HOME > 特集記事 > 【2020年9月号】 疲れた時は猫とリラックス!猫の癒しパワーの秘密とは?

疲れた時は猫とリラックス!
猫の癒しパワーの秘密とは?

疲れた時は猫とリラックス!猫の癒しパワーの秘密とは?

9月20日から26日は動物愛護週間です。今や日本では犬猫の飼育数が子ども(15歳未満)の数を上回っており、特に近年はブームと呼ばれるほど猫が人気を呼んでいます。「猫がそばにいるだけで癒される」「猫を撫でているとリラックスする」という声も多く、人の健康にもさまざまな効果があるのではないかといわれています。今月は、動物の癒しの力を医療現場で活用しているアニマルセラピー のスペシャリストにお話を伺います。

お話を伺った先生
家庭動物診療施設 獣徳会
吉田先生 & 廣瀬先生
吉田先生&廣瀬先生

右:獣医師 吉田 尚子(よしだ なおこ)先生
公益社団法人 日本動物病院協会 理事(広報アニマルセラピー担当)、NPO神奈川子ども支援センター つなっぐ 理事、一般財団法人 クリステルヴィ・アンサンブル アドバイザー。動物福祉を重視したアニマルセラピー、犬猫の保護活動を推進。

左:獣医師 廣瀬 佳代(ひろせ かよ)先生
国際中医学師、ホリスティックケア・カウンセラー、介護福祉士。あいち小児保健医療総合センターCAPP活動チームリーダー をはじめ、人と動物の健康、相互作用に丁寧に向き合う。

吉田先生、廣瀬先生ともに、家庭動物診療施設 獣徳会勤務。NPO CANBE子どものための動物と自然の絆 教育研究会 理事として小児病棟などでアニマルセラピーやいのちの動物介在教育などに携わる。

なぜ猫といると癒されるの?

©Mitsuko Matsui
©Mitsuko Matsui

ストレス社会の中で、猫は癒しの存在として人気が高まっています。日本ペットフード協会のアンケート調査 によると、猫を飼っている人の8割以上が、「生活に喜びを与えてくれる存在」として、「家族」より「ペット」をトップに挙げています。また同調査では、7割以上の人が「猫を飼育していると、子ども(16歳未満)は心が豊かに育つ」と答えたそうです。

思わずほっこり♡ リモートワーク中の猫エピソード

最近はリモートワークが増えたことから、自宅で仕事をしながら猫に癒されている人が多いようです。

©Mitsuko Matsui
©Mitsuko Matsui

「仕事でイライラしてストレスが溜まっていても、猫が無邪気にじゃれてきたり、気持ちよさそうにのどをゴロゴロ鳴らしていたりするのを見ると、ストレスを忘れて穏やかな気持ちになる」

©tenshan
©tenshan
©tomo

「緊迫したオンライン会議中に、スタッフの猫が乱入して画面にアップで映りこみ、場が一気に和んだ」
「ちょっとコワモテの上司とのオンラインミーティング中、ひざに乗ってきた子猫に上司が『ダメでちゅよぉ』とネコナデ声でさとしているのを見て、実は優しい人なのだなと気づいてほっこり」

©tomo
©tenshan

「一日中家にいてどんよりしていたとき、猫がのんきにおなかを出してゴロ~ンと寝転がっているのを見て思わず声をあげて笑ってしまい、気持ちを明るく切り替えることができた」

原始時代から動物は癒しのバロメーター

猫は特別な芸をするわけではなく、あくまでも自然体なのに、猫に癒しを感じる人が多いのはなぜでしょう?「原始の血」という古い学説によると、原始時代の人間は動物の様子を観察することで危険を察知してきました。鳥たちが梢で穏やかにさえずりあっていたり、草食動物の群れがのんびり草や木の実を食べていたりする様子を見ると、肉食獣や天変地異が迫っている危険性が低いと感じ、人間も平和を感じて安らぐことができたのです。そうした「原始の血」が私たちにも受け継がれているため、猫が無防備な姿で寝転がっていたり、ゴロゴロのどを鳴らせて気持ちよさそうにしていたりする様子を見るだけで、自然と癒されてリラックスするのです。

©Lunasubito

猫の不思議な癒しパワー

ペットと触れあうと人の心身にどんな変化が起きるの?

近年、動物の癒し効果についての科学的な検証が世界的に進められており、猫や犬などのペットと触れ合うことで心拍数や血圧が安定し、メンタル面でも鎮静効果があるといわれています。また、ペットと触れ合うことで「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されるという報告もあります。さらに、2015年のUCLAの研究論文では、ペット飼育者にはうつ病が少ないと報告されています 。まだ猫だけの研究データは少ないので、今後研究が進めばより詳細な猫の癒し効果が判明するかもしれませんね。

抱かれている猫
©Lunasubito

ペットと共生することで病気予防にも役立つ?

