パンやケーキ、紅茶やコーヒーに少したらすと、ぐっと美味しさを増してくれるハチミツ。
ビタミン、ミネラルなど150種類以上の成分が含まれ、高い殺菌効果もあり、風邪予防や美肌にも効果的といわれています。ほかにも多くの効能を持ち、古くから健康を助ける「生薬」としても重宝されてきました。
そんなハチミツの歴史と、効果・効能、活用法についてご紹介します。
ハチミツの効果・効能
ハチミツが生薬だというと意外かもしれませんが、中国最古の薬物書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には「石蜜(ミツバチが岩の間につくった巣から得られる蜜)」として収載され、「気を益し、中を補い、痛みを止め、毒を解し、衆病を除き、百薬を和す」とあります。
漢方では粉末状の生薬を丸薬にまとめるためや、飲みやすくするためなどに使用されてきたほか、食材の臭みを取ったり、肉を柔らかくしたりする作用もあります。
ハチミツの主な作用は滋養強壮、潤肺止咳(じゅんぱいしがい)、潤腸通便、解毒です。
滋養強壮
疲労の原因の一つにエネルギー不足があります。これを補うには糖質が必要で、食べ物に含まれる糖類の多くは、最終的に果糖やブドウ糖に分解されて体内へ吸収されます。
しかし、ハチミツは約70%がブドウ糖や果糖。消化の負担をかけずにダイレクトにエネルギーとして吸収されます。胃腸が弱く疲れやすい人でも効率よく栄養が吸収され、疲労回復に効果的とされています。
潤肺止咳(じゅんぱいしがい)
「潤肺止咳」とは肺を潤し咳を止める・鎮めるという意味です。
ハチミツは周囲から水分を集める性質(吸湿性)が高く、過酸化水素という抗菌成分による高い殺菌効果ももっています。人気のマヌカハニーは、この過酸化水素に加えて「メチルグリオキサール」という抗菌成分も含まれているので、より高い殺菌効果が期待できるといわれています。
ハチミツは喉の粘膜を保護して乾燥感を除いたり、乾燥からくる咳を改善したりする効果があるとされています。風邪の症状緩和や、喉の乾燥、慢性的な空咳の抑制などにおすすめです。
潤腸通便
中医学ではハチミツによる潤す作用は腸にも働くことが知られています。高齢者や産後女性など虚弱状態にある方の便秘に役立つといわれています。
ハチミツはオリゴ糖とグルコン酸を含むことがよく知られています。オリゴ糖は腸内でビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きがあり、グルコン酸も腸内の善玉菌の増殖をサポートする成分として注目されています。
解毒
ハチミツの解毒作用とは漢方処方で、ほかの生薬の強い作用を和らげることを意味します。「百薬を和す」ともいわれ、漢方処方の一部にハチミツが使用されています。
風邪予防や美容に! ハチミツの活用法
ここでは、健康や美容のケアができ、同時に美味しくハチミツを摂取できる活用法をご紹介します。
大根ハチミツのつくり方
ハチミツの強い殺菌効果、粘膜保護作用に加えて、大根がもつ抗炎症、鎮咳・去痰作用も期待できるレシピ。風邪に気をつけたい冬に常備したい一品です。
- 〔材料〕
- 大根 ...... 適量
- ハチミツ ...... 適量
- 〔つくり方〕
- ひと口サイズの角切りにした大根をハチミツに2~3日漬ければ完成。
できあがったら、飴のようになめながら食べてみましょう。すぐに食べたいときはすりおろした大根にハチミツを混ぜてもOK。
ハチミツレモンのつくり方
ハチミツの甘味とレモンの酸味の組み合わせが魅力のハチミツレモン。そのまま食べても美味しいですし、シロップを使って飲み物にしたり、レモンを料理やスイーツに使ったりなど、いろいろなアレンジが楽しめます。
密閉できる保存瓶を煮沸消毒してから使用しましょう。
- 〔材料〕
- ハチミツ ...... 180g
- レモン ...... 1個
- 〔つくり方〕
- レモンをよく洗い、薄い輪切りにする
- 洗った保存容器にレモンとハチミツを交互に入れていく
- レモンが表面に浮かないよう、最後にハチミツを上からたっぷり注ぐ
- 冷蔵庫で1日以上寝かせる
ハチミツ紅茶のつくり方
レシピでは茶葉を使用しましたが、ティーバッグを使っても大丈夫。ミルクやジンジャーを加えるのもおすすめです。
- 〔材料〕ティーカップ約2杯分
- 茶葉 ...... 3〜4g
- 水 ...... 300ml
- ハチミツ ..... 大さじ1〜2
- 〔つくり方〕
- お湯(分量外)を沸かしてティーカップに入れ、ティーカップ自体を温めておく
- 1のお湯を捨て、温まったティーカップに茶葉と熱湯を入れ、数分蒸らす
- 茶葉を取り除き、ハチミツを加えてよく混ぜる
「食べる」以外の用途でも活躍
ハチミツは古くから疲労、湿疹、切り傷や火傷などさまざまな症状の治療薬としても使われてきました。
ハチミツは保湿効果に優れており、乾燥した肌にうるおいを与えしなやかな状態に維持することができます。ハチミツを原料とした美容用品もあります。
ハチミツの味わいは蜜を採る花によって変わる
ハチミツは、蜜を採取する花の種類によって味と風味が変わってきます。
現在、国内で生産されているもっとも多いハチミツは、ミカンの花から蜜をとったもの。ほのかに柑橘類のにおいがします。その他、栗やりんご、レンゲ、菜の花、クローバー、アカシアなど、それぞれに独特の味があります。
いろいろと食べ比べてみるのもおすすめですよ。
ハチミツQ&A
ハチミツをより上手に、効果的に活用していただくために、ハチミツの素朴な疑問や利用法でよくある質問にお答えします。
ハチミツを毎日食べ続けた結果は?
ハチミツを摂取することで、上でご紹介したさまざまな健康効果が期待できます。
ただし、ハチミツは糖類が主成分なので、過剰に摂取すると血糖値の急上昇、体重増加などにつながるためとりすぎはおすすめできません。とるタイミングは、エネルギー補給や疲労回復に役立つ朝食や運動後がよいでしょう。
※ 普段から血糖値が高いなどの持病がある方は、医師に相談をしてハチミツを摂取するようにしてください。
ハチミツが喉に効くのは本当?
ハチミツは過酸化水素による高い殺菌効果と、高い保湿力も備えているので、喉の粘膜を保護する効果も期待できます。
これらのことから、ハチミツは昔から民間療法として、喉の痛みのケアにも使われてきました。ハチミツは食品であるため、手軽に使えるのも嬉しい点です。
ただし、1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えないでください。1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べると乳児ボツリヌス症にかかるおそれがあります。
養蜂の発祥は紀元前3,000年
ハチミツと人とのかかわりは古く、先史時代(紀元前15,000~13,500年)のものとみられるスペインの洞窟壁画にはミツバチの巣が描かれており、中石器時代には世界中の遺跡から人々がハチミツを採取する姿を描いた壁画が見つかっています。養蜂の発祥は紀元前3,000年頃のエジプトとされ、王家の紋章として使用されるほど養蜂が重要なものと認識されていたと考えられています。
日本においてもその歴史は古く、「日本書紀」にも養蜂を試みたとされる記述があり、平安時代には日本最初の医学書「大同類聚方」に須波知乃阿免(すばちのあめ)としてハチミツが薬として用いられた記録が残っています。