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落語の雑学

「落語のマクラって何のためにあるの?」「落語のオチとはぶち壊し作業のこと?」「東京と上方では落語の小道具が違う?」――今月は落語の雑学をお届けします。


落語のマクラって何のためにあるの?

一席の落語は、冒頭の「マエオキ」や「マクラ」から「本題」「オチ」など、幾つかのパーツでできています。マエオキは、「まいどばかばかしいお笑いを」といった冒頭の口上ですが、現代では省略され、マクラから始まることが多いようです。マクラとは噺の導入部分で、噺の頭に置くことから命名されたといわれています。マクラには大きく分けて次のような役割があります。
1つ目は演者が「今日のお客さんは、どんなネタにウケるかな?」と反応を探るため。2つ目は、本題に関連した小噺を前振りとして仕込むため。タイムリーな時事ネタと絡めたりすることで、落語初心者のお客さんも古典落語に親しみやすくなったりします。3つ目は、オチの伏線を張るため。最後のオチで、観客が「ああ、あのネタはこの伏線だったのか!」と爆笑すればしめたものです。4つ目は、本題の背景となる風俗や習慣などを解説するため。古典落語では、古い風習や耳慣れない言葉が出てくることがありますが、マクラで解説されることで観客の理解がぐっと深まります。通常、マクラが省略されることはないそうですが、初代林家三平さんはマエオキもマクラも無視し、「どーも、すみません」を連発する型破りな落語で、昭和のお茶の間に“三平ブーム”を巻き起こしました。



落語のオチとはぶち壊し作業のこと?

「この3コマ漫画はオチが効いている」「部長の話はオチがない」など、日常的にも「オチ」という言葉がよく使われますが、オチは江戸時代に落語の原名である「落としばなし」から発生した言葉です。「えー、落語というものは落としばなし、はなしを落とすから落語でして…」などと切り出す落語家もよくいます。演者がサゲ(落げ)ると、観客がオチ(落ち)ることから、オチのことを「サゲ」という場合もあります。上方落語の桂米朝さんは著書『落語と私』の中で、「サゲというのは、一種のぶち壊し作業。物語の世界に遊ばせ、笑わせたりハラハラさせたりしていたお客を、サゲによって一瞬で現実に引き戻す。いわば知的なお遊び」と語っています。
オチには実にさまざまな種類があります。例えば「地口(じぐち)オチ」は、ダジャレやパロディーで落とすこと。上方では「にわかオチ」といいます。「間抜けオチ」はその名の通り、間抜けな言動で落とすこと。「まわりオチ」は話がまわりまわって元の話に落ちること。「拍子オチ」は話がとんとん調子よく進んだ後、さっと落とすことです。
古典落語の人情噺にはオチがないものもありますが、同じ演目でも落語家によって独自のオチを付けている場合が多々あります。ぜひオチの違いを楽しんでみてください。


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東京と上方では落語の小道具が違う?

東京では、落語家の小道具といえば、「扇子」と「手ぬぐい」だけ。この2つを使って、さまざまな噺を演じます。扇子は、キセルをはじめ、箸や筆から刀の代わりになります。手ぬぐいは、帳面や財布、煙草入れなどに見立てられます。たまに、湯飲みを座布団の脇に置く落語家がいますが、湯飲みは小道具として使わないのが原則だそう。噺が始まれば、演者の話術と2つの小道具だけで、江戸の猥雑な長屋からゴージャスな吉原まで表現します。
一方、上方では小道具がもう少しにぎやかになります。まず、背景には松や庭の絵が掛けられ、座布団の前には「見台」という小机と、「膝隠し」というついたてが置かれます。見台の上には「張り扇(はりせん)」と「小拍子」が置かれ、噺の最中に張り扇で見台を威勢よくたたいたり、小拍子をカチャカチャ鳴らしたりしたりします。さらに、落語家が登場するときに下座で演奏される出囃子(でばやし)も活用します。これを「ハメモノ」といい、張り扇+小拍子+ハメモノの三つどもえで盛り上げるのです。東京落語しか知らないと面食らうかもしれませんが、違いを楽しむのもまた一興です。