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植物の雑学


江戸時代に流行ったガーデニングとは?世界初のバブル経済の主人公は、あの植物だった!?植物や園芸の雑学をお届けいたします。


珍しい植物が流行した、江戸の園芸ブーム


植物が人間にもらたすものは、「実や葉を食べる」「木材にする」といった実益だけではありません。ギリシア・ローマ時代から連綿と「鑑賞する」という文化も続いています。

日本においてもまたしかり。華道や盆栽など、独自の芸術的な文化を生み出したことはご存じの通りです。しかし、芸術の領域だけでなく、自宅で植物を愛でる園芸が大いにブームになった時期があります。それは江戸時代です。世界的にみてもグレードの高い園芸文化だったといわれているほどです。

江戸中期以降の園芸では“珍しいモノ”が流行ったそうで、特に「斑入り(ふいり)」の葉っぱが人気だったそうです。斑入りとは、緑の色の葉っぱの葉緑素が一部抜け落ちて、白や黄色、赤などの模様が現れている状態を指します。模様の入り方も、刷毛でこすったような模様だったり、縞模様だったり、ぼかし風だったりと様々。斑入りが生じやすい「万年青(おもと)」や「錦蘭(にしきらん)」といった植物が人気でした。万年青は、引越した新居に、まっさきに荷物として入れると縁起がよいと言われており、「引越しおもと」という言葉もあります。

また、シダの一種である「松葉蘭(まつばらん)」という植物は、葉も花もありません。さらに地中には地下茎と仮根があるのみで、いわゆる本来の「根」がありません。そんな珍妙な植物も、江戸時代に流行ったそうです。

ちなみに、皆さん目にしたことがあると思いますが、上の写真の植物。これはハボタンといいます。冬に鮮やかな色をみせるため、花が咲いていない冬の花壇などでは目立ちますよね。この植物も江戸の頃、キャベツもしくはケールを改良したものとして登場したんだとか。

花のみならず、葉も鑑賞しようとした江戸の人びと。私達の大先輩は、なかなか粋ですよね。

世界初の“バブル経済”の主人公はチューリップだった


庭や鉢植えとして、世界中の人々から愛されている花といえばチューリップ。日本においても例外ではありません。「子どもの頃、初めて絵を描いた花がチューリップ」という人も多いのではないでしょうか。野いちめんに、色のじゅうたんのように広がるチューリップも爽快ですが、春先にベランダで咲く鉢植えも、「春が来たな〜」と心躍りますよね。

そんなチューリップが、人々に狂乱をもたらした時代がありました。舞台は16〜17世紀のオランダです。16世紀半ば、ヨーロッパに華々しくデビューを飾ったチューリップにまず目をつけたのは、植物愛好家や資産家達。17世紀になると、「チューリップを集めていない資産家は悪趣味」といわれるまでになります。

やがてブームは一般大衆にも広まり、あらゆる人々が熱狂。なんと、球根1個を全財産の半分をはたいて買う貿易商人まで現れる始末。球根40個で10万フロリンもの大金を費やす者もいたとか。フロリンとは当時の通貨単位で、120フロリンあればヒツジ12頭買えるくらい。そのすさまじい高騰ぶりがわかりますね。

当初、愛好家たちは自分の家に客を招き、温室で育てたチューリップを見せることに心血を注いだといわれています。チューリップというひとつの種であるにもかかわらず、色合いが多岐に及び、鮮やかであったことも、これだけの加熱の原因といえるかもしれません。

しかしやがて、球根の値上がりに目をつけた投機家たちが参入。値が上下するのを見計らって売る、といった方法を取り始めます。一般大衆も、安い球根を売って利ざやを稼ぎ、得たお金で次はちょっと高い球根を買ってまた利益を得て・・・と小金を稼ぐようになりました。そして、バブル崩壊。崩壊の主な原因は今もなお解明されていませんが、急激に球根の価格が暴落し、大きな損失を出す人々が相次ぎました。

この騒乱は「チューリップ・バブル」と呼ばれています。投機の対象となったチューリップですが、価格が上がろうと下がろうと、その美しさは変わりません。今でもオランダの人々は、チューリップをこよなく愛しています。


ベランダの緑化が、涼をもたらす


昨今、よく耳にするのが「緑のカーテン」という言葉。ベランダにアサガオやヘチマ、ゴーヤ、きゅうりなどのツル性植物を植えて、直射日光をさえぎる天然のカーテンにしよう、という試みが普及しつつあります。

元来、コンクリートでできているベランダは熱を帯びやすく、さらにエアコンをつけると室外機が熱を放出するため、かなりの暑さとなります。この熱が室内に伝わり、さらにお部屋の中が暑くなり、冷房の温度を下げる・・・という悪循環に陥ってしまいがちなのです。

そこで活躍するのが緑のカーテン。春に植えたツル性植物は日陰を作り、ベランダおよび室内窓際の照り返しによる温度上昇を防ぎます。ゴーヤやキュウリなどは収穫する楽しさもありますよね。

また、緑のカーテンで日陰を作るだけでなく、単にベランダに植物があるだけでも、涼しくなる効果が期待できるのをご存じでしょうか?植物が根から吸い上げた水分の一部は、葉っぱから水蒸気となって放出されます。これを蒸散作用といいますが、周囲の熱を奪う効果があるため、涼しく保つことできるというわけです。

といっても、ベランダでは洗濯物も干さなきゃいけないし、場所がない・・・という方もいらっしゃることでしょう。しかしながら工夫次第で緑化は可能。ハンキングと呼ばれる「吊るすコンテナ」や、スタンドを置いて立体的にディスプレイできるアイテムもたくさん出回っています。

さらにベランダのコンクリートむき出しの床の上に、ウッドデッキなどを敷けば、反射熱を抑えることができる上、見た目もオシャレ。見た目があまりよくないエアコンの室外機にも木製のエアコンカバーなどを被せると、狭いながらも癒される空間が出来上がります。ぜひともベランダの緑化計画、始めてみてはいかがですか?