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笑ってほっこり体温アップ!落語で楽しく冷えとり

笑うと血行がよくなって、体があったまるとよく言われますが、果たして本当でしょうか?
実際に体温が上がるのかどうか、落語家立川志の輔門下の若手真打・立川志の八さんの落語会に潜入して実験してみました!さらに、冷えとりのスペシャリストである医師の川嶋朗先生に、笑うと体温が上がるメカニズムも教えていただきました。


笑うと本当にあったまる?
落語会で実験してみました!

「笑うと体があったまるってホント?」「それとも都市伝説?」――そんな疑問にお応えすべく、話題の若手真打・立川志の八さんの落語会にお邪魔して実際に検証してみました!

お話を伺った先生
立川志の八(たてかわ しのはち)さん
立川志の八(たてかわ しのはち)さん

落語立川流 立川志の輔門下の二番弟子。1974年、神奈川県横浜市生まれ。親の仕事が落語会の主催ということもあり、幼い頃より落語に親しむ。20歳過ぎ、親の仕事を手伝う中、立川志の輔師匠の高座に出会い衝撃を受け、落語家を志す。2000年に立川志の輔師匠に入門(前座名 志の八)。2011年に第10回さがみはら若手落語家選手権優勝。2012年に第4回前橋若手落語家選手権優勝。2017年秋に真打昇進。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」に出演中。
最新公演情報はこちら→「立川志の八公式サイト」


いざ実験スタート!

実験の舞台となったのは、東京・二子玉川の「5/8 KAFÉ(ファイブエイトカフェ)」で定期開催されているカフェスタイルの落語会「TAMAGAWA RAKUGO」。真打に昇進したばかりの立川志の八さんの落語を目当てに、観客が続々集まり、会場はあっという間に満席状態。落語が始まる前に、観客3名の体温を計測し、さらに観客席をサーモグラフィカメラで撮影しました。

開始前の温度計

実験日は2017年12月末の夜。開始前の会場温度は20度。

観客Aさんの体温

観客Aさんの体温は36.2度。

観客Bさんの体温

観客Bさんの体温は36.1度。

観客Cさんの体温

観客Cさんの体温は35.8度。

Cさんのサーモグラフィ

冷え症のCさんをサーモグラフィで撮影すると、手や指先が青く映り、冷え切っているのが一目瞭然です。

開始前の会場

落語開始前に、満員の客席をサーモグラフィカメラで撮影し、落語終了後にどのくらい変化があったかを比較します。

*取材協力:5/8 KAFÉ(ファイブエイトカフェ)
東京都 世田谷区 玉川 3-19-3-B1F
http://58kafe.com/

滑稽噺の落語が始まり、会場がヒートアップ!

志の八さん

大きな拍手の中、志の八さんが登場!

志の八さんマクラから本題へ

軽妙なマクラが始まり、一席目の滑稽噺「宗論(しゅうろん)」が始まると、会場は爆笑に次ぐ爆笑で、一気にヒートアップ!

爆笑後は、観客全体の体温が上がった!

志の八さん笑顔

志の八さんのひょうひょうとした一席目の落語が終わると、会場全体が笑顔でリラックスムードに。

画像をクリックして温度変化をチェック!

画像をクリックすると、開演前と「宗論」終了後の観客席のサーモグラフィを切り替えられます。

開演前のサーモグラフィ
開演前のサーモグラフィ

開演前と一席目終了後のサーモグラフィによる観客の温度変化を見ると、温度が低いことを示す寒色系の色が、温度が高いことを示す暖色系の色に変化しているのが分かります。

休憩中の温度計

温度計は開演前と同じ20度のまま。室温は変わらないのに、一席目が終わった段階で、観客の体温だけが上がったようです。

胸がじーんと熱くなる人情噺で体温はどう変わった?

二席目は人情噺の名作「芝浜(しばはま)」。浜のリアルな情景や、夫婦の心温まるやりとりを、臨場感たっぷりに演じる志の八さんの名演に、目を潤ませ、涙をそっとぬぐう観客の姿も。爆笑続きだった一席目とは打って変わって、人情噺にしんみり聴き入っている観客の体温は、果たしてどう変化したのでしょう?

画像をクリックして温度変化をチェック!

画像をクリックすると、開演前と「芝浜」終了後の観客席のサーモグラフィを切り替えられます。

開演前のサーモグラフィ開演前のサーモグラフィ

人情噺の後も、一席目の滑稽噺の後と同様に、観客が全体的にあったまっているのが伺えます。

観客Aさんの体

観客Aさんの体温は、
開演前36.2度→終演後36.8度に
0.6度アップ!

