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ふとんの雑学

「英語のfutonはふとんじゃない!」「氷点下30℃以下の自然に耐える人々が使っているふとんとは?」「お姫さまが眠れなかったのは豆のせい?」——今月はふとんの雑学をお届けします!


英語のfutonはふとんじゃない!

ふとんは漢字にすると「蒲団」や「布団」と書きます。「団」は丸いという意味で、「蒲団」とは古くは「蒲(ガマ)の葉を編んだ丸い座ぶとんのような敷物」を意味する言葉でした。時を経て柔らかな布が使われるようになったため、「布団」と表記するようになったのです。
実は英語にも「futon」という言葉があります。読み方も「フトン」で、「フ」にアクセントを付けて発音します。でも、英語圏のホテルに泊まった際、掛けぶとんや毛布を持ってきてほしいときは、くれぐれも「futon」といわないようにしましょう。なぜなら、英語の「futon」はソファーベッドなどを指すからです。英語で掛けぶとんは「デュベ(duvet)」「キルト(quilt)」「コンファター(comforter)」などといい、敷きぶとんは「マットレス(mattress)」、毛布は「ブランケット(blanket)」といいます。なお、日本の夏の定番である「タオルケット」は和製英語です。
ちなみに海外のホテルのベッドによく掛かっている帯状の布は「ベッドスロー(bed throw)」などといいます。靴を脱がない欧米では、靴を履いたままベッドに横になることがあるので、ふとんの汚れ防止に必須なのです。自宅のベッドにもこれを掛けると、旅先のホテルにいるような気分を楽しめるかもしれません。


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氷点下30℃以下の自然に耐える人々が使っているふとんとは?

寒い季節は身体が冷えやすいので、暖かなふとんの中で眠るのは快適ですよね。では昔は、どんなふとんで寝ていたのでしょうか?
平安時代の庶民が使っていたふとんの素材は樹皮やコウゾなどでした。当時はまだ綿栽培が行われていなかったので、綿ぶとんがなかったのです。江戸時代には綿ぶとんが作られるようになりましたが、一般に普及するのは明治時代になってからで、貧しい庶民はふとんの素材に海草や紙を使っていたようです。昭和になると化学繊維のつめものをしたふとんが流行しますが、バブル時代を境に羽毛ぶとんが一気に普及しました。
快適な眠りを得るためには、軽くて保温性や放湿性に優れた羽毛ぶとんが理想的といわれます。高級な羽毛ぶとんには、寒暖差の激しい地で育った水鳥の羽毛が使われます。そうした羽毛には、激しい寒暖差に耐えられるだけの優れた温度調節機能が備わっているからです。
ちなみに冬は氷点下30℃以下になるモンゴルの遊牧民は、厳寒の地で体温を上手に調節して生きているフタコブラクダやカシミアヤギ、ヤクの毛を使ったふとんを利用しています。特にフタコブラクダは寒暖差が60℃以上になる過酷な地にも生息できるのでフタコブラクダのうぶ毛を使ったふとんは温度や湿度の調節機能が抜群に高いといわれます。過酷な環境に育まれた天然繊維を上手に利用して、快適なふとんで質のよい睡眠をとりたいですね。


お姫さまが眠れなかったのは豆のせい?

アンデルセンの童話に、『エンドウ豆の上に寝たお姫さま』という物語があります。ご存じかもしれませんが、あらすじを簡単に説明しましょう。ある王子が真のお姫さまを妃に迎えたいと考え、世界中を探し回りましたが、にせものの姫ばかりでした。ある嵐の夜、見知らぬお姫さまがびしょぬれで王子の城にやってきました。王子は彼女が真のお姫さまかどうかを見極めるために、彼女の寝るベッドに1粒のエンドウ豆を置き、その上に敷きぶとんと羽毛ぶとんを20枚ずつ重ねました。朝になって寝心地を尋ねると、彼女は何か固いものが身体に当たって眠れなかったと答えました。フカフカのふとんに隠した豆1粒にも気付けるのは育ちのいい真のお姫さまに違いないと考え、王子は妃に迎え入れました。
ただ、現実的にはふとんがやわらかすぎると腰回りが沈んでしまうので、腰を痛める原因になるといわれています。腰回りが沈んだまま寝ると、腰が「く」の字になって猫背の姿勢が長時間続くことになります。また、ふとんがやわらかすぎると寝返りも打ちにくくなります。それによって腰回りの筋肉が硬直して血行が悪くなり、腰痛を引き起こす可能性が生まれるのです。もしかしたら、お姫さまもエンドウ豆のせいではなく、ふとんがフカフカすぎたために腰回りに負担がかかって眠れなかったのかもしれませんね。