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生薬ものしり事典113

寒さに耐え清楚な花を開く「スイセン」

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1万種以上の園芸種がある世界で親しまれる花

2月の初めに立春が訪れ、暦の上では春となりますが、まだまだ寒さが続く季節です。花の乏しい時期ですが、庭の日当たりがいい場所ではスイセンが蕾を膨らませます。ただ、歳時記では1月となっており、昭和50年の年賀切手の図柄は桂離宮新御殿の長押の釘隠の水仙の図柄が選ばれていて、昭和61年の「花シリーズ」の切手でも1月に取り上げられています。

スイセンはヒガンバナ科の多年生草本で、日本の暖地の海岸近くに生え、また観賞品としてよく庭園に植えられています。鱗茎は卵型の球形で外皮は黒く、下方に白色の多数のひげ根を出しています。1〜2月ごろ、葉の間から高さ20〜30cm程度の直立した花茎を出します。その先端に花が横向きに咲き、良い香りを漂わせます。日本種のスイセンは、南欧の地中海地方原産のフユザキスイセンの変種で、唐代に中国へ、そしてさらに日本に伝えられたとされます。また、一部は中国で野生化したものが海流によって日本に運ばれ、各地の沿岸で繁殖したと言われています。渡来した時期ですが『万葉集』(783年ごろ)や平安文学にはスイセンの記述は見当たらず、室町時代の『下学集』(1444年)に、漢名の水仙華、和名の雪中華が初めて登場するので、人里で目にするようになったのは鎌倉時代だと考えられます。

世界中で古くから親しまれてきたこの花は改良が進み、イギリス王立園芸協会には、現在1万を越える品種が登録されています。花弁は白、黄、淡黄色、橙色など彩りも豊か。園芸種を区別すると、中国・日本系と洋種スイセンに区別できます。寒さに耐え香気をたたえる清楚な姿が、詩歌のモチーフに取り入れられてきました。

また、イギリスのロマン派詩人・ワーズワースの詩にはラッパスイセンが登場します。彼の故郷の湖水地方には、「The Daffodils(水仙)」を詠んだ風景が残っています。

I wandered lonely as a cloud
That floats on high o'er vales and hills
When all at once I saw a crowd,
A host of golden daffodils,
Beside the lake, beneath the trees
Fluttering and dancing in the breeze.

スイセンの名は、漢名(水仙)の音読みですが、唐代の呼び方は捺祇(ないぎ)で、古代ペルシャのナルギの音訳です。 『本草綱目』(1578年) では「湿った土地によく育ち、水を欠くことができない植物」と水の字を使った記述があります。別名は金盞銀台、雪中花、長寿花、玲瓏、春玉、凌波子、 凌波僊子、儷蘭、雅蒜など多く、いずれも花の咲く姿や咲く季節の姿から呼ばれています。学名はNarcissus Tazettaで、属名はギリシア神話で自分の美しさに恋をしたナルキッソスから、種小名はイタリア語の杯の意味で、副花冠の形によります。

薬用には球根をすりおろした物を歯痛の頬に貼るとよいと言われますが、しかし、葉および根は毒性が強いので、素人判断での使用は絶対にやめましょう。とくにスイセンの葉とニラの葉は似ていて食中毒の原因となるので注意が必要です。

花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」「尊敬」「報われぬ恋」です。

出典:牧 幸男『植物楽趣』

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