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月刊 元気通信

養命酒

特集記事 2021年7月号

クールダウン浴で夏バテ&睡眠不足を解消!
身近なもので日本の名湯気分♪

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7月に入るといよいよ夏の暑さも本番。昼間だけでなく、夜も気温が下がらず熱帯夜となり、寝汗をダラダラとかいてしまって眠れないという人も多いのでは? 睡眠不足は夏バテを引き起こす大きな原因の一つです。

今回は体温と同じくらいの「ぬる湯」に浸かることで体温を無理なく下げ、寝汗をかきにくく なってぐっすりと眠れると評判の「クールダウン浴」をご紹介。

また、全国の有名な温泉地の泉質を身近なもので再現する「手作り入浴剤」もお教えします。この夏は自宅でゆったりと温泉気分を味わってみましょう。

教えてくれた先生

温泉療法専門医早坂 信哉(はやさか しんや)先生

東京都市大学人間科学部 学部長・教授。1993年、自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年、自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て、現職。(一財)日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、(一社)日本銭湯文化協会理事、日本入浴協会理事。生活習慣としての入浴を医学的に研究する第一人者。著書に『入浴検定公式テキストお風呂の「正しい入り方」』(日本入浴協会/共著)、『最高の入浴法』(大和書房)、『入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)がある。

最近夜も蒸し暑いせいでなかなか寝付けないし、寝汗びっしょりで熟睡できていない気がするのよね。

だからといってクーラーをかけすぎたら、体が冷えてしまって冷房病になってしまうし...。どうしたら快適に眠れるようになるのかな。

その夏の寝苦しさの悩み、お風呂の入り方を工夫すると解決できるかもしれませんよ。

お風呂の入り方で変わるのですか?

夏は暑さによって体が火照った状態になっています。その状態で冷たいシャワーを浴びたり、普通の温度の湯船に浸かっても体内の温度は下がりません。そこで体温と同じかそれよりやや低め温度の湯船に20〜30分間浸かる「クールダウン浴」をすることで、体の深部までスムーズに体温を下げることができ、寝汗もかきにくくなるのです。

「クールダウン浴」? いかにも涼しそうな名前ですが、体を冷やすだけなら水風呂でもいいのでは?

いえいえ、体温より大幅に低い温度のお風呂だと冷たさにより交感神経が活性化され逆に寝付きにくくなるのです。「クールダウン浴」のいい点は、副交感神経にも働いて快適な眠りに誘ってくれるところなのです。

それはいいですね! 早速その入浴方法を教えてください!

シャワーvsお風呂 湯船に浸かる方がいい理由とは?

夏はさっとシャワーで済ませる人も多いかと思いますが、まずは夏場も湯船に入った方がいい理由からご説明します。入浴にはさまざまな健康作用がありますが、そのなかに「静水圧作用」というものがあります。これはお湯の水圧により全身がマッサージされたような状態になり、血流に影響を与えることです。夏場、クーラーが効いた部屋にいることで手足の血流が悪くなり、冷え症になることもありますよね。そんなときに水圧でしめつけることによって、血液の流れがよくなる効果があるのです。さらに「浮力作用」によりプカプカと浮いたような状態になることでリラックス効果を生むため、副交感神経にも働きかけます。

夏の「クールダウン浴」にはメリットがいっぱい!

夏は熱が体内にこもりやすく、体が火照った状態になっています。とくに外から帰ったばかりだと外気の熱によりなおさらです。そんな状態でシャワーを浴びただけや、40〜42°C程度の普通の湯温の湯船に入ってしまうと、体温は下がらず、せっかく入浴しても汗がダラダラと止まらない残念な状態に。

今回ご紹介する「クールダウン浴」とは、一般的にぬる湯と呼ばれる38〜40°Cよりさらに低い、35〜38°Cと体温に近いお湯に20〜30分浸かる入浴法です。この体温に近い風呂の温度は「不感温度」と呼ばれ、体に熱が加わることや奪われることがないため、体にとって負担が少ないとされています。この「不感温度」に長めの時間入ることで、体温は無理なくゆっくりと下がっていき、効率的にもとの自分の体温レベルに回復。入浴後も汗をかきにくく、快適に過ごすことができるというメリットがあります。

深部体温と眠りの関係

人の体の中心部の深部体温は37°Cくらいとされ、皮膚温は32°Cが一般的です。人はこの深部体温がスムーズに下がると眠くなる仕組みがあります。例えば赤ちゃんは眠くなると手足が温かくなりますが、これは体の深部から熱を逃がすため血管が拡張し、血流を増加させることで皮膚温度が上昇する現象と考えられています。大人も同様に、血流に乗ってくる体の中心からの熱を効果的に奪い取れば、深部体温が下がって眠くなります。