Aさん「志の八さんの落語はツボにはまることが多くて、今日もマクラからげらげら。笑うと巡りがよくなる感じがしますが、実際にこんなに体温が上がるなんてびっくりです!」

観客Bさんの体温

観客Bさんの体温は、
開演前36.1度→終演後36.5度に
0.4度アップ!

Bさん「落語で笑ったり、ほろりとすると、体の中からじんわり温かくなってくるのが体感的にも分かります」

観客Cさんの体温

観客Cさんの体温は、
開演前35.8度→36.3度に
0.5度アップ!

Cさん「開演前は寒くてニット帽とマフラーを着けていたけど、今は暑いくらいです。人情噺でじーんとなると、心に温かな火が灯って、体もほかほかしてきますね」

\実験大成功!/
落語でお客さんの心をあっためたい!

実験に協力してくださった立川志の八さんに、ご感想を伺いました。

――“場があったまっている”と感じるのは、どんなときですか?

「高座から客席を見たとき、お客さんの眉間のしわが消えてリラックスした表情になっていると、会場があったまっていい雰囲気だなあと感じますね。通常、本題前のマクラのときにお客さんの反応を探りながら、場をあたためていくんですが、今回の実験のサーモグラフィみたいに、演者にもお客さんのあったまり具合が色でパッと見えたら便利ですねぇ(笑)
笑いは伝染するので、笑っている人が多いと、それが会場全体にウエイブのように広がって、演者もそれに合わせて乗っていくんです。だからみなさんいっぱい笑ってください!ただ、場違いのところで妙に笑い過ぎると、逆に会場が冷える場合もありますのでお気をつけください (笑)。
私の前に上がる前座さんがお客さんの心をつかんで、場をあっためておいてくれると、とてもやりやすくなりますね」

志の八さんは和服から私服

実験終了後、志の八さんは和服から私服に着替えリラックス。

――志の八さんも演じながらだんだん熱くなるんですか?

「そもそも高座は照明が当たるから熱いんですよ(笑)でも、なぜだか私は一席目で汗をかき、その後はあまり汗をかきません。今回も開演前と終了後に体温を測りましたが、どちらも36.2度で変化はありませんでした。よく落語家さんが落語の本題に入るとき羽織を脱ぐでしょう?これに明確な決まりがあるわけではないのですが、あまり落語を聞いたことがないお客さんの中には「おっ、噺が乗ってきて熱くなってきたんだな」と勘違いしてくださる人もいるようです。ありがたいお客さまです(笑)」

――笑うだけでない人情噺でもあったまるというお客さんが多いですね。

「人情噺は心がなんとも言えない温かさに包まれますよね。滑稽噺のように大笑いはしないかもしれませんが、胸がほっこり熱くなるツボがあるんでしょう。それによって体もふわーっと温かくなるような気がします。でも気持ちだけでなく、本当に体温が上がっていたとは、スゴイですね!みなさん、これからも落語で身も心もあったまりましょう!(笑)」

冷えとりに詳しいドクターに聞いた!
なぜ笑うと体温が上がるの?

落語会で観客の体温が上がった理由について、冷えとりのスぺシャリストである川嶋朗先生に伺いました。

お話を伺った先生
医学博士 川嶋 朗(かわしま あきら)先生
川嶋 朗(かわしま あきら)先生

1957年生まれ。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。一般財団法人東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。ハーバード大学マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長を経て現職。漢方などさまざまな代替、伝統医療と西洋近代医学を統合した医療を行う。『冷えとりの教科書』(マイナビ)、『冷え克服法』(エクスナレッジ)など著書多数。

先生のコメント

「笑うという行為は、生理的には副交感神経の反射です。笑うのも泣くのも、生理的には一種の排泄現象です。落語の滑稽噺や人情噺で笑ったり泣いたりしてリラックスすると、体温が上がります。免疫学の権威である故安保徹先生の理論では、笑うとリラックスして副交感神経が優位になり、神経伝達物質のアセチルコリンが出て、リンパ系の免疫が活性化します。それによって風邪などの病気にもかかりにくくなります。また筑波大学名誉教授の村上和雄先生の実験では、糖尿病患者25名に漫才を見せて笑ってもらった結果、血糖値が下がるという結果が出たそうです。
ちなみに私も落語が大好きで、かつて子役タレントだった頃には、若き日の古今亭志ん朝師匠や立川談志師匠と共演したこともありました。落語をはじめとする笑いは、ストレス発散にも役立ちます。ストレスを感じている人は、ぜひ積極的に楽しんでみてはいかがでしょう」



まとめ

今回の実験のように、笑うと体がぽかぽかして、体温アップにもつながるようです。休日は落語を聞きにいくなど、笑いのある毎日を日々楽しむことで健康につながれば一石二鳥ですね。



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