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ハラスメントの雑学

「セクハラとパワハラ、英語じゃないのはどっち?」「50種以上のハラスメントに対抗する『ハラハラ』とは?」「攻撃力が弱い動物ほどパワハラが過酷!」——今月はハラスメントの雑学をご紹介!


セクハラとパワハラ、英語じゃないのはどっち?

パワハラに関するニュースが昨今よく取りざたされます。各都道府県労働局へのパワハラ相談件数も、2006年~2018年で約4倍近くに激増しています。そうした流れを受け、日本で初めて「パワハラ防止法」が2020年6月から大企業を対象に施行されることになりました。2022年4月からは中小企業も対象になります。
パワハラ防止法では職場での身体的な暴力はもちろん、同僚の目の前で何度もしつこく叱責する、給料を下げるなどと脅しメールを出す、新人に過大なノルマを与える、逆に仕事を与えない、送別会に故意に呼ばない、個人的なことをしつこく質問する……といった職場でのさまざまなパワハラ例が対象になります。
また、「セクハラ」や「マタハラ」、「男のくせに育児/介護休業をとるなんて」などと当事者の制度利用を阻む言動をすることもパワハラとみなされます。もし違反があった場合は、企業に再発防止対策が求められ、行政の勧告に従わないときは企業名が公表されます。将来的には罰則も検討されているようです。
ちなみにハラスメントとは、英語で「嫌がらせ」のこと。セクハラは英語の「Sexual Harassment」の短縮形ですが、パワハラやマタハラは日本発の造語です。英語ではいわゆる職場のパワハラを総称して「Workplace Harassment」と言い、妊娠や出産に対するマタハラを「Pregnancy Discrimination」と言います。こうした言葉が死語になるような時代が近い将来に訪れるといいですよね。


「ヌーハラ」「ブラハラ」「ハラハラ」——これって何のハラスメント?

ハラスメント


ハラスメントとひとことで言っても、法的なものとは関係なく、50以上もあるのをご存じですか?大人のいじめといわれる「モラハラ(モラルハラスメント)」や、消費者(カスタマー)の理不尽な嫌がらせ「カスハラ」、ドクターが患者に対する嫌がらせ「ドクハラ」、大学教授が学生に行うアカデミックな世界での嫌がらせ「アカハラ」などはなんとなく聞いたことがあるかもしれませんね。
でも「スメハラ」「ヌーハラ」「エアハラ」「スモハラ」「カラハラ」「ブラハラ」「シルハラ」……となってくると、「もう何のハラスメントかわからない!」という方も多いのではないでしょうか?
ちなみに、「スメハラ」は口臭・体臭(スメル)で周囲を不快にさせること、「ヌーハラ」は麺類(ヌードル)をズルズルすする音で不快にさせること、「エアハラ」はエアコンの温度設定を適正にしない嫌がらせ、「スモハラ」は喫煙者が非喫煙者の前でタバコを吸う嫌がらせ、「カラハラ」は歌が苦手な人にカラオケを強要する嫌がらせ、「シルハラ」はシルバー世代に対する年齢的な嫌がらせ、「ブラハラ」は血液型(ブラッドタイプ)で人格を決めつけようとする嫌がらせです。
さらに、何かにつけて「ハラスメントだ!」と過剰に主張することを「ハラハラ(ハラスメントハラスメント)」と言うそうです。「〇〇ハラ」の数がこれ以上増えないように、他者への思いやりのある社会をつくっていきたいですね。


攻撃力が弱い動物ほどパワハラが過酷!

人間界のハラスメントも過酷ですが、生物界にもさまざまなハラスメントがあるようです。京都大学フィールド科学教育研究センターの小林和也先生によると、生物界はいわゆるセクハラによって多様性が調整されているのだとか。生物界におけるセクハラとは、例えばトンボのオスがメスにしつこく求愛したり、植物が花の柱頭で他の植物の受粉を妨害したりすること。個体数が多い種はセクハラによって子孫を減らすけれど、逆に個体数が少ない種はセクハラが起こりにくく、数百種類の多様な生物が1万世代にわたって共存できるのだとか。
動物行動学が専門の新宅広二先生は、群れを作る社会性動物はパワハラがベースにあるといいます。例えば犬がおなかを見せるのは、「あなたに逆らいませんよ」と負けをアピールして、仲間のパワハラを避けようとするサインだそう。動物行動学の創始者であるコンラート・ローレンツも、『ソロモンの指環』の中で、オオカミやトラも同族の相手が体を丸め、尻尾を下げて負けを示すと、それ以上攻撃しなくなると述べています。ただ、ハトやウサギのように攻撃力が弱い動物は、負けを示すサインがなく、相手がボロボロになるまで攻撃し続けるのだとか……。
翻って、人間はどうなのでしょう? ローレンツは第二次世界大戦の直前に書かれた論文『モラルと武器』で、「人間はウサギとオオカミのどちらの道を選ぶのか?」と問いかけています。