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のどの雑学

「“のど”ってどこからどこまで?」「『のどあめ』『のど自慢』『のどから手が出る』——のどを巡る表現」「声変わりの裏にあるのは?——天使の歌声の秘密」——今月はのどの雑学をご紹介します。


「のど」ってどこからどこまで?

「のどが渇く」「のど越しがいい」など、私たちは普段から「のど」という言葉を日常的に使いますが、具体的に身体のどこからどこまでを「のど」というかご存じですか?
実は医学用語には「のど」という言葉はありません。気管の入り口にある器官「咽頭(いんとう)」と、のどぼとけに当たる器官「喉頭(こうとう)」を合わせた総称「咽喉(いんこう)」が、俗に「のど(咽/喉)」と呼ばれています。のどの調子が悪い時に行くのも、「のど科」ではなく、「耳鼻咽喉科」ですよね。


呼吸器


「のど」の語源は、「飲む/呑む」と入り口を意味する「戸」が合わさってできた言葉といわれています。古くは、「のみど」「のむど」「のんど」などと呼ばれていたようです。ちなみに、風邪などでのどが痛むと、「扁桃腺(へんとうせん)がはれた」などといいますが、これは咽頭の粘膜にあるリンパ組織の1つです。正確には「扁桃」といい、アーモンド(和名が扁桃)の種子に見た目が似ていることに由来するようです。


「のどあめ」「のど自慢」「のどから手が出る」——のどを巡る表現

熟語や慣用句の中には、「のど」という言葉が使われた言葉がいろいろあります。例えば、この時期によくお世話になる「のどあめ」。のどに清涼感をもたらす、のどのケアに役立つあめ菓子を総称して「のどあめ」といいますが、身体の一部が食品の呼び名になっているのは意外と珍しいといえます。

美声の持ち主や、歌が得意なことを「のど自慢」といいますが、これは「のど」を声や歌にたとえた表現です。ちなみに、毎年1月19日は「のど自慢の日」だそう。戦後間もない1946年のこの日に、NHKラジオで「のど自慢素人音楽会」が放送開始されたことにちなんで制定されたのだとか。

「のど」は欲望を象徴するたとえにもなっています。「のどが鳴る」はごちそうを前に食欲をかきたてられることのたとえですし、「のどから手が出る」は何かが欲しくてたまらないことのたとえです。
一方、「のどまで出かかる」は、知っているのになかなか思い出せないもどかしさや、口に出してはいけないことをうっかり口にしそうになるジレンマを意味しています。また、「のど元過ぎれば熱さ忘れる」は、つらい経験も過ぎ去って楽になってしまえばケロッと忘れられることです。これらの慣用句は、のどが「出る/出ない」「出す/出さない」「苦/楽」というギリギリの一線を象徴するたとえになっています。
何ごとも、「のど元」を過ぎても忘れないようにしたいものですね。


声変わりの裏にあるのは?——天使の歌声の秘密

人は誰しも思春期の頃に「声変わり」を体験します。これは第二次性徴に伴う生理現象のひとつで、変声期は3カ月~1年近く続きます。個人差がありますが、その間は男女ともに声の高さが不安定になったり、のどがかすれてしゃがれ声になったりするのが一般的です。特に男子の声の変化が顕著で、あどけなくかん高い子どもの声から低く野太い声へと、まるで別人のように激変することもあります。

天使の歌声といわれる「ウィーン少年合唱団」 は、声変わりする前のボーイソプラノだけで編成されており、どんなに歌が上手でも、声変わりをすると退団しなければなりません。
男子が変声期前に去勢すると声変わりしないことから、中世ヨーロッパでは「カストラート」と呼ばれる去勢された男性歌手がもてはやされました。
一方、声変わりしても裏声(ファルセット)で女性のようなアルトやメゾソプラノで歌う男性は「カウンターテナー」と呼ばれます。世界的に有名な歌手スラヴァもカウンターテナーのひとりです。
幼少期から「ジャクソン5(ファイヴ)」のボーカルとして活躍したマイケル・ジャクソンは、声変わりしてもなお3オクターブの美声を誇り、第一線で活躍し続けました。一説では化学療法によって去勢されていたともいわれていますが、真偽は不明です。

「クイーン」のボーカリストのフレディ・マーキュリーは、4オクターブも出る奇跡の歌声で知られています。彼の声の周波数を分析した研究論文によると、フレディはホーミーのような特殊な歌唱法を駆使してあの独特の歌声を発していたのではないかといわれています。映画『ボヘミアン・ラプソディ』には、フレディが通常より歯が多い過剰歯で、口の中が広いから音域も広いというエピソードが出てきますが、詳細は言及されていません。桁外れの音域を出せた理由はいまだ謎ですが、歌声のすばらしさに変わりはありませんね。


フレディ・マーキュリー