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生薬ものしり事典108

独特の香りと辛味が特徴の「ミョウガ」

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古い時代から親しまれる日本のハーブ

爽やかな香りと独特の辛味を持ち、そうめんや冷奴などの薬味として、また天ぷらや酢の物にしても美味しいミョウガ。ミョウガには初夏に食べる若い茎の「ミョウガタケ」と、8月から10月頃に食べる「ミョウガ(ミョウガの子)」があります。一般に親しまれているのはミョウガの子の方で、日本人がミョウガを愛するが故に、現在は一年中スーパーなどに並ぶなど、季節感の乏しい食べ物になってしまいました。 もともと、ミョウガは熱帯アジアの原産のショウガ科の多年生草本で、古い時代に渡来しました。今は野山に自生するほか人家でも栽培されていて、高さ40cm〜1mほどに成長し、芳香があります。盛夏の頃に根茎からさや状の鱗片をつけた新しい茎を出して先端に肥厚した一花序を出します。そして多数の紫脈紅緑色の包葉間から大きな淡黄色の花を地面に接して咲かせます。寿命は1日と短いのですが、次々と11個ほど咲くので長い間咲いているようにみえます。よく観察すると蘭のような気品がある花で、鑑賞の対象にならないのが不思議なくらいです。 ミョウガの子のすがすがしい芳香と辛みはかなり古い時代から日本人に親しまれていて、「正倉院文書」(7〜8世紀)や「延喜式」(927年)に大膳、内膳の宮中料理に用いられたという記述も残っています。日本を代表するハーブともいえますが、食べ物としての認識が強かったのか、詩歌に詠まれるようになったのは江戸時代以降です。

植物名は古名をメガと言い、今日の日本名は以前のメウガの綴りでその呼音がのびたものと言われています。古くから私たちの生活に溶け込んできた植物だけに、米賀、芽香、茗荷、女荷、嘉草など、数多くの別名が伝わっています。学名はZingiber Miogaで、属名はサンスクリット語のsringavera(角形の)に由来する言葉で、根茎の形により、種小名は日本名をそのまま当てはめています。 茗荷を食べると物忘れがひどくなるという俗説は、釈尊の弟子で記憶力が悪かった「周梨般特(しゅりはんどく)」の死後、墓地から茗荷が生えてきた話や、落語の「茗荷宿」が有名です。落語では「宿の主人が泊り客にミョウガ料理を食べさせて、預かった大金の入った財布を忘れさせようと仕組みますが、財布を取り戻され、自分は宿賃をもらい忘れる」という筋になっています。 薬用は生薬名を蘘荷(じょうか)と書き、花茎は夏から秋に生のまま消化促進に、根茎は水洗後に陰干しして、煎じて凍傷のかゆみに利用します。 花言葉は、「忍耐」です。

出典:牧 幸男『植物楽趣』

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