HOME > 特集記事 > 【2012年3月号】 花粉症だけじゃない!春の“脱・アレルギー”作戦

花粉症だけじゃない!春の“脱・アレルギー”作戦


花粉症の方にとって、悩ましい季節がやってきました。日本気象協会の予測(第3報)では、花粉の飛散量は前年比で3〜7割減とのこと。ただし前年は飛散量がとても多かったため、全国的には例年並みか、やや少なめになるようです。

しかし、花粉症の時期を過ぎたとしても、鼻水が止まらない、目や肌がかゆいといった症状に悩まされる方がいます。それは、花粉以外のものがアレルギーの原因になっている場合もありますし、スギ以外の他のものが原因かもしれません。

現在、日本人の3人に1人が、なんらかのアレルギー症状に悩んでいるといわれています。今月は、花粉症対策グッズをはじめ、意外なアレルギーの原因物質や発症のしくみ、アレルギーになりやすい生活習慣など、つらいアレルギーを克服するためのきっかけとなる話を紹介します。



意外! こんなものでもアレルギーに!?

アレルギーといえば、花粉やダニ・ホコリなどのハウスダストが一般的といえますが、実は身のまわりにあるものの大半が、アレルギー症状の原因になりうることをご存じでしょうか?

もちろん、花粉にもホコリにも、まったく反応しない方もいます。しかし特定の人にとっては、つらい症状を引き起こす原因となるのがアレルギーの厄介なところ。まずは「エッ!?こんなモノまで原因に!?」と思ってしまうものから見てみましょう。

Tシャツ(綿素材)
衣服の素材では、化学繊維やウールなどでアレルギー反応を起こすケースが多いといえますが、綿でもアレルギーになることがあります。衣服を作る過程で使われた染料や化学物質、洗濯する際に使う洗剤が原因の場合も。
太陽(紫外線)
日光過敏症と呼ばれることもあります。浴びた紫外線の量により、皮膚が赤みを帯びて湿疹が生じたり、吐き気をもよおすこともあり、長袖の衣服や日傘を使うといった紫外線対策が必須となります。
ゴム手袋(ラテックス)
いわゆる「ゴム」アレルギーです。天然ゴムに含まれるタンパク質がアレルギーを引き起こす原因となります。バナナやキウイなどのフルーツアレルギーを併発しやすい特徴も。ゴムの木のタンパク質とフルーツのタンパク質が似通っているためです。
金歯・銀歯(金属)
歯科治療で使われる金歯や銀歯。これらは通常、プラチナやパラジウムなども含まれた合金です。歯が黒ずんだり、皮膚がカサついて湿疹が出ることもあります。歯そのものではなく、金属のクラウン(被せ物)でも同様です。
ココナッツ(金属)
意外に思われるかもしれませんが、ココナッツに含まれるニッケルが金属アレルギーの原因となることがあります。ニッケルは、ピーナッツや海草にも多く含まれます。金メッキ加工のアクセサリーも、下地にニッケルが使われているケースが多々あります。
蝶(昆虫)
蝶や蛾の羽についている鱗粉によってアレルギーが引き起こされる人もいます。また、ユスリカも要注意。川や池のそばを歩いている時に小さな虫がたくさん集まって「蚊柱」を作っているのがユスリカです。

上記は少々稀な例といえますが、要はあらゆるものがアレルギーの原因となる可能性があるということ。実際にアレルギーだと思い込むことによって、じんましんなどが出るケースもあるほどです。さらに、特定の食品アレルギーだと思っていたとしても、実はその食品ではなく、加工段階で使われた添加物や化学調味料が原因の場合もあります。



一般的に多いとされる、4つのアレルギーの原因

主だったアレルギーの原因としては、以下の4つ。目や鼻、肌、喉に症状が現れることが一般的ですが、重度の場合は呼吸困難などの深刻な症状を招くケースもあり、注意が必要です。

花粉
春先から5月にかけて猛威を振るうスギ花粉をはじめ、その後に飛散量が増えるヒノキ、イネ科のカモガヤ、キク科のブタクサなど、多岐に渡ります。また、スギやヒノキが限りなく少ない北海道でも、シラカバの花粉症に悩まされる人がいます。
ハウスダスト
部屋の中にあるカビやダニの死骸、黄砂などの砂塵などの物質が集まり、ハウスダストとなります。昨今では住宅の気密性が高いことからカビも繁殖しやすく、その胞子もハウスダストになりえます。
食品
そば、卵、牛乳、魚卵など、特定の食品を摂取することによってアレルギー反応が生じます。カニやエビといった甲殻類はアナフィラキシー・ショックと呼ばれるアレルギーによってショック症状に陥ることも。小麦や大豆などでアレルギー反応が起きる人もいます。
動物
ペットの犬や猫などに対するアレルギーで、深刻なケースになると呼吸困難に陥ることも。犬や猫そのものが原因になることもあれば、ペットの抜け毛やフケなどが原因の場合もあります。ウサギやハムスターなども同様です。

花粉症対策グッズ
メガネを“ゴーグル化”する商品や、鼻に差し込むマスクも!
つらい花粉症を少しでも和らげるため、毎年多くの対策商品がリリースされています。現在、人気を博している商品をいくつか紹介してみると、まずは花粉症用のゴーグル。顔とゴーグルの隙間から花粉が入らないようにピッタリと付着するタイプで、欧米ではマスクよりも一般的です。普段からメガネをかけている方には「目マスク(プラネットビジョン60)がおすすめ。使用中