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生薬ものしり事典107

秋の七草の一つ「オミナエシ」

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万葉時代から日本人の美意識に響く花

8月初旬。夏真っ盛りといった暑さが続きますが、暦の上では立秋を迎えます。植物の世界では秋の七草が花を咲き揃えます。奈良時代初期の歌人・山上憶良は七草を題材とした序歌として

と詠み、秋に咲く植物のうち代表的なものを7種あげ、旋頭歌としています。そして、

と詠んでいます。この選ばれた七草は、今日でも変わることはありません (万葉時代の朝顔は今日では桔梗と解釈されており、今も昔も秋の七草は同じ植物から成り立っているとされます)。その秋の七草のうち、盆花として好まれているのがオミナエシです。古くからよく知られた植物で、花の色が明るい黄色で、日持ちが良いのが好まれてきたのでしょう。目を見張る美しさというほどではないですが、優しそうな姿は女性にも見立てられ、同時に少し寂しそうに風に揺れる姿は秋の代表的な風情ともいえます。

オミナエシは東アジアに広く分布し、日本では北海道から九州までの日当たりのよい草原や丘陵地帯で見られる、オミナエシ科の多年草です。茎は細く直立し高さ1m以上に成長し、葉は対生で下部のものは羽状に分裂しています。晩夏から秋にかけて茎上部で分枝し、その先に径3〜4mmほどの黄色い細花を多数つけて散房状となります。繁殖力が強く、やや乾燥した草原でよく目にするほか、園芸種として庭に植える人も多いです。

類似植物にオミナエシ科のオトコエシがあります。オミナエシに似ていますが花は白色で全体的に毛は多め。オミナエシ(女郎花)と比べると強剛なので、男性に見立てて「オトコエシ(男郎花)」 と呼ばれます。オトコエシは飢餓のときに救荒植物として葉を食べていた記録が残っています。

オミナエシは『万葉集』(629〜759年)には14首採用されているのをはじめ、古今和歌集(914年頃)、源氏物語(1000〜1004年頃 )、徒然草(1330〜1331年頃)など多くの古典に取り上げられています。能の「女郎花 (オミナメシ)」では、美しいオミナエシを手折ろうとする旅僧と、それをとがめる花守の老人によるオミナエシにまつわる歌問答が描かれるなど、古くから日本人が好んできた植物だということが分かります。

汎用される漢名に「女郎花」がありますが、これは姿・形が気品のある女性を思わせることから「上臈花(じょうろうばな)」と称したのがこの名に転じたとされています。しかし、この女郎花の字は万葉時代には見られず、延喜年間(901〜922年)頃からです。 学名はPatrinia scabiosifoliaで、属名はフランスの植物学者M.Patrina(1742〜1814年)の名、種小名は松虫草の葉に似るという意味です。 薬用としては生薬名を敗醬 (はいしょう)と呼び、根茎に排膿作用があることから、化膿性疾患や利尿、消炎、鎮静などによく使われています。 花言葉は「美しさ・親切・はかない恋」です。 出典:牧 幸男『植物楽趣』

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