「ラン科」の植物では珍しく日当たりのいい場所を好む
ネジバナは梅雨に入ると背丈を急速に伸ばし、米粒ほどの美しいピンクの花が茎の下からねじれるように咲き始めます。花の色は淡紅や紅色がほとんどですが、まれに白い花(シロモジズリ)や緑色を帯びた花(アオモジズリ)もあります。
日本全国の原野の芝地や田の畔の草中に多いラン科の多年生草本です。一般的なラン科の植物が林や湿地に多く生育するのに対し、日当たりがよく乾燥した所に生える特徴があります。
夏に葉間から10〜30cmの淡緑色の茎を1本出し、上部にねじれた穂状の花序を出して多数の桃紅色の小花を連ね、その姿はたいへん可憐です。ネジバナ属は世界に35種類あり、北アメリカ中部以北と東南アジアの2箇所が生育の中心となっています。
花をよく観察すると、各花が90度ずつ変化して咲いているので、ねじれて咲いているように見えます。ねじれ方は右巻きか左巻きかは決まっておらず、同じ株から伸びた茎でも、左巻きと右巻きが混ざっていることもあります。
小さな植物ながら詩歌の対象にもなっていて、『古今和歌集』(905年)に収められ、百人一首にも収載されている河原左大臣源融(みなもとのとおる)の歌が有名です。
登場する「モヂズリ(モジズリ)」はネジバナの別名で、源融が福島県信夫郡を按察使として訪れた折に愛し合った、土地の娘・虎女との悲恋の際に詠んだもので、これが植物の語源といわれています。ネジバナの別名にはほかに、ネジリンボウやヒネリバナ、ヒダリマキなどがあり、いずれも花の咲く姿から生まれました。
花言葉は、「思慕」です。
出典:牧 幸男『植物楽趣』
今月の生薬クイズ
【Q.】 ネジバナの花のねじれ方は右巻き?それとも左巻き?
正解は?
➕
【A.】右巻きと左巻きが入り混ざって咲く