ジンの歴史をたどる。薬用酒としての原点からクラフトジンブームまで
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ジンの歴史をたどる。薬用酒としての原点からクラフトジンブームまで

夜、バーでゆっくり味わったり、柑橘類とあわせて昼間から爽やかにいただいたり、シーンに合わせて広く楽しめるジン。4大スピリッツ(ジン・ウォッカ・テキーラ・ラム)のひとつであり、美酒として名高いお酒です。

ジントニックやマティーニなどカクテルでも広く親しまれているジンですが、そのルーツは意外にも、医療目的の飲料にありました。

ジンの歴史

薬用酒としてのジンの始まり

ジンは、ベースとなるアルコールに、ジュニパーベリーをはじめとした香草・薬草類を加え、蒸留して造られるお酒です。

ジンの原料であるジュニパーは古くから治療効果のある薬として用いられていました。北アメリカの先住民族には様々な外傷や病気の治療薬として、中国の人々には生薬として、そして、ジンが誕生したヨーロッパでも細菌感染の治療薬として用いられていたのです。

ヨーロッパでは、水で煮出して利用されていたジュニパーベリーですが、12世紀になると蒸留によって成分を抽出する方法が使われるようになり、この頃、編集されたハーブ療法に関する本には、潰したジュニパーベリーとブドウ酒を混ぜ合わせたものから、強壮剤を蒸留するレシピの記載がみられます。

生命の水? 常備薬として活用される蒸留酒

当時の蒸留酒は「aqua vitae(生命の水)」と呼ばれ、医者にもその効果が認められていました。そして14世紀の終わりまでにはジュニパーベリー入りのブドウ酒や蒸留酒は、医師の常備薬となっていきます。

ベルギー人医師のレンベルト・ドドエンスが執筆した『A nievve Herbal』には、ジュニパーベリーの効果や服用方法が詳しく書かれています。その中ではジュニパーベリーの治療効果が「胃や肺、肝臓や腎臓の疾患に効果があり、慢性的な咳、ひどい腹痛、腸内ガスを治療し、体内の塩分の排出を促進する」と高く評価されていました。

このように14世紀までは、ジュニパーベリー入りの飲料は嗜好品ではありませんでした。しかし、当時からジュニパーベリー入りの飲料、特に蒸留酒を娯楽目的で飲む者も一部いたようです。

そして、医療目的で使われていた蒸留酒やジュニパーベリーは、段々と娯楽目的の飲み物の原材料として重宝されていくことになります。

嗜好品としての蒸留酒の広まり

ジンの写真

ボタニカルによって香り付けされた蒸留酒は、美味しくて簡単に酔える飲み物として認識されていきました。しかし、蒸留酒の原料となる果物や、ボタニカルとなる香辛料は、庶民には手が届かないほど高価で、誰でも気軽に飲めるような代物ではありません。

そこで、ボタニカルとして脚光を浴びたのがジュニパーベリーです。東南アジアでしか手に入らない他の香辛料と比べ、広範囲に分布していて手に入りやすく安価でした。その上風味も抜群。一躍ボタニカルの象徴とも言える存在になったのです。

そのことを示すように、1495年にネーデルラント(現在のオランダやベルギーのあたり)で発行された書籍にも、ジュニパーベリーをふんだんに使用した蒸留酒のレシピが掲職されています。

ジンの原型となる「ジュネヴァ」の誕生

16世紀、ネーデルラントでは、20年もブドウの不作が続きました。そのためブドウの価格が上がり、蒸留酒の原料としてライ麦や大麦麦芽が注目されるようになります。

これらの蒸留酒はコーン・ブランデーワイン(グレーンアルコール)と呼ばれ、それらを香り付けしたものの呼称には、主なボタニカルの名称が取り入れられていたといいます。そのうちのひとつがジュニパーベリーで香り付けをした「ジュネヴァ」。ジンの原型です。

1689年には、オランダからイングランド国王に迎えられたウィリアム三世とともにイギリスに広まりました。そして18世紀にはジンの飲用はさらに拡大し、ジン・クレイズ(狂気のジン時代)を迎えます。

その後アメリカに渡ったジンは、カクテルベースとして注目され、世界的なスピリッツへと成長していきました。

クラフトジンの登場

クラフトジンとは、職人の強いこだわりを反映させた個性的なジン。2015年頃から、本場イギリス・アメリカを中心にクラフトジンブームがおきています。

ジンの蒸留器

ジンの蒸留器

日本でのクラフトブームの始まりといえるのが1994年4月頃。酒税法改正により、小規模ビール醸造会社が登場し「地ビール」が誕生しました。ご当地ブームもあり、地ビールの人気は拡大しましたが、一旦終息。

そして、2004年頃から美味しさと素材へのこだわりをうち出した「クラフトビール」が誕生します。2010年頃からクラフトビールの人気は拡大し、2015年大手ビール会社が本格的にクラフトビール市場に参入。また、ビール以外にも日本酒やウイスキーなどもクラフト化の流れが大きくなっています。

ジンも、2018年には国内外200銘柄を超えるジンが出展する「ジンフェスTOKYO」が開かれるなど、クラフトジンのムーブメントに火がついています。まだまだ始まったばかりの日本のジンカルチャー。今後の盛り上がりにも注目していきたいですね。

   

   

   

記事監修

養命酒製造株式会社 商品開発センター 入江 陽 (いりえ あきら)

入江陽

2009年養命酒製造株式会社入社後、中央研究所でハーブを使ったリキュール類の商品開発に携わる。2014年よりマーケティング部にて酒類の商品企画を担当した後、2017年より商品開発センターでクラフトジン、リキュール、機能性表示食品など商品開発全般に従事。

参考:日本ジン協会(2019)『ジン大全』ジービー出版

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