HOME > 研究員のウンチク > 【2008年11月号】北欧の優れた食文化


北欧の優れた食文化


北欧の国フィンランドの食生活は昔から機能的で、健康増進や病気の予防に役立ってきたそうです。
その中のひとつとして、フィンランドで伝統的に食されているライ麦をはじめとする全粒穀物など(亜麻種子、野菜などにも含まれています)に含まれているリグナンはヒト腸内細菌によりヒトリグナン(mammalian lignan)といわれるエンテロラクトン(enterolactone)やエンテロジオール(enterodiol)に代謝されることが知られています。1982年にヘルシンキ大学のハーマン・アドラークロイツ教授は疫学調査の結果、血中あるいは尿中にこのヒトリグナン含量が多い人ほどホルモン依存性の乳がんや虚血性心疾患などに罹る危険性が低いことを見出しました。


写真1 亜麻種子
写真1 亜麻種子

今から数年前、アドラークロイツ教授をはじめとする研究チームが行った、ヒト腸内細菌を用いたヒトリグナンの原料(前駆物質)となるいろいろなリグナンの探索やヒトリグナンへの代謝率の検討に、弊社もリグナンの提供などで協力しました。
また、我々もアドラークロイツ教授の研究を参考に、杜仲(トチュウ)、紅花(コウカ)の種子、胡麻などに含まれているリグナンからヒトリグナンが作られることを確認し、その効果を動物実験により確認しました。


写真2 紅花種子
写真2 紅花種子

写真3 生薬「杜仲」(樹皮)
写真3 生薬「杜仲」(樹皮)

ヒト腸内細菌を用いた実験は、酸素のない状態(嫌気状態:窒素、二酸化炭素、水素の混合ガスで充満された環境)で実験を行うため、特別な装置を用いました。また、ヒト腸内細菌の供給源として、同じ研究チームの男性数名からウ○チを提供してもらい実験を行いました。余談ではありますが、同様な代謝産物の研究をされている先生からのお話で、学生さんに代謝産物の原料となる食品を食べてもらい、そのオシッコを提供してもらって検討されたとのことでした。その後、「お互い大変ですね…」と苦笑いをしたことを覚えています。


写真4 嫌気培養装置
写真4 嫌気培養装置

食事は健康な生活を送る上で非常に重要だと思います。今は食欲の秋です。「旬な食材を用いたおいしい料理」を堪能しつつ健康について思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。ただ、食べすぎにはご注意を!


■浜崎 健二郎(養命酒中央研究所・基盤研究グループ チームリーダー)