HOME > 健康の雑学 > 【2008年11月号】北欧の雑学


北欧の雑学 北欧の健康、その源は?


長寿大国スウェーデンや、サウナの国フィンランド。北欧の国々は厳しい自然環境の中、独自の健康対策を行なってきました。さっそくご紹介してみましょう。



スウェーデンが長寿大国なのはなぜ?


スウェーデンは日本にもひけをとらない「長寿国」。しかも「長寿国歴」が長いのが日本との大きな違いです。

1975年の段階で、スウェーデンの高齢化率(全人口に対し、65歳以上の人口が占める割合)は15.1%。100人中15人がお年寄りです。一方、当時の日本は10.3%。ここから一気に日本の高齢化が進み、スウェーデンを抜き去って2005年には19.7%に。2008年は22%にまで到達しました。日本の高齢化率は世界一です。

しかも日本の場合、高齢化率が7%から14%に上がった際に要した年数は24年。一方スウェーデンは82年、フランスは114年かかっています。ゆるやかに高齢化が進んだスウェーデンゆえ、「準備する期間」がたっぷりあった、それゆえ充実した福祉体制が整ったといえます。日本は急激に高齢化が進んだため、福祉政策が後手に回っているといえるかもしれません。

さて、スウェーデンの長寿に話を戻しましょう。健康の理由はどこにあるのか?スウェーデン人の食生活がまずひとつ。彼らは日本人と同様に魚をよく食べます。塩漬けにしたものをはじめ、昨今では「寿司」ブームが到来。魚を取り入れた食生活は、肉食一辺倒の地域に比べると健康率も高いようです。

そして無視できないのは、進んだ歯科医療です。1970年代から国の政策として「歯の予防」が掲げられました。
20歳未満であれば歯医者さんでの健診も無料。なので子ども達は虫歯の有る無しに関わらず、「習慣」として定期的に歯医者さんに訪れ、医師の診断とアドバイスを受けます。一説には「歯を磨く回数」は日本人のほうが多いんだとか。にもかかわらず日本よりも虫歯をわずらう人の数が圧倒的に少ないのは、やはり「ケアのしかた」をじっくり子どもの頃から学んでいるからといえそうです。

面白いことに、歯の予防政策が取られるようになってから虫歯治療の件数はもちろんのこと、一般の医療費も減少傾向にあるのだとか。「歯」がいかに健康をつかさどっているのかがわかりますよね。


サウナで「政治の話」をするべからず!


「寒さ」と「白夜」ゆえ、インドアの文化や住環境が発展している北欧諸国。その「インドア」の一環が、サウナです。

サウナ発祥国はフィンランド。フィンランドの人口は510万人、それに対してサウナは170万個あるといわれています。まさに「サウナ大国」です。「サウナ」という言葉もフィンランド語なんですよ。

フィンランドのサウナは、熱く焼けた石に水を掛け、水蒸気で室温を高く保ちます。ただし現在、都市部では電気で温めるタイプが主流となっているようです。集合住宅にも共同のサウナがあるところがほとんど。公共施設型のサウナも街中にあります。体を清めて疲れを取ることがサウナの主な目的ではありますが、「浮世の社交場」としての側面もあるわけです。また、観光地にもサウナがたくさんあります。中には日本の温泉のように掘っ立て小屋タイプのものもあり、サウナで火照ったら外へ出て雪にダイビング!という楽しみも。日本のサウナでいうところの「水風呂」の効果ですね。

郊外のサウナの特長はもうひとつ。サウナに入りながら「ヴィヒタ(白樺の葉っぱを束ねたもの)」でカラダを叩く、というフィンランドサウナの伝統を楽しめるところが多くあります。叩く効果は「カラダのマッサージ」「発汗作用促進」「殺菌・消毒作用」などといわれています。

おもしろいのは、「サウナには妖精が棲んでいる」という言い伝えがあること。それゆえ「騒ぐこと」と「政治の話をすること」はマナーとして禁じられているんです。サウナは「リラックスすること」が目的ですから、その意味でも理に叶っていますよね。

「コレだ!」という食文化の決め手はないが、健康政策を掲げる北欧諸国



北欧の「健康」とは、いわば「高度な福祉」と、そこから生じる「心のゆとり」が中心にあると思います。健康をつかさどる「食文化」については、他の欧米諸国に比べて魚を食べることと、基本的に「粗食文化」であること、リンゴン(つるこけもも)などのベリー類が豊富であることなどが挙げられますが、たとえば「コーカサス地方のヨーグルト」などのように「コレが健康の決め手!」というような決定的要素は見当たりません。そもそも日本の東北地方と同じように、北欧もまた冬場の保存食調理法として「塩漬け」を駆使してきました。塩分の摂りすぎはカラダによくありません。

そんな状況を、福祉による「医療」がしっかり下支えしている、それが北欧といえるでしょう。また、健康を保つためにさまざまな施策がとられていることも事実です。

たとえばデンマークは、2004年にトランス脂肪酸の規制を開始。一定の基準値以上、トランス脂肪酸が多く含まれている製品は製造・輸入が禁止されています。マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸を摂取すると、心臓病やアレルギー、動脈硬化などのリスクが高まるといわれています。また、合成着色料「タール色素」の規制も北欧諸国では行なわれています。