HOME > 特集記事 > 【2020年6月号】 不安やイライラがたまっていませんか?メンタル疲れを防ぐケア術

不安やイライラがたまっていませんか?
メンタル疲れを防ぐケア術

不安やイライラがたまっていませんか?メンタル疲れを防ぐケア術

世情が落ち着かない中、イライラや不安が募っていませんか? 今の時期は、実は自分でも気づかないうちに、メンタルが疲れている人が増えているといわれています。そこで、今月は心の健康を守るスペシャリストに、メンタルの疲れを防ぐケア術を教えていただきます。

お話を伺った先生
元・陸上自衛隊衛生学校心理教官
MR(メンタル・レスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター
下園 壮太さん
下園 壮太さん

自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士)やレンジャー隊員にメンタルヘルス、自殺予防、カウンセリング、惨事ストレスのコントロールを教育。「自殺のアフターケア」チームのメンバーとして約300件以上の自殺・事故にかかわる。東日本大震災時の派遣自衛官のメンタルヘルスに関する全般指示を行う。2015年に退官後はクライシスカウンセリング講師やメンタルヘルス講演などを行う。『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新聞出版)、『平常心を鍛える 自衛隊ストレスコントロール教官が明かす「試練を乗り切るための心の準備」』(講談社+α新書)など著書多数。
https://www.yayoinokokoro.net/

気づかないうちに
心の疲れがたまっているかも…!

最近は生活環境などの変化で普段よりも不安やイライラを感じている人が多いのではないでしょうか?メンタルヘルスのスペシャリストである下園壮太さんは、「今は東日本大震災の時よりも心身共に疲れている人が増えている。疲れがたまれば、健康な人でも心身に不調が出てくるのは当たり前のこと」といいます。心の疲れは体の疲れと違って気づきにくいので、まずは自分の心の疲れに気づき、疲れをためないようにコントロールすることが大切です。

なぜ心の疲れを自覚しにくいの?

通常、人はケガや病気になると痛みを感じて体の異常を感知します。しかし、目の前に危機が迫っている時は、その対応が最優先になるので、一時的に痛みを感じさせない「麻痺のシステム」が作動します。そのため、人は危機的状況になると、痛みや疲れを感じにくくなり、本当は疲れているのに「さほど疲れていない」と思ってしまうのです。
また、「比較」によって評価する癖のある人は、疲れを自覚しにくい傾向があります。例えば、「自分も大変だけど、みんなも大変。だから頑張らないと」「10年前はもっと大変だったけど、なんとか乗り越えたから、今回も頑張って乗り越えよう」などと、他人や過去の自分と比較すると、今の自分の疲れが見えなくなってしまいます。

過剰な感情で、心身がヘトヘトに

あまり動いていないと、「体はそんなに疲れていない」と思いがちですが、それは間違いです。ネガティブな情報に触れることが多いと、ネガティブな「感情」を必要以上に消耗して疲れてしまうからです。人は不安を感じると、呼吸が浅くなったり、緊張して胸がきゅっと締め付けられたり、首や肩が凝ったりして全身のエネルギーを消耗します。さらに、「仕事は大丈夫かな…」「この先やっていけるかな…」などと先々のことをあれこれ心配することで、ますますエネルギーが奪われ、気づかないうちに身も心もすり減ってしまうのです。

チェック診断テスト
あなたの心の疲れ度はどのくらい?

簡単なチェックテストであなたの疲れ度がわかります。次の中であてはまるものにチェックを入れてください。

  • check ひとりで自分の好きなことをやる時間がない
  • check 睡眠を十分にとれていない
  • check イライラを他人にぶつけることが多い
  • check 体に今までなかった不調が出てなかなか治らない
  • check 自分にダメ出しをすることが多くなった
  • check 生きる気力が湧かない
判定

チェックの合計はいくつでしたか?

1~2個の人は、疲れが軽い「1段階」
標準的な疲れの状態です。活動の質や量、集中力、パフォーマンスは落ちていません。仕事の高揚感などで疲れているのに、逆に元気な場合もあります。一晩ぐっすり眠れば回復しますが、回復しなかった疲労は少しずつ蓄積していきます。
3~4個の人は、疲れが進行している「2段階」
病気になる手前、「未病」の状態です。心身の疲労感が「1段階」の2倍重くなり、回復にかかる時間も2倍遅くなります。例えば、いつもなら受け流せることでも、2倍のショックを受けます。8時間働いても、16時間働いたような疲れを覚えます。無理すれば働けますが、通常よりパフォーマンスが落ちます。
社会的な変化が多い時には「2段階」の人が増えます。
5~6個の人は、疲れがかなり深刻な「3段階」
疲れがたまりにたまって重症化している状態です。心身が受ける疲労感も、疲労回復にかかる時間も「1段階」の3倍になります。普通に生活することや働くことが困難になっていきます。

疲れの3段階別アドバイス
心の疲れを軽減するコツとは?

