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免疫の雑学

「恋に落ちると免疫力がアガる!?」「免疫の語源は税金と関係があった!」「ストイックにがんばる人ほど免疫力が低い!?」——今月は免疫の雑学をご紹介します。


恋に落ちると免疫力がアガる!?

「初恋の時は免疫がなかったから、目が合うだけでドキドキ♥」「何度もフラれているから、失恋には免疫がある」——このように、恋愛も失恋も度重なると慣れてくることを免疫に例えることがあります。
実際に、恋愛と免疫には因果関係があるという説があります。アメリカのテュレーン大学理工学部の研究チームが女子学生約50名を対象に行った研究によると、新たな恋に落ちた女性は免疫を強化する遺伝子が活発になったそうです。一方、恋をしていない女性の免疫遺伝子には変化がなかったのだとか。研究チームのダミアン教授は、「恋している女性は、将来の妊娠に備えるために免疫が強化されるのではないか」と分析しています。
恋愛をすると、脳内ホルモンや自律神経にも変化があらわれるので、免疫にも影響すると考えられます。例えば恋人の前でドキドキすると、脳内から快楽ホルモンといわれるドーパミンが分泌されて興奮し、交感神経が優位になります。ドキドキ状態があまり長く続くと、自律神経が疲れて免疫力が下がります。また、失恋による精神的なショックも自律神経の乱れを招くので、免疫力を下げると考えられます。
一方、恋人に対して深い愛情を感じると、脳内から愛情ホルモンといわれるオキシトシンが分泌されてリラックスし、副交感神経が優位になります。互いに深い愛情を育んでいるカップルは、免疫力が高いといえるかもしれません。みなさんはいかがでしょう?


免疫


免疫の語源は税金と関係があった!

「風邪がはやっているから免疫力を高めなきゃ」などと、現代では当たり前のように「免疫」という言葉が使われていますが、その語源はラテン語で免税・免除を意味する「immunitus」「immunis」といわれています。人が生きていくうえで重い税金があると大変ですが、重い疫病も脅威です。古来よりさまざまな疫病と闘ってきた人類は、疫病を免れる知恵として「免疫」を活用してきました。
ちなみに、免疫には大きく分けて、生まれながらに持っている「自然免疫」と、後天的に身につく「獲得免疫」の2種類があります。自然免疫とは「自然治癒力」のことです。同じ病気にかかっても、重症化する人と軽症の人がいるのは、人によって自然治癒力が異なるからです。
一方、「はしか」や「おたふくかぜ」にかかると、二度とかからなくなりますよね。これは「獲得免疫」の働きによるものです。特定の病気にかかると、免疫細胞がそのウイルスの情報を学習して抗体ができるため、またウイルスが侵入してきても抗体がやっつけてくれるのです。
インフルエンザなどのワクチンも、この獲得免疫の働きを利用したものです。ただ、有効なワクチンがある場合は特定の病気予防に役立ちますが、ワクチンがない場合は自然治癒力で防がなければなりません。古代ギリシア時代の医師ヒポクラテスも、有名な『ヒポクラテスの誓い』の中で「自然治癒力こそ真に病を治すものである」と述べています。日頃から自然治癒力を上げる生活習慣を身につけたいですね。


ストイックにがんばる人ほど免疫力が低い!?

休みなくバリバリがんばるビジネスパーソンや、筋トレなどのハードな運動をストイックにがんばっている人は、疲れ知らずでパワフルに見えますよね。でも、実はそうした人ほど免疫力が低く、病気にかかりやすい傾向があるのです。なぜなら、ストイックにがんばりすぎると、交感神経が優位になって緊張・興奮状態が続いて自律神経がヘトヘトに疲れ、それに伴って免疫力もガクンと落ちてしまうからです。
免疫学の権威として知られる元新潟大学名誉教授の安保徹(あぼとおる)博士は『体温免疫論』の中で、自律神経と免疫の密接なかかわりについて述べています。それによると、白血球の中には「顆粒球(かりゅうきゅう)」と「リンパ球」という免疫細胞があり、顆粒球は交感神経が優位な時に働き、リンパ球は副交感神経が優位な時に働きます。白血球の中のリンパ球が多い時は、より免疫力が高い状態といえます。
しかし、ストイックにがんばっている人は交感神経が優位な状態に偏っているので、リンパ球がどんどん減って免疫力も下がってしまいます。がんばって成果を上げるのは素晴らしいことですが、健康維持のためにはリラックスする時間も作るようにしましょう。