HOME > 研究員のウンチク > 【2008年12月号】冷え性と体表温
同じ部屋にいるのに、熱いと感じて上着を脱ごうとする人がいるかと思えば、逆に肌寒さを感じて上着をはおろうとする人がいる。裸足で平気な人がいるかと思えば、靴下をはかないと我慢できない人がいる。冷たい飲み物ばかり飲む人がいるかと思えば、冷たい物を飲むのはいやな人がいる。それぞれ熱さ寒さの感じ方が異なっているようです。一般的に寒さに敏感で人より厚着したがる、温かい物を好むなどの様子は冷え性を表しているものと言えます。
以前に、温度の高い低いを色の違いで表すことのできるサーモグラフィーを使って、手足などの体表温を観察したことがあります。同じような条件下で観察してはいるのですが、人によって高めの方もいれば、低めの方もいると様々でした。
冷え性との関係を調べるために、冷えの自覚の有無に関するアンケート調査も同時に行ってみましたが低めの人に必ずしも冷えの自覚があるとは限らず、単純に表面温度の高い低いから冷え性を判定することは不十分と思われました。一方、特に冬の寒い季節に体表温の測定を繰り返し行った際に、日による高い低いの変動があまり見られない人、逆に高い低いの変動が大きく見られる人がいましたが、この変動の大きな人に冷えの自覚が有りがちであることが観察されました。
この体表温の変化は末梢の血液の流れを反映しており、体表温が高ければ血流が良いことを、低ければ血管が収縮したりして血流が減少していることを示しています。日によって体表温の変動が大きいということは、寒さを感じた際に末梢血管の収縮をひきおこす自律神経の働きの振れ幅が大きいことを示しており、ある意味では過敏な状態であると解釈できるのかもしれません。
冷え性の人では、寒さを大きく感受してしまい強い血管収縮が生じて末梢血流が減少し手足が冷えてしまうことがありそうです。寒さは首筋や背筋で強く感受されているので、一つの対策としてマフラーなどで首筋を冷やさないことが大切です。実際にネクタイをしていると温かいなと感じている方は多いと思います。ただ、寒さを感受した時に末梢の血管を収縮させて血流を減少させる働きは、温もりが失われて体温が低下することを防ぐための防衛的なものとも捉えられますので、首筋を守るとともに手足など末梢の防寒対策をすることも大切です。これらのことについては今後も試験してみたいと思っています。
■江崎 宣久(中央研究所 副所長)