「クールダウン浴」のお湯は、深部体温と同じかやや低い、35〜38°C。このぬるめのお湯に浸かると、皮膚表面は温まって血行が良くなり、副交感神経が優位になります。血液が熱を放出しながら流れるので深部体温は下がり、汗をかきにくくなって眠くなります。

入浴剤でお湯を柔らかくし肌にもプラス

一番風呂を喜ぶ人は多いかと思いますが、肌への負担を考えると実は一番風呂は避けた方がよいという研究結果があります。不純物をほとんど含まない日本の水道水は人の体液よりも濃度が薄いため、湯が皮膚と接すると水が皮膚の中へ移動します。長湯をすると指先がふやける現象はこの移動によって起こるものです。実は一番風呂と二番目以降のお風呂では湯の成分が異なり、二番風呂では先に入った人の皮膚に付着していた汚れや皮脂、汗などが湯に溶け込むため、わずかに湯の濃度が濃くなります。このわずかな変化が肌の刺激をやわらげます。この二番風呂と同じ効果が得られるのが、入浴剤です。入浴剤にはさまざまなミネラル分が配合されており、湯に溶かすことでやわらかい水質にする効果があるのです。ちなみに、クールダウン浴をする際の入浴剤選びでは炭酸系をおすすめします。炭酸系のお湯は湯船の温度に関係なく血管を拡張させて血流を良くする効果があります。さらに、実際の湯温より体感でプラス2°Cほど温かく感じるため、ぬる湯に慣れていない方でも無理なく長時間入ることができますよ。

お手製入浴剤で、自宅で有名温泉地を満喫♪

後半では、「クールダウン浴」をさらに楽しむために、お手製入浴剤に挑戦してみましょう。英国IFAアロマセラピストで身近な材料を使った入浴剤づくりも提唱する葛和恵奈子さんに、日本各地の名湯を再現する入浴剤の作り方を3種類教えてもらいます。泉質や効能も三者三様。自宅にいながらにして、温泉旅行気分を味わいましょう。

教えてくれた先生

英国IFAアロマセラピスト葛和 恵奈子(くずわ えなこ)先生

英国IFAアロマセラピスト、AEAJアロマセラピスト、AEAJアロマセラピーインストラクター、メディカルハーブコーディネーター、RTAベビーマッサージセラピスト、東京モード学園非常勤講師。編集者として取材で出会った植物の力、自然の力に魅せられ、アロマ&ハーブ健康術&生活術を学ぶ。専門学校講師として、またイベントやセミナーでウェルビーイングにつながるアロマライフスタイル術を伝えている。2児の母。

身近にあるもので 心身を楽しく整える

地球の活動の産物である温泉の泉質を再現するのは難しいのですが、それぞれの温泉地に想いを馳せながら、身近なもので、それに近い働きをする「自然素材」で自然に近づくという視点で考えてみました。もともと欧米やインドなどでは「キッチンファーマシー」(台所薬局)という言葉があり、台所にある身近なものを使って心身を楽しく整えるという考え方が根付いています。温泉に行けなくても、お風呂場はせわしない日常の中でも体をラクにし、体を休められるリラクゼーションルームだと思います。お湯や湯気は体だけではなく心までやわらかくしてくれます。気持ちをのびのびとさせて、温泉地に想いを馳せると、景色が見えてくるようなイメージを持っていただけるのではないでしょうか。

※入浴剤を使用する際の注意点
・ご自宅の浴槽が循環式浴槽の場合は入浴剤の使用が可能かどうかを事前にご確認ください
・ご紹介する3つの入浴剤のうち、「乳白色温泉」と「泥湯」は追い焚きをせず、1人の入浴が終わったら湯を捨て、入念に洗浄を行ってください

長湯温泉(大分県)のような
シュワシュワ炭酸泉を再現!