疲れ度「1段階」の人は、
できるだけ楽しい情報に触れよう

  • 不安が募って心の疲れが進行するのを止めるためには、まずネガティブなニュースばかり見ないようにすること。ニュースサイトなどの通知機能をオフにして、ワイドショーなどを見る時間を意識的に減らしましょう。
  • できるだけ楽しい情報に触れる時間を増やしましょう。うっかりネガティブな情報を検索してしまったら、同じ時間だけ楽しい情報も検索してください。
  • 「世の中が大変な時に自分だけ楽しむなんて」と罪悪感を持つ人がいますが、決して罪悪感を持つ必要はありません。お笑いコンテンツを見て笑ったり、運動したり、自分の好きなことを楽しんでください。
  • 不安なことがあれば、信頼できる人に直接相談しましょう。もし厳しいことを言われても、「1段階」の人なら受け入れる余裕があります。
  • 規則正しい生活を心がけ、夜は決まった時間に睡眠をとりましょう。
お笑い番組を見て笑っているイラスト

疲れ度「2段階」の人は、
SNSやネガティブな人から距離を置こう

  • 疲れ度が進行してくると、スマホで長時間ネガティブな情報を追ってしまい、ますます不安が募ります。スマホはかわいい動物の動画を見るなど、できるだけ癒やしになる情報を見るツールとして使いましょう。
  • SNSとも一時的に距離を置きましょう。「SNSをしばらくお休みします」と友人に知らせておけば、友人経由でネガティブな情報に触れる機会を遮断できます。
  • 動揺している時は人と「不安だね」と言い合って不安を抑えようとしがちですが、実際はかえって不安が増してしまいます。動揺を抑えるには、ネガティブなことを言う人とは距離を置くことをおすすめします。
  • 「2段階」になると、人に相談した際に厳しいことを言われると傷つくので、自分の気持ちは紙に書き出してください。頭で考えるより書くスピードのほうが遅いので、おのずと冷静になれます。書いたものを客観的に見ることで、自分自身にツッコミを入れる余裕も出てきます。
  • 激しい運動でなく、ヨガやピラティス、軽いウォーキングのように体をゆるめる運動をして、心身の緊張をほぐしましょう。
  • 不安が募って疲れ度が進行してくると、だんだん眠れなくなって昼夜が逆転化します。少しでも多く睡眠をとる必要があるので、時間を問わず眠れる時に眠ってください。横になるだけでも回復に役立ちます。
ネガティブな人に背を向けて距離をとる人のイラスト

疲れ度「3段階」の人は、
睡眠を最優先

  • 疲れ度が「3段階」になると心身が弱ってくるので、「自分は大丈夫なのかな?」という不安が強くなり、ますます眠れなくなります。何とか眠ろうとして焦ったり思いつめたりするほど、不安が増大します。
    不眠が続けば、ますます心身が疲れて弱ってしまいます。それを食い止めるには、不安全部を吐き出すように、何度か大きくため息をついてください。ため息をつくと自然に深い呼吸ができるので、心身をリラックスさせるのに役立ちます。それでも眠れない方は、かかりつけ医に相談して、少しでも多く眠ることが先決です。

目標設定は10段階の3~7を目指そう

疲れが回復してきたら、いろいろな不安がある中で、「頑張っていこう!」と目標を掲げて前向きに頑張る人が増えてくると思います。その際、いきなり高すぎる目標設定にするのはNGです。
例えば、「仕事の成果を上げる」という目標を掲げた場合、今の自分を10段階の0点とし、最高の成果を上げた自分を10点満点とします。
もし8点以上を目指すと、ムリを重ねるうちにリバウンドが起き、健康バランスを崩してしまいます。
逆に1~2点を目指すと、「この程度じゃだめだ」と満足できません。
3~7点を目指せば、ムリしてバランスを崩す危険性がありません。やみくもに高い目標に向かって突き進むのではなく、3~7点を目指して行動しましょう。

10段階の説明図の作成をお願いします


まとめ

ネガティブなニュースが入ってきても、それをあえて断絶することが大切です。また、不安やイライラのストレスが増えると、普段より眠りが浅くなるので、余計に心身の疲れがたまります。疲れ度にかかわらず、疲労回復のためには1日の睡眠時間をいつもよりも多めにとるようにしましょう。



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