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生薬ものしり事典121

果実に透明な種子がぎっしり詰まる「ザクロ」

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古くから多種多様に用いられてきた万能植物

秋空に黄赤色のザクロの果実が映えるさまは秋の風物詩のひとつです。熟すにつれて厚い果皮が割れ、たくさんの透明な種子が現れます。中の種子は酸味が強いためか近年はあまり食べる人もいないようです。

ザクロは主に庭園で栽培される落葉高木で、高さは10m以上に成長します。枝は分枝し、短い枝にはとげがあります。材は黄色で葉はほぼ対生し短い葉柄があり長倒卵型で艶があります。原産地はイラン、アフガニスタン、インド西北部で、人類にとってはブドウと並び最も古くから親しまれてきた果実といえます。

日本への渡来は『本草和名』(918年)に「安石榴(ザクロ)、和名佐久呂」の記述があり、『和名抄』(932年)には延長年間(923年頃)に中国からもたらされたと記されています。鎌倉時代になるとザクロは一般に普及していたようで、主に薬用と工業用(金属の鏡磨)に用いられていました。また江戸時代から大正時代には庭木より盆栽が盛んだったようで、果実の改良はほとんど行われなかったようです。そのためか日本のザクロの味は酸味が強いものが主で、輸入品のような甘さはないようです。

画像2

植物名の由来は、石榴(ザクロ)の音に基づくと牧野富太郎博士は述べており、漢名は安石榴を当てています。この漢名は中国渡来時のペルシアが安息国、あるいは安石国と呼ばれていたので、ザクロの名前が安石榴として伝わり、その後「安」が省略されて石榴になったといわれています。

ザクロは古い時代から生活に密着してきたのでさまざまな分野に応用されてきました。果実は生食やジュース、果実酒に、根の皮は生薬名を石榴皮(せきりゅうひ)と呼び害虫駆除や整腸、喘息など、乾燥させた花は下痢や出血時の収斂剤(しゅうれんざい)、幹の皮は染色用、そして果実の搾り汁は金属製の鏡を磨く時などに利用してきました。ただし、果皮・根皮には毒性があるため、最近は使用されません。

花言葉は、「子孫の守護」です。

出典:牧 幸男『植物楽趣』

今月の生薬クイズ
【Q.】 果実の搾り汁の食用以外の利用法は?
正解は?
【A.】 金属製の鏡の研磨剤。

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