナーでTPOに合わせたハーブ&アロマ活用方法を伝えている。2児男子の母。