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天狗の葉団扇とも呼ばれる「ヤツデ」

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欧米人にも愛される日本固有の植物

12月にもなると、陽射しは弱まり、ますます日中の時間が短くなってきます。年の瀬が近づき、世の中も慌ただしい季節。ヤツデの大きな常緑の葉のてっぺんに、乳白色の粒々のような花が咲き始めるのはこの頃です。派手さはありませんが、葉の緑と白い花のコントラストが見事で、花の少ない時期なのでとても目立ちます。さらに、霜や雪にも負けず、冬季の間咲き続ける姿は可憐にも思えてきます。庭木としてポピュラーな植物ですが、花が咲くのは海抜1000m程度まで。それ以上になると花が咲くのは少なくなります。比較的日陰に強く、大きな葉を広げるので、昔はよく便所の目隠しとして植えられていました。このような印象があるのか、日本人はこの植物の造形美に注目してきませんでした。 ヤツデをヨーロッパに紹介したのは江戸時代の中頃(1775年)、オランダ東インド会社の外科医として来日したスウェーデンの植物学者ツンベルクです。以来、欧米では、寒さに強く、緑の光沢と葉の厚いこの植物を、家庭やオフィスの観葉植物として珍重しています。

ヤツデはウコギ科の常緑潅木(低木)で茎は叢生、高さは2〜3mに成長します。光沢のある濃い緑色の大型の葉は7〜11裂に深く分かれ、掌のように見えます。11月になると梢上に花茎を伸ばし、寒さが厳しくなる12月に黄白色の五弁の小さな花を球状につけます。

大きな葉は熱帯的な印象で、日本固有の植物では珍しい存在といえます。ヤツデの別種は、小笠原諸島のムニンヤツデ、台湾に生育する台湾ヤツデ、冬に地上部が枯れるカミヤツデなどが存在しています。 庭木として人気が高いため品種改良が進み、白斑が葉の周縁に入るフクリンヤツデ、葉に黄色斑が入る金紋ヤツデ、葉に白斑が入る白斑ヤツデ、葉の裂片が欠刻している矢車ヤツデなど多くの品種が生まれています。

日本人が親しみはじめたのは江戸時代後半。貝原益軒が『大和本草』(1709年)の中で「黒き実なる毒ありと言う。鰹のさしみを八手の葉に盛りて、食すれば死すと俗に言う。」の記述が一般に知られていたからかもしれません。また、寺島良安の『和漢三才図会』(1712年)には、「八手木は正字未詳」とあるだけで詳しく触れていません。益軒が言うように葉に死ぬほどの毒はありませんが、好まれない植物であったようです。このような理由が、天狗の葉団扇と呼び、疫病流行の時にこれで追い払ったり、屋敷内に植えれば、病魔・悪魔よけなどの迷信につながったのかもしれません。日本固有の植物ですが日本人の好みに合わなかったのか、詩歌に詠まれるのは欧米文化が入る明治以降になってからです。

植物名は、牧野富太郎博士が「八つ手でただなんとなく、その分裂葉を眺めてつけた名前であって、手形に多く切れ込むので数多いことを八で表現したもの」と述べています。漢名はこの植物が日本原産のためとくになく、習慣的に八角金盤を使いますが、金剛纂でもよいとされます。別名は天狗の葉団扇、天狗の団扇、牛扇などがあります。それぞれの意味は、外観からの表現と、牛小屋に集まる蝿を追い払うのに使うからです。なお、漢名の金盤と金剛ともに葉が硬いことを表し、纂は葉が枝先に集まっていることを示します。学名はFatsia japonicaで、属名は八つ手のHait→Fatsi→Fatsiaと変化したもの、種小名は日本特産を意味します。

薬用には、葉を細かく刻み、気温の高い時に日干ししたものを鎮咳に使います。また、浴用剤として乾燥した葉を使うと、リュウマチに効果があると言われています。ただ、弱いながらも毒性がある植物ですので、口に入れないように注意してください。

花言葉は、「分別」「親しみ」「健康」です。

出典:牧 幸男『植物楽趣』

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