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生薬ものしり事典110

秋の野⼭に⻑い間彩りを添える「マユミ」

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古代から⼸や和紙の原料として重宝された植物

吉⽥兼好が書いたとされる『徒然草』(1330〜1331ごろ)に、「もののあわれは秋こそまされ」とありますが、紅葉も終わりに近づくと、落葉が盛んになり寂しさが募ってきます。この頃⽬⽴つ植物にマユミがあります。鑑賞できる期間が⻑いのはマユミの魅⼒のひとつ。秋の訪れを感じる頃、マユミは葉が⾊づきはじめ、そして多くの⽊々が葉を落とす時期に、果実が四稜ぞいに四裂し、真紅の種⼦が⽬⽴つようになります。遠くからはまるで⾚い花が咲いているように⾒え、⽊々が紅葉した後に、再び独⾃の美しさを装う姿が印象に残ります。マユミの美しさを清少納⾔は『枕草⼦』(1001〜1012年)の40段で、「たそばの⽊、しななき⼼地すれど、花の⽊どもちりはてて、おしなべてみどりになりたるなかに、時もわかず、こきもみじのつやめきて、思ひもかけぬ⻘葉の中よりさし出でたる、めずらし。まゆみ、さらにもいはず。」と述べています。

マユミは北海道から九州の各地の⼭野に⾃⽣していて、⽇本特有の雌雄異株のニシキギ科の落葉潅⽊(=低⽊)、または喬⽊(=⾼⽊)です。若い枝には⽩い筋があるのが特徴で、時には6m近くまで成⻑することもあります。初夏にはがく辺四枚の⼩さな緑⽩⾊の花を咲かせますが、葉を茂らせる時期のためあまり⽬⽴ちません。秋に果実が熟すと淡紅⾊となり、4個に深く裂けて真紅⾊の種⼦を露出します。この植物には葉の⼤⼩や広いもの、狭いものなど⾊々とありますが、同⼀種内の変種に過ぎません。マユミの名前を冠した関連植物に紫真⼸、⼩真⼸、⼤⼩真⼸、備前真⼸、琉球真⼸などがありますが、いずれも紅葉の美しさで知られています。最近は観賞⽤に庭に植えるなど、切り花としての⼈気も⾼まっています。

マユミは我が国では古くから知られていた植物で、もっとも古い記録は『仁徳天皇紀』にある古代歌謡で、

ちはや⼈ 宇治の渡りに
渡瀬に ⽴てる 梓⼸檀(あずさゆみまゆみ)
い伐らむと ⼼は思えど
い取らむと ⼼は思えど
・・・・・・・・・・・

と詠まれています。この歌の梓⼸檀は諸説ありますが、梓の⽊で作った⼸にマユミの繊維を巻いたものとされています。これはマユミが古くから知られていたのは、⼸という武器の材料になることと、真⼸紙が作られていたからとされます。『万葉集』(⾶⿃〜奈良時代)にも8⾸登場し、古くから⽣活に密着した植物だということが分かります。

マユミという植物名はこの植物で⼸を作ったことに由来し、頭の「ま」は⼸の美称(褒めたたえた呼び⽅)となります。漢名は真⼸で、別名に⼭錦⽊(やまにしきぎ)、⽩杜(はくと)などありますが、それぞれ紅葉の姿、杜仲より⽪の繊維が⽩いのが由来となっています。学名はEuonymus sieboldianusで、属名はギリシア古名のeu(良)+commi(ゴム)の合成語、樹⽪に杜仲と同様にゴム質(グッタぺルカ)を含むからで、種⼩名は命名者のシーボルトの名前です。

この植物は⽪の繊維が強く、奈良時代には檀紙という和紙の原料に利⽤され、広く⽤いられていました。やがて平安時代に楮(こうぞ)が和紙の原料として使われるようになると、紙質の問題から檀紙は姿を消してしまいました。

薬⽤には乾燥した種⼦を煎じてアタマジラミやケジラミに使います。しかし種⼦は少量でも吐き気や下痢を起こすので、くれぐれも⼝に⼊れないように注意が必要です。新芽は⼭菜として天ぷらやおひたしにすると美味しくいただけます。花⾔葉は、「あなたの真⼼が⼼底にひそんでいる」です。

出典:牧 幸男『植物楽趣』

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