胃腸を鍛えて平成ストレスにさようなら
免疫力をアップしてガッツを養おう!
いよいよ平成から新年号の幕開けですね!平成の30年間は、インターネットやスマホが登場して社会の情報化が急速に進み、ストレスを感じる人が急激に増えたといわれています。ストレスがたまると免疫力の低下を招き、さまざまな不調の原因に…!
今月は、免疫力の要である胃腸のスペシャリスト・藤田紘一郎先生に、ストレスに負けず、免疫力をアップする腸の鍛え方を教えていただきます。
平成ストレスくん、さようなら!
新時代は胃腸を鍛えて免疫力アップ!
- お話を伺った先生
- 医学博士
藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)先生
1939年、旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学医学系大学院修了。東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見により小泉賞を受賞。2000年、ヒトATLウィルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。『腸内細菌と共に生きる 免疫力を高める腸の中の居候』(技術評論社)、『絶好腸‼ストレス、心の不調を解消する腸の鍛え方』(清流出版)など著書多数。
日本人は平成の30年間で元気がなくなった!?
平成時代はパソコン、インターネット、ケータイ、SNSが一気に普及してライフスタイルが一変しました。それにより情報過多やデジタル依存によるストレスも増えています。腸はストレスを受けやすく、うつやアレルギー疾患にも影響があるといわれます。
「ここ20~30年で日本人の元気が極端になくなったのは、生活習慣や環境の変化によるストレスで、腸が不健康になっているからではないか?」と指摘する藤田紘一郎先生に、腸を鍛えて元気を取り戻す極意を教えていただきます!
「ガッツがある人」とは、腸が健康な人!
「あの人はガッツがあるから粘り強いね」「最近、どうもガッツがなくなってきたなぁ」――普段よく使われる「ガッツ」という言葉の語源をご存知ですか?実はガッツとは、英語で「gut=腸」を意味します。つまり、「ガッツがある人」とは「健康な腸を持っている人」のことなのです。
「免疫力」と「腸」と「ストレス」の深い関係
健康な腸には、腸内細菌が豊富にあります。胃から大腸に至る腸管(ちょうかん)には、病原体をやっつける免疫細胞の約70%に当たるリンパ球と、それらをコントロールする腸内細菌が約100~200種類も存在しています。この腸内細菌が減ると、免疫機能もうまく働かなくなってしまい、ストレスに弱い「ガッツがない人」になってしまいます。ストレスが多い現代社会では、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態が続くことで免疫力が下がります。また、ストレスを感じると、脳の視床下部から脳下垂体、副腎に刺激が伝わることでも、免疫力の低下につながります。免疫力が下がれば腸の働きも落ち、さらに免疫力が下がるという負のスパイラルに陥ってしまいます。
Column ストレスで免疫細胞の活性が低下する!
身体を守る大切な免疫細胞のひとつ「NK(ナチュラルキラー)細胞」は、精神的なストレスを受けると如実に活性が低下します。藤田先生が、卒業試験前後の医学部学生を対象としてNK細胞の活性化について調べた結果、卒業試験後に多くの学生はストレスから解放されてNK細胞の活性が上昇しました。ただし、試験結果が悪くて精神的に落ち込んでいた学生のみ、NK細胞の活性が試験前より落ちました。精神的なストレスが多い人ほど、腸内環境を整えて、免疫細胞を活性化させる必要があります。
大きなうんちは元気のバロメーター
腸の元気のバロメーターとなる腸内細菌の量は、うんちを見れば一目瞭然です。うんちの固形成分は、半分弱が死んだ腸内細菌、残りの半分弱が剥がれた腸粘膜、食べかすは全体の5%だけです。うんちの量が多いということは、それだけ多くの腸内細菌が元気に働いて、腸内の新陳代謝が活発であるという証拠です。「最近、うんちの量が少ないなあ」「便秘気味でコロコロした黒いうんちがちょっとしか出ない」「よく下痢をする…」という方は、腸内細菌がうまく働いていないといえます。健康なうんちは、黄味がかったバナナ状で、水に浮いた後、ゆっくり沈みます。うんちから自分の健康状態がわかるので、毎朝健康なうんちがたくさん出るかどうかをチェックする習慣をつけましょう。
Column 日本人はうんち量が激減している!
