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節目年齢の雑学


たまには人生の要所要所で立ち止まって、自分の来し方を振り返り、これからの時間に思いを巡らすのも大事なことですね。さて、「不惑」や「還暦」など、人生の節目の年齢を表す言葉がたくさんありますが、これらは本来どのような意味を持っているのでしょうか?


「40にして惑わず」の孔子は、70で何を会得した?


年齢を重ねるにつれて、「節目の年」を意識したことのある方も多いと思います。「自分も◯○歳になったかぁ。ますます頑張らないと!」と心機一転、新たな気持ちになるものですよね。そんな「節目の年」に関する有名な言葉といえば、孔子の「論語」の一説です。

孔子いわく「15歳の時、学問で立身しようと志し、30歳で学問の基礎が培われて自立し、40歳の時に、心の迷いがなくなった…」。この一説から、15歳のことを「志学」、30歳のことを「而立(じりつ)」、40歳のことを「不惑(ふわく)」と呼ばれるようになりました。以降、50歳は、天が自分に与えた使命を悟った「知命(ちめい)」。60歳は、人の意見を素直に聞けるようになった「耳順(じじゅん)」。70歳は、自分の欲望のままに行動したとしても、礼を外すことがなくなった「従心(じゅうしん)」と呼びます。

果たしてこのように人生を歩めるかどうかはともかく、「40なんだから、こんな些末なことに悩んでちゃダメだな!」と自分自身にハッパをかける意味では、とても良い言葉ですよね。

中国最古の医学書のひとつ「黄帝内経(こうていだいけい)」に記載されている「男は8、女は7の倍数の年齢で体に変化が訪れる」という説が、体の健康を省みることに役立つとすれば、論語のこの一説は、自らの「心の健やかさ」や「内面の成長」をチェックすることに役立つかもしれません。

16歳の女性と64歳の男性、その共通点は?


もうひとつ、皆さんに馴染みのある言葉に「還暦」があります。数え年で61歳(満60歳)のことを指す言葉です。

還暦の別名は「本卦(ほんけ)還り」。十干十二支が60年で一周して、生まれた年の干支に戻るということで、改めて長寿と健康を願うお祝いが催されます。ちなみに、赤いチャンチャンコを着るのは、「“赤”ちゃんに還る」という説や、赤が魔除けの色だからといった説がありますが、どうやら日本独自の風習のようです。

60歳以降の呼び名も一般的に知られていますよね。70歳は「古希」。中国の詩人、杜甫(とほ)の「人生七十古来稀」という詩の一節から来ている言葉です。今でこそ元気な70代の方もたくさんいらっしゃいますが、昔は非常に稀でめでたいことだったことが伺えます。

おもしろいのは、漢字の中に描かれている漢数字をもとにした呼び名がたくさんあること。16歳の女性のことを「破瓜(はか)」といいますが、これは「瓜」の字を縦に割ると「八」が2つあるようにみえることが由来。8足す8は16ということですね。男性の場合は足し算ではなく掛け算で、64歳のことを破瓜と呼びます。

99歳は「白寿」。これは「白」の字が「百」に一本足りないことから、100引く1で99となりました。また、長寿の島として知られる沖縄では、数え97歳の9月7日に「かじまやー」という祝いの儀が行われる地域もあります。かじまやーとは風車のこと。風車を持って村を練り歩いたそうで、童心に還るという意味合いが込められているそうです。

108歳を指す「茶寿」は、草かんむりに「十」が2つ、その下は「八十八」。足して108というわけです。ここまでくると、ちょっとクイズのようですね。

ちなみに、結婚記念日もひとつの区切りとしてみなされていますよね。25年目の銀婚式、50年目の金婚式は有名ですが、欧米では「紙婚式(1年目)」「藁婚式(2年目)」「木婚式(5年目)」「錫(すず)婚式(10年目)」などと呼ぶケースもあります。紙→木→錫と、齢を重ねるにつれ素材がゴージャスになっていき、めでたさもアップするということでしょうか。


昔の人は短命?それとも長生き?


「女は7、男は8の倍数」理論が書かれている中国最古の医学書のひとつ、「黄帝内経(こうていだいけい)」。その書き出し部分で、時の皇帝であった黄帝は、側近の学者、岐伯(きはく)にこう尋ねています。

「昔の人はたとえ百歳を超えても健やかに暮らしていたのに、なぜ今を生きる多くの人は50歳くらいで衰えてしまうのか?」

2000年前に編纂された書物で、「昔の人は長生きだった」と書かれているのが実に興味深いですよね。これに対して岐伯はこのようなことを答えます。

「かつての人々は養生の心得がありました。節度のある飲食、規則正しい寝起き、無理をしない暮し・・・それに引き換え、今の人々は体を酷使し、情欲に溺れ、いっときの快楽をよしとしている。だから早々に衰えるのです」

さらに、良い養生は病気になってから治療するのではなく、病になる前に予防すること。これは国を統治するのと同じで、世の中が乱れてから対策をとるのでは遅い、といった趣旨のことも書かれています。その他、黄帝内経では、症状別の対処法や季節の養生法が事細かに記されています。

これからの季節、夏の養生法はというと「夜は遅くてもよいが朝は早く起きる」「怒らずに過ごす」「夏に成長して花開く植物のように、体の中の“陽気”を発散させる」ことが大切だと説いています。紋切り型に「早寝早起き」といわず、夜は遅くてもよいというのは夏の日照時間に関連しているからでしょう。ちなみに春も同様です。一方、秋は「早寝早起き」、冬は「早寝、起きるのはゆっくりでもOK」と説いています。

黄帝内経に一貫して込められている考え方は、人間も自然の一部にすぎず、自然のリズムと共に生きるのがいちばん、ということです。2000年前に書かれた本でも、今に活かしたいくだりが多々あります。