お正月明けは、年末年始の暴飲暴食や寝正月などの影響で、免疫力が下がって、胃腸の不調から体調不良を訴える人が増える時期です。お正月明けから快腸ライフを送れるように、腸活のスペシャリスト藤田紘一郎先生に、年末年始におすすめの養生法を教えていただきました。
- お話しを伺った先生
- 医学博士 藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)先生
1939年、旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学医学系大学院修了。東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見により小泉賞を受賞。2000年、人ATLウィルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。『腸内細菌と共に生きる 免疫力を高める腸の中の居候』(技術評論社)、『「いい人」をやめるだけで免疫力が上がる!』(青春新書intelligence)など著書多数。
免疫力の70%は腸にあり
年末年始の暴飲暴食で免疫力がダウン!
年末年始は、クリスマスに忘年会、お正月、新年会とにぎやかな行事が多く、腸に負担をかけがちです。人の免疫力の約70%は腸粘膜と腸内細菌によって作られているので、腸がダメージを受けると、腸内細菌が減って免疫力もダウンし、さまざまな身体の不調の原因に!
腸ダメージ 1
腸の免疫力が落ちると「風邪」や「食中毒」にかかりやすくなる!
冬は風邪やインフルエンザをはじめ、ノロウィルスなどの感染症が増える時期です。腸内細菌が多く、腸の免疫力が高い状態だと、そうした病原菌に感染しても大事には至りません。しかし、腸内細菌が少ない場合は、免疫力も落ちるので、症状が重くなる危険性も高くなります。
コラム 腸内細菌が多いと「O157」に感染しても食中毒にならない?!
1996年に大阪府堺市の小学校で腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒が起きたとき、O157の病原菌が便から出ても発症しなかった子が約30%、軽い下痢をした子が約60%、重篤な症状で入院した子は約10%でした。このときの検査結果によると、症状の重かった子ほど腸内細菌が少なく、腸内細菌の多かった子はO157が体内に入っても重い食中毒にならなかったのです。
腸ダメージ 2
腸内で作られる「幸せホルモン」が減るとうつ状態に!
やる気を起こさせる「ドーパミン」や、喜びや快楽を伝える「セロトニン」も、腸内細菌がないと合成できません。幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの約90%は腸内にあり、約2%が腸内細菌によって脳に送られます。しかし、腸内細菌が減って、脳内のセロトニンが不足してしまうと、うつ状態になりやすくなります。
腸ダメージ 3
腸内細菌が減ると「肌荒れ」の原因に!
ビタミンB群やビタミンKは、腸内細菌しか作ることができません。そのため、腸の調子が悪くなって腸内細菌が減ると、ビタミンB2が不足して肌荒れになったり、肌のハリが失われます。また、ビタミンB1が不足すると、腰痛の原因になります。腸内細菌は若さを保つためにも欠かせないのです。
免疫力をアゲる5つの腸活法で、年始から快腸に!
暴飲暴食をすれば、1日で腸に悪影響が出ますが、正しい「腸活習慣」を実践すれば、腸内環境がみるみる改善して、免疫力のアップにつながります。年末年始は、ぜひ藤田先生おすすめの腸活法を実践してみてください。
腸活 1 お正月も生活リズムを保って免疫力をキープ!
免疫細胞のひとつ「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の活動は、覚醒時に高まって外敵のウィルスなどと戦い、睡眠中は低くなります。年末年始に夜更かしや寝坊をして、生活リズムが崩れると、腸内環境も乱れ、NK細胞が覚醒時に活性化できず、免疫力が下がります。お正月中もいつもと同じ時間に起きて朝食を摂ることで、腸内環境の乱れを防げます。
腸活 2 お正月に摂りたい腸活食材とは?
善玉の腸内細菌を増やすためには、「食物繊維」の摂取が必要です。大根やにんじん、蓮根などの根菜類は食物繊維が豊富なうえ、お腹を温めて腸を働かせてくれます。味噌や漬けもの、納豆などの「発酵食品」も腸内細菌を増やしてくれます。
また、活性酸素を除去するためには、ポリフェノールを含んだブドウや、緑黄色野菜、ニンニク、ネギ、キノコ類などがおすすめ。これらの食材には「フィトケミカル」と呼ばれる植物性の抗酸化物質が含まれているので積極的に摂りましょう。
特に50代以上は、お正月もお餅などの糖質より、不足しがちなタンパク質を補うために肉や卵を食物繊維と共に摂ることが老化予防に役立ちます。肉はステーキや鍋料理など、シンプルな調理法で食べるのがおすすめです。油の質が悪い揚げものや、加工食品の中でも多くの添加物を含んでいるものは腸内細菌に悪影響なので、できるだけ避けましょう。
コラム 便でわかる快腸チェック法!
便を見れば、腸内が元気かどうかがわかります。便の約80%は水分で、食べかすは約5%に過ぎず、残りの大部分は、腸粘膜と腸内細菌がフルに働いて新陳代謝した後の残骸です。便の量が多いということは、それだけ腸粘膜と腸内細菌が元気に働いてくれたという証拠です。逆に便の量が少ないということは、腸粘膜と腸内細菌があまり働いていないことになります。便はスルッと出るバナナ状が理想的。軟便やコロコロ便の場合は、腸活食材を意識した食生活に変えましょう。
腸活 3 タイプ別 腸に優しいお酒の飲み方とは?
年末年始はお酒を飲む機会も増えます。飲み過ぎは腸に負担をかけますが、逆にお酒を我慢するストレスも腸に悪影響を与えます。アルコールを分解した後にできるアセトアルデヒドを無毒化する酵素の働きの有無で、お酒に対する強さが違ってきます。自分のタイプに合う飲み方をすれば、腸への負担も和らげられます。
両親がお酒を一滴も飲めず、本人も全く飲めないタイプ
遺伝的にアルコール分解酵素の働きがないので、酒席でもお酒を口にしないことです。
両親のいずれかがお酒を飲めず、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなるタイプ
アルコール分解酵素の働きが弱いので、飲むなら約1合程度にしておきましょう。
両親がお酒を飲めて、本人もお酒に強いタイプ
アルコール分解酵素の働きがある人です。このタイプは禁酒のストレスでがん細胞が増えるという研究データ(酒量と染色体の入れ替わりの数の研究 1994年)もあるので飲んでも構いませんが、飲酒量は1日2合までにして、必ず「休肝日」を設けましょう。
(※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量を。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。飲酒運転は法律で禁じられています)
腸活 4 好きな人と食事を楽しもう!
人は不安や緊張を感じると、腸内の悪玉菌が増殖して腸内環境のバランスが乱れます。すると、それによってさらに脳が不安と緊張を増幅させるという悪循環が生まれます。あまり仲の良くない人と食事をすると、不安感や緊張感が高まって、腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるので、年末年始はできるだけ好きな人と一緒に食事をする機会を増やしましょう。
腸活 5 寝正月は禁物!適度な運動は腸を若返らせる!
ダラダラと寝正月を決め込んでいると、腸のぜん動運動が滞って、便秘になりやすくなります。また、運動不足だと代謝が落ちて、正月太りしがちです。それを防ぐには、お正月休み中も適度な運動が欠かせません。神社参拝のついでにウォーキングをしたり、テレビを観ながら足腰を動かすなどの軽い体操をするだけで腸の働きがよくなります。
年末年始に藤田紘一郎先生直伝の腸活習慣を実践して、2018年はお腹の中から“超快腸”な年始をお迎えください!
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