藤田先生の調査では、1950年代の昭和時代の日本人のうんち量は1人当たり1日平均約400gでしたが、2000年代になってからは1日平均約200gにまで減っているそうです。約50年間で日本人の腸内細菌が半減したのは、ストレスの多い現代の社会環境はもちろん、腸内細菌のエサになる食物繊維の多い野菜や豆類、海藻などの摂取量が減っていることも大きな要因と考えられます。
「幸せホルモン」は腸内で作られる!
喜びや快楽を伝える神経伝達物質の「セロトニン」や、やる気を引き出す神経伝達物質「ドーパミン」は、俗に幸せホルモンと呼ばれます。これらの幸せホルモンも、腸内で腸内細菌によって合成されます。ストレスで腸内細菌が減ると必然的にセロトニンの量も減り、脳に送られるセロトニンも減少し、うつ病を発症する原因になります。もし「最近、なんだかやる気がしない…」「何をやっても幸せを感じられない…」という人は、腸内環境を見直してみる必要があります。
メタボが増えたのも腸内細菌の「デブ菌」が一因だった!
平成になってから、成人病を招く「メタボリックシンドローム」に注目が集まり、メタボの特定健診が義務化されました。実は、内臓脂肪過多のメタボも腸内細菌と関係があります。腸内細菌は、「善玉菌(アクチノバクテリア門)」「悪玉菌(プロテオバクテロイデス門)」「日和見菌(フィルミクテス門、バクテロイデス門)」に大きく分けられます。この中で、日和見菌のフィルミクテス門は、排せつされるべき食物まで取り込んでしまう通称「デブ菌」です。もうひとつの日和見菌バクテロイデス門は、脂肪を燃やす短鎖脂肪酸を作る通称「ヤセ菌」です。デブ菌は悪玉菌につきやすいので、腸内に悪玉菌が多いとメタボになりやすいのです。
ストレスに負けないガッツを養う食事の極意
1. 腸内細菌のエサになる食材を毎日摂る!
免疫力を養うためには、腸内細菌のエサになる食物繊維が不可欠ですが、日本人の野菜摂取量は昭和から平成にかけて大きく下降しています。食物繊維が豊富な野菜類をはじめ、豆類、根菜類、海藻、キノコ類などを積極的に摂るようにしましょう。
2. 自分に合う乳酸菌を見つけよう!
発酵食品のヨーグルトや乳酸菌飲料も腸内細菌のエサになりますが、特定の菌を摂取しても腸内に定着はしません。腸内細菌の種類は人によって千差万別なので、相性のいい乳酸菌も人ぞれぞれです。いろいろな種類を試してみて、「これを食べるとお通じの調子がいいな」と感じるものを見つけて、続けることで腸内環境の改善に役立ちます。
3. 抗生物質をできるだけ避ける!
抗生物質の使い過ぎは、腸内細菌の働きを阻害するので注意が必要です。
Column 腸内細菌を活性化する「酢キャベツ」を常備しよう!
内臓脂肪の燃焼を高める物質「短鎖脂肪酸」を増やして、腸内細菌を活性化するには、「酢キャベツ」がおすすめです。短鎖脂肪酸を増やすことで、肥満や糖尿の予防にも役立ちます。キャベツは免疫力を下げる活性酸素を抑えるといわれています。
酢キャベツの作り方はいたって簡単!キャベツを千切りし、ビニール袋の中に入れ、塩少々とお酢(どんな酢でもOK)を適宜加えて軽く揉み込み、冷蔵庫で半日寝かせれば完成です。毎食100gを目安に、主菜の付け合わせなどにして食べましょう。
藤田先生がテレビ番組の企画で、4人の被験者に酢キャベツを1日100g食べてもらった結果、ヤセ菌と呼ばれる日和見菌バクテロイデス門が増えたそうです。腸内細菌が増えて、免疫力が上がり、そのうえ余分な脂肪を落とすことができれば、理想的ですね!
まとめ
ストレスの多い現代社会では、免疫力の要である腸の中から健康にすることが大切です。腸内細菌を増やす食生活を心がけることで、ストレスに負けないガッツを養いましょう!
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