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「眠気」の雑学

100%起きられる拷問級の目覚まし装置とは?チェルノブイリ事故も眠気が原因?! 眠気による経済損失は年間○○億円以上?! たかが眠気とあなどれない仰天雑学をご紹介!


「春眠暁を覚えず」は、朝寝坊のいいわけにならない?


春眠=「気持ち良くてつい寝過ごしちゃう」説
春になると、「いやあ、また寝坊しちゃいまして……春眠暁を覚えずっていいますからねえ」などといいわけする人がいますよね。春の慣用句としてよく引き合いに出されるこの「春眠暁を覚えず」とは、中国の詩人・孟浩然(もうこうねん・689〜740年)の漢詩『春眠』の冒頭の一節。原詩は漢字ばかりで難しいので、一般的な解釈を今風に超訳するとこんな感じになります。「春の眠りはめちゃめちゃ気持ちいいから、朝が来たのも知らずに寝坊しちゃった。もう鳥もあちこちで鳴いているね。昨夜は雨や風がすごかったから、せっかく咲いた花も散っちゃったんだろうなあ」
ところが、実はこの漢詩には、単純に「春眠=気持ち良くてつい寝過ごす」という解釈とは異なる説もあるのです。



春眠=「暗い冬から明るい春になってうれしい」説

別の解釈に、「春は冬よりも夜が短くなるから、冬と同じ時間だけ眠っていると、そりゃあ当然、夜が明けても気づかないよね。明るい春がとうとうきたのね、うれしいなあ」と、春の到来を礼賛している詩であるという説があります。見方によっては、自分の寝坊を棚に上げている説ともいえますが……。
この漢詩が書かれた8世紀の中国には電灯もテレビもパソコンもエアコンもなく、人々は日が暮れると眠り、夜が明けると起きていたはずです。なかなか明けない長く暗く寒い冬から、早々と明ける春の訪れを喜んだ詩という解釈にも一理あるといえますね。



眠気も吹き飛ぶ目覚まし時計の歴史


ルイ13世は目覚まし時計オタクだった?

お寝坊さんに目ざまし時計は必須アイテムですが、目覚まし時計が誕生する以前は、いったいどのようにして起きていたのでしょう? あるヨーロッパの修道院では、ろうそくの根元に荷を結わえた縄を巻いて眠り、ろうそくが燃え尽きる寸前に火が縄を焼き切り、その弾みで荷が金属の鉢に落ちて音が鳴り目覚める……という、なんとも危なっかしい方法で起きていました。
本格的な目覚まし時計が普及したのは15世紀以降のフランス。ルイ13世(1601〜1643年)は目覚まし時計オタクとして知られており、移動する際は常に幾つもの目覚まし時計を携え、全ての時計の針を同じ角度に揃えてからでないと寝られなかったのだとか。さらに息子のルイ14世(1638〜1715年)も、時計のチクタク音を子守唄にしていたそう。彼らにとって目覚まし時計は、最先端ライフスタイルの象徴だったのです。

起きるのも命がけ?!目覚まし残酷物語


19世紀になると、だんだん変わりダネの目覚まし時計が登場してきます。ライプチッヒ見本市に出品されたある目覚ましは、ベルで起きないと、機械仕掛けの腕が寝ている者のナイトキャップを奪い、別の腕が起床時刻を書いたパネルを振りかざし、3番目の腕が熱いコーヒーを突き出すという激しさでした。
また、同じ頃にフランスで作られた「目覚ましマットレス」は、ベルだけで起きないとシーツを引っ張って起床を促し、それでも起きないと45段階の強度で徐々に強く寝台を揺さぶり、ついには眠っている者を弾き飛ばすという、まるで拷問に近いシロモノでした。
実は現代でも、JR東日本の運転士は、設定時間になると敷き布団の下の空気枕が膨らみ、上半身が弓なりになって起こされるという凄まじい目覚まし装置を使用しているのだとか。古今東西、朝の睡魔との戦いは実にワイルドですね!



たかが…眠気とあなどれない損失と事故


「日中の眠気」による経済損失は年間3兆5000億円?!

厚生労働省の調査によると、現代人の5人に1人は睡眠に関する悩みや障害を抱えているそうです。睡眠障害というとまず「不眠症」が思い浮かびますが、実は20〜59歳の働き盛りの多くは、日中に強い眠気に襲われる「過眠症」に悩まされているのだとか。
日本精神科病院協会発行誌に掲載された記事「睡眠障害の社会生活に及ぼす影響と経済損失」によると、労働者の睡眠障害による作業効率の低下や遅刻、早退、欠勤などを想定して試算すると、日中の眠気による国内経済損失は年間約3兆5000億円にのぼるそうです。「たかが眠気」などとは決してあなどれないですね!

チェルノブイリ事故も原因は眠気だった?!

経済的損失だけなく、眠気によって人命に関わる重大事故が引き起こされたケースもあります。1979年にアメリカで起きたスリーマイル島原発事故は、作業員が眠気で機械の故障に気づけなかったのが原因だったといわれています。1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故も、やはり作業員の睡眠不足による注意力低下があの大惨事につながりました。同年にアメリカで起きたスペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故も、睡眠不足で注意散漫となったスタッフが整備不良を見逃したのが原因でした。日本でも、2003年に山陽新幹線の運転士による居眠り運転でオーバーラン事故が起きたことがあります。一瞬の眠気による取り返しのつかない事故、決して繰り返してはいけませんね。