HOME > 特集記事 > 【2021年4月号】 心のソーシャル・ディスタンスを埋める雑談力を磨こう!

心のソーシャル・ディスタンスを埋める
雑談力を磨こう!

心のソーシャル・ディスタンスを埋める雑談力を磨こう!

「ソーシャル・ディスタンスで距離をとると相手の心も遠く感じる…」「リモートワークで孤独を感じる…」「ウェブミーティングは会話が弾まないし、相手の本音も見えない…」――最近はそんなメンタルの不調を感じる人が増えているといわれています。ひょっとして、あなたもソーシャル・ディスタンスによって心にすきま風が吹いていませんか?今月はそんな「心のソーシャル・ディスタンス」を埋める方法をメンタルヘルスのスペシャリスト、武藤清栄先生に伺います。

教えていただく先生
東京メンタルヘルス所長
武藤 清栄(むとう せいえい)先生
武藤 清栄(むとう せいえい)先生

1951年、秋田県生まれ。東京メンタルヘルス所長。臨床心理士。東洋大学社会学部卒業後、国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒業。臨床心理面接および職場のメンタルへルス教育現場に数多く携わる。現在は全国で年間250回以上の講演・研修を行う。関東心理相談員会会長、日本精神保健社会学会副会長などを歴任。10万部のベストセラー『雑談力』(明日香出版)を監修したほか、『号泣力』『傾聴力』(共に明日香出版社)など著書多数。

ソーシャル・ディスタンスによって
たまる心のストレス

今は「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」が当たり前になっています。WHO(世界保健機関)は「フィジカル・ディスタンス(物理的距離)」という言い方を推奨していますが、物理的に距離をとることで心理的にも距離を感じている人が多いのではないでしょうか?
たとえば、マスクやアクリル板越しでは相手の微妙な表情がよく見えないので、心を通わせにくくなります。
リモートによる会話も声がひずんだり、少し遅れて聞こえたりするなどの違和感があり、会話を弾ませづらくなります。また、カメラをオフにした声のみのリモート会議は参加者の表情や態度が一切見えず、互いの感情が読み取りにくいので、ぎこちない雰囲気になります。こうしたストレスは、「この状態がこの先いつまで続くのか見えない…」という不安によって心の中でどんどん溜まってしまうのです。

「アクリル板が1枚あるだけでも、会話する際に微妙な違和感を覚えますよね。私自身、リモートでの講演やカウンセリングは、人の息づかいや微妙な表情、拍手や笑いなどのフィードバックを感じにくいので正直、苦手です。」と語る武藤清栄先生。

雑談で心のストレスを浄化しよう!

心にストレスがたまると、交感神経が優位になって上半身の筋肉が緊張してこわばり、呼吸が浅くなって血行が悪くなります。こわばった筋肉をゆるめてリラックスするには、「雑談」がおすすめです。
例えば、「それにしても今日はポカポカして気持ちがいいですね」「ところで今話題のあのニュース、どう思います?」「そういえば昨日こんな失敗をしちゃってね」――雑談とはフリートーキングなので、うわさ話でも失敗談でもスポーツや趣味の話でも、ネタに制限はありません。仕事の話からちょっと脱線して雑談をすることで、心の距離が自然に縮まります。それによって筋肉の緊張がゆるみ、リラックスして心にたまったストレスを自然に浄化する作用が期待できます。

「雑談力」を磨いて
心のソーシャル・ディスタンスを埋める
7つの心得

リモートワークだと普段オフィスでかわすような雑談をする機会が少なくなり、孤独を感じやすくなります。リモート会議の始まる前や、会話が滞ったときに気分転換としてさりげない雑談をすることで、緊張がほぐれて心の通い合うコミュニケーションが生まれます。雑談によって心の距離が縮まれば、相手の本音を引き出しやすくなり、自分も本音を伝えやすくなります。それによってさらに深いコミュニケーションができるようになります。

雑談の心得1 緊張しない視線の合わせ方

リモートの場合はパソコンの画面を見て話すので、相手の顔が常に真正面にあって緊張するという人もいると思います。我慢して常に相手の眼をじっと見て話していると、緊張して雑談どころではなくなるので、視線を相手の鼻や口元に合わせるようにしましょう。あるいは手元の資料を見るふりをしてもかまいません。
上司や初対面の相手に失礼ではないかと思われる方は、「リモートだと緊張するので、視線を少し外しますね」「資料を見ていますが、お話はしっかり聞いておりますので」などと、最初に正直におことわりを入れましょう。逆に、カメラがオフ状態で、相手の様子がまったく見えないのも不安なものです。その場合は「顔が見えないのも不安なので、もしよろしければカメラをオンにしませんか?」と相手に正直に伝えましょう。シャイで緊張しやすい方は、雑談をするにあたってまず自分がリラックスしやすい状態にすることが大切です。

雑談の心得2 うなずきやジェスチャーで聞き上手に

雑談力を磨くには、聞き上手になる必要があります。相手の話を聞きながらうなずくときは、何度も首を振ってうなずくより、ゆっくりうなずくほうが相手に安心感を与えます。
あるいは笑顔で両手を挙げて「〇」を作ったり、指で「OK」のジェスチャーをしたりするだけでも、「賛同しています」「いいですね!」という共感メッセージが相手にスッと伝わります。
身振り手振りを交えて話すときは、画面を見ている相手が話に集中できるよう、実際に対面して話すときよりも動きをやや控え目にしましょう。

雑談の心得3 話が弾まないときは名指しでオープンクエスチョン

リモート会議でシーンとなって話があまり弾まないときは、「Aさん、この件に関してまだ発言されていませんが、脱線してもいいので自由にお話いただけるとうれしいです」と、名指しで意見を求めましょう。
「この件に賛成ですか?」という質問だと、「はい」か「いいえ」で終わってしまいますが、自由な意見を求めるオープンクエスチョンを投げかけることで相手は話が展開しやすくなります。
その際、「お話しいただけるとうれしいです」「とても興味深いです」と、話者が主語の「Iメッセージ」で伝えるのがポイントです。感情に訴えられると相手も素直にうれしくなり、心を開いて話そうとしてくれます。

雑談の心得4 相手を肯定するプラスのストローク

相手を肯定する表現をプラスのストロークといい、否定する表現をマイナスのストロークといいます。
もし相手の意見に反対でも、いきなり「でも」「しかし」と否定する言葉を使うと、相手との心の距離が一気に遠くなって気楽に雑談を交わす雰囲気ではなくなります。まずは「なるほど」「おもしろいご意見ですね」などと相手を尊重することが大前提です。納得いかない点についても、「ここが少しわからなかったので教えていただけるとうれしいです」と、Iメッセージで伝えましょう。
また、感謝を述べるときも、「ありがとうございます」だけでは儀礼的に聞こえます。「〇〇のお話はとても勉強になりました。ありがとうございます」などと、何に対して感謝しているのかを具体的に言うことが大切です。

雑談の心得5 相手の意識を変えるパンクチュエーション

文章に読点「、」や句点「。」を打つことを「パンクチュエーション(句読法)」といいます。
話し言葉も、どこで言葉を区切るかというパンクチュエーションによって伝わり方が違ってきます。
「Bさんは非常に博識で仕事の経験値も高いので適任だと思います」
「Bさんは、非常に、博識です。そのうえ、経験値も高い。だから、彼が、適任だと思います。」
前者のように一気に結論を述べるより、後者のようにあえて区切ったほうが、強調したい言葉に意識を向けさせることができ、説得力が増します。

雑談の心得6 比喩や仮定で本音を引き出す

比喩や仮定を使った雑談は、場を和ませたり、心の距離を縮めたりするきっかけになります。
「あの人は太陽のように明るい」のように類似したものにたとえる比喩を直喩といいます。
「彼はタヌキだ」のように想像力に働きかけるたとえを隠喩(メタファー)といいます。
初対面の人と話すときも、「自分を動物にたとえるなら何だと思います?」といった比喩を交えた雑談をすると、打ち解けやすくなります。
また、会話が滞ったとき、「もしあなたが組織のトップなら、どうやって解決します?」「もし本音を全部さらけ出すとしたら、何を一番言いたいですか?」といった仮定のクエスチョンを投げかけると、隠れた本音を引き出しやすくなります。

雑談の心得7 LINEチャットの雑談は本音が出やすい

LINEなどインターネット上で雑談する際は、たとえば「先ほどの件について率直な御意見をぜひお聞かせください」などと敬語を並べるより、「さっきの話、びっくりですよね。どう思われました?」などとやわらかな言い方をすると会話が弾みやすくなります。LINEなら面と向かっては言えない話も話題にでき、お互いに本音も出しやすくなります。
また、すぐに返答できなくてもじっくり考えてから伝えることができます。会話が途切れたときは、スタンプを雑談のネタにすることもできます。雑談が苦手な人は、LINEで雑談の練習をしてみてはいかがでしょう。



まとめ

雑談力を磨けば、仕事でも、プライベートでもコミュニケーションがスムーズになり、心のストレスを軽減するのに役立ちます。
※雑談のネタ探しはこちらもご活用ください > 健康の雑学



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