ほかにもこんな温泉地が......飛騨小坂温泉郷(岐阜県)など

「長湯温泉」は日本一とも称される炭酸泉湧出地として知られ、入浴すると体内に炭酸ガスが吸収され、それが全身の血管を拡張して血流をスムーズにさせるといわれています。とくに「ラムネ温泉館」は世界最高峰の炭酸含有量で、入ると体中が細かな気泡に包まれます。

■材料
・重曹...大さじ3
・クエン酸...大さじ2〜3

■作り方
2つの材料を混ぜるだけで完成。湿度が高いと空気中で発泡をはじめるため、入浴直前に作成します。肌が敏感な方はクエン酸の量を大さじ1に減らしましょう。

重曹(弱アルカリ性)とクエン酸(酸性)が化学反応し、炭酸ガスが発生することでシュワシュワ感を再現。炭酸ガスが発生するので、顔に近づけすぎないようにしましょう。

入浴剤を入れると炭酸がシュワシュワと勢いよく発生し、次第に泡が落ち着いてきます。泡が見えなくなっても湯の中には炭酸成分が健在。炭酸泉は入浴することにより体内に炭酸ガスが吸収され、全身の血管を拡張して血流をスムーズにするといわれます。そのため、低温でも温浴効果を得られます。これに(精製塩ではない)天然塩(大さじ3)を混ぜて握ると、天然塩に含まれる水分で材料がまとまりバスボムができます。バスボムの中におもちゃを入れると子供が喜ぶ入浴剤に。バスボムを作るときに抹茶、ココア、食紅などの色素をごく少量(耳かき1杯程度)入れると、ほのかに色づき楽しいですよ。

乳頭温泉郷(秋田県)のような
乳白色温泉を再現!

ほかにもこんな温泉地が......白骨温泉(長野県)、登別温泉郷(北海道)など

「乳頭温泉郷」は7つの温泉が点在しそれぞれ泉質も異なります。乳頭温泉郷を代表する湯処が、一番歴史が古く湯治場の雰囲気が残る「鶴の湯」。牛乳を溶かしたような乳白色の湯は硫黄成分に加え重炭酸イオン(≒重曹)やナトリウムイオンや塩化物イオン(≒塩分)なども含み、角質や皮脂を落とす美人の湯と呼ばれています。

■材料
・重曹...大さじ2
・天然塩(精製塩ではないもの)...大さじ1
・コーンスターチ...大さじ3

■作り方
全ての材料を混ぜ、湯船に入れてよくかき混ぜて入浴する。白濁の度合いや湯ざわりの好みにより、コーンスターチは大さじ2〜3杯で調整。

コーンスターチで乳白濁、重曹は湯触りを、海水塩や岩塩といった天然塩でミネラルを再現。コーンスターチは無臭でさらりとしていながらも適度な保湿力があります。

乳白濁の湯のレシピに、クエン酸大さじ1杯を加えると、濁り湯に加えて発泡も楽しめて◎。お湯を白濁させる材料としては、牛乳や生クリームなどでも可能ですが(循環式浴槽の場合は使用を控えてください)、乳製品の素材の匂いは好き嫌いがあると思います。コーンスターチは匂いもなく、さっぱりとした肌触りなので夏場はおすすめです。コーンスターチは放置しておくと配管の詰まりの原因にもなるので、入浴後はすぐに入念に洗浄をしてください。

後生掛温泉 (秋田県)のような
泥湯を再現!

ほかにもこんな温泉地が......別府温泉保養ランド (大分県)、霧島温泉(鹿児島県)など

泥湯の浴槽内の泥をすくい泥パックのように体に塗りながら入ると温湿布作用があるといわれています。泥で作った温泉パックや泥石鹸も作られています。

■材料
・カオリン (白色粘土を乾燥させて砕いたもの)...大さじ4
・蜂蜜...大さじ1(乳児と一緒に入る場合は使用を控える)
・水...大さじ1.5

■作り方
① 水と蜂蜜を混ぜる
② カオリンに少しずつ①を混ぜ込む
③ よくかき混ぜて入浴する

材料のカオリンは大型の生活雑貨店のボディケア用品売り場などに置いてあります。完成した入浴剤はそのまま湯に入れてもOK。また、ペースト状になった入浴剤を肌に塗り、入浴しながらゆっくり湯に溶かしていくのもおすすめです。

クレイ(粘土)はエステや化粧品にもよく使われ、ヨーロッパでは小さな傷ができたときの皮膚再生として愛用されています。クレイセラピーと言われるようにリラックス効果も認められています。カオリンはクレイの中では匂いが比較的穏やかで使いやすい材料です。また、蜂蜜には保湿効果もあります。

※万一、カオリンが肌に合わないときはご使用をお控えください

いずれの入浴剤も追い焚きは不可。そして入浴が終わったらすぐに湯を捨ててシャワーで浴槽を洗い流しましょう。

ふ〜っ。さっぱりした。ぬるめのお湯に浸かったから湯上がりでも汗が少なくて過ごしやすいね。

はじめて入浴剤を作ってみたけれど、材料を混ぜるだけでとても簡単。肌もいつもよりしっとりしている気がして気持ちがいい!

これなら今夜はぐっすり眠れそうだね。憧れの温泉宿に行く夢でもみられますように。

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