動物の癒し効果は病気予防にも役立つようです。ドイツでは猫や犬などのペット飼育によって年間約7,600億円、オーストラリアでは年間約3,090億円もの医療費の節約効果があったそうです 。また、フィンランドのクオピオ大学病院の調査では、猫や犬を飼っている家庭の赤ちゃんは、耳の感染症にかかる確率が約5割減、呼吸器の感染症で抗生物質の投与が必要となる確率が約3割減だったそう。 同研究チームは、赤ちゃんが動物と接触することで、免疫機能の発達が助けられるのではないかと推測しています。

猫はアニマルセラピーの現場でも活躍!

高齢者施設や病院、学校などを訪問し、動物の温もりや優しさに触れてもらうボランティア活動を「アニマルセラピー」といいます。猫もセラピーキャットとしてアニマルセラピーの現場で活躍しています。高齢者には犬より猫のほうが人気の高い傾向があり、猫を見るだけで表情がぱっと明るくなったり、不自由な手で猫を愛おしそうに撫でたり、猫を介して少しずつ心を開いてくれたりするそうです。

アニマルセラピーには一般の飼い猫が参加しており、適しているのは人見知りせず、他の動物や初めての環境にも動揺しない、おおらかな性格の猫です。

飼い猫と一緒にアニマルセラピーに参加してみたい方はこちらへ→
人と動物のふれあい活動(CAPP=Companion Animal Partnership Program)

人も猫もゴロゴロ♡
猫と一緒に癒されよう

猫をリラックスさせるツボはここ!

猫に癒されるには、まず猫自身の気持ちが落ち着いてリラックスしていることが大切です。猫の耳の周りや、額から頭頂部、首、背筋にかけてのエリアには、猫がリラックスするツボがたくさんあります。そのあたりを毛並みに沿ってゆっくり優しく撫でてあげると、猫は気持ちよさそうにリラックスします。また、猫がそわそわしているときにあご下を軽くかいてあげたり、首根っこをそっとつまんであげたりすると、落ち着きます。
猫を撫でるときにおすすめなのが、歯ブラシです。歯ブラシは猫のザラザラした舌で毛づくろいをする感触に似ているので、歯ブラシで優しくブラッシングされると心地よいのです。

こんな接し方はやめてにゃ!

1. じっと見つめないでにゃ

猫の顔を「かわいいなあ」とじっと見つめてしまうと、猫は「自分にケンカを売っているのか!?」と勘違いして攻撃的になる場合があります。そんなときは、猫から目をそらすことで敵意がないことを伝えましょう。

2. 騒がしいのはやめてにゃ

猫は聴力が優れているので、大声やかん高い音が苦手です。猫と触れあうときは、優しくささやくような、いわゆるネコナデ声で話しかけると、猫は安心します。猫のいる空間では、あまり大きな音で音楽をかけないようにしましょう。

3. しつこいのはやめてにゃ

よく猫はツンデレといわれますが、気持ちよさそうに撫でられていても、あまりにしつこいと急に不機嫌になることがあります。耳がやや後ろに倒れ、しっぽをパタパタと動かし始めたら、猫が「そろそろやめてほしいにゃ…」と感じているサインなので、解放してあげましょう。

4. アロマセラピーはやめてにゃ

アロマセラピーは人間をリラックスさせるのに役立ちますが、猫はアロマオイル(精油)に含まれている精油成分を代謝できません。猫にアロマオイルを塗るのはもちろん、猫のいる空間でディフューザーなどを使うのはやめましょう。

5. 猫のなじみの場所を変えないでにゃ

猫は、なじんだ空間が変化するとリラックスできません。そのため、トイレではないところで排泄をしてしまうなど、問題行動につながることもあります。自宅の改装や模様替えを計画している場合、猫の好きな場所はできるだけそのまま確保するようにしましょう。

猫に直接触れなくても写真や映像で癒される!

猫を飼ったり、直接触れ合ったりしなくても、猫による癒しを得ることができます。例えば、好きな猫の写真をスマホの待ち受けにして持ち歩いたり、部屋に飾ったりして眺めるだけでも癒されます。動画サイトでは猫動画の再生回数が多いといわれますが、動画も癒しになるそう 。さらに、保護動物の里親さんを探すサイトでは、保護猫とオンラインで面会できるところもあるようです。



まとめ

古今東西で人間と共生し続けてきた猫には、人間に愛され、人間を癒す能力が自然に身についていったのかもしれませんね。さまざまなかたちで猫とのリラックスタイムを楽しみましょう。



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