今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より、「菖蒲根」をピックアップしました。
菖蒲(しょうぶ)の香りには血行促進や疲労回復効果も |
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ゴールデンウィークが近づき、気候もどんどん暖かくなってきました。この季節を象徴する「五月晴れ」は本来、旧暦五月の梅雨の合間の晴れ間を指す言葉でした。しかし、新暦の五月に当てはめられてからは、今のように五月のさわやかな晴天を指すようになったようです。
一般に「ショウブ」と呼ばれている植物には本物と、似て非なるものの2種類あります。園芸などで栽培され、きれいな花を咲かせるショウブは、実は「ハナショウブ」といい、生薬に用いたり、菖蒲湯に入れるものとは全くの別ものです。ハナショウブはアヤメ科の植物ですが、本物の菖蒲はサトイモ科、もしくはショウブ科に属する植物です。
葉の形状が似ていることから「ショウブ」と名付けられたハナショウブですが、見た目が派手なことから、本家より目立ってしまっています。なんとも不憫な菖蒲ですが、実はこれは現代に限った話ではなく、菖蒲はかつて「アヤメ」と呼ばれており、現在のハナショウブことアヤメは「ハナアヤメ」と呼ばれていました。やがて、派手で目立つハナアヤメが「アヤメ」として認知され、アヤメから外された菖蒲はそのまま音読みで「ショウブ」と呼ばれるようになったのです。このように、菖蒲は二度も名前を取られてしまいましたが、この季節にはぜひ菖蒲湯に入って、その爽やかな香りを楽しみ、菖蒲本来の素晴らしさを満喫してみてはいかがでしょうか。 |