HOME > 生薬ものしり事典 > 【2013年4月号】生薬ものしり事典 7 春を告げる花・サクラ
里山にウメの香りが満ち、続いてモモが咲き乱れたあと、ようやくサクラの季節がやってきます。この時期はテレビなどでもサクラ前線の北上が話題となり、職場のお花見の準備に追われる人も多いことでしょう。
サクラと言えば、日本人の最も愛する春告げ花。淡いピンク色の花は、愛でるのはもちろん、塩漬けにしてちょっと特別な日に芳醇なサクラ茶としていただくのも乙なものですね。またその葉も、香り豊かなサクラ餅として利用されます。そして樹皮や幹は、染料やスモークチップとして、家具や建材としてなど様々に利用されています。こんなにすべてが愛される花は、ほかにあるでしょうか。
今回は、そんな日本人が最も愛してやまない「サクラ」のもつ機能性について、養命酒中央研究所の丸山徹也研究員が解説いたします。
糖化を抑制しアンチエイジングに効果的 丸山 徹也研究員(養命酒中央研究所) |
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漢方ではサクラの樹皮を桜皮(オウヒ)といい、昔から解毒、鎮咳薬として用いられてきましたが、最近になってサクラの花にアンチエイジング効果があることがわかってきました。一言にアンチエイジング効果と言っても幅が広いのですが、そのうち「糖化」といわれる反応を抑制する効果があることがわかっています。 「糖化」とは体内で余った糖分が、体内のたんぱく質にくっついて劣化させることです。たんぱく質の中でも特に「糖化」されやすいのがコラーゲンです。コラーゲンは、皮膚、血管、骨、関節など多くの場所に存在しているので、コラーゲンが「糖化」により劣化すると、肌は荒れ、血管のしなやかさは失われ、骨はもろくなり、関節も硬くなるなど、いわゆる老化の現象が現れます。 サクラの花にはこのような「糖化」を予防する効果があるわけですが、サクラの花以外でも、ドクダミ、ブドウ葉、カモミール、セイヨウサンザシなどにも強い効果があることがわかっています。 また「糖化」は複数のルートにより進むため、アンチエイジングにはそれらのルートをすべて防ぐことが重要です。そのためには複数の素材をミックスして用いるのが良いとされています。既にこれらをミックスした健康食品があり、サクラの花もこれらに使用されている一素材としてとらえることができます。
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サクラは北半球の温帯に広く分布していますが、中でも花が美しいサクラは特に日本列島に種類・本数が集中しているそうです。
その可憐な見た目からか、女性名としても好まれる「サクラ」ですが、一方でその花の形は警察官や自衛官の階級章にも採用され、その散り際が潔いことから武士道の模範として語られるなどと、男性的な一面も持ち合わせています。また法律で決められてはいないものの、日本の国花と言えばキク(菊)と並んでサクラが取り上げられることも多いことから、まさにサクラは、日本を象徴する花と言えるでしょう。
日本列島がサクラ色に染まるこの時期、花見を楽しみつつ、その歴史に思いを馳せるのもまた一興かも知れませんね。