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生薬百選 87 カリン


どんどん気温が上がり、今年もカリンのピンクの花の咲く季節がやってきました。
カリンはバラ科の木で、春に五弁の花を咲かせます。幹からは皮がはがれ、緑色の部分がまだら状になっています。それほど高くはならない木ですが、秋になると木の大きさとは不釣り合いなほどの大きな実を付け、良い香りがします。


カリンの木
カリンの木
カリンの花
カリンの花

人々の間では、カリンには咳止めの効果があるとして、それを乾燥させたもの(木瓜:もっか)が煎じて用いられました。今ではお酒、ジャム、砂糖漬け、のど飴などとして多くの方に親しまれています。


カリンの実
カリンの実
実を乾燥させたもの(木瓜)
実を乾燥させたもの(木瓜)

弊社の健康生活提案型複合施設「くらすわ」がある長野県の諏訪(すわ)地方は、古くからカリンの産地として知られてきました。諏訪は諏訪湖という大きな湖の岸辺を中心に発展した地域ですが、昔は湖が度々氾濫したため、堤防を補強するためにこの木が湖畔に沿って植えられるようになり、秋には実を食べていたといわれています。
しかし、じつは諏訪でカリンと呼ばれている木はほとんどが「マルメロ」という別種の植物です。マルメロとカリンはよく似た花や実をつけますが、マルメロは比較的白い花を咲かせ、また、果実は細かい毛で覆われています。
どちらも香りの良い実がなりますので、皆様方も一度見に来られてはいかがでしょうか。


■芦部 文一朗(養命酒中央研究所・基礎研究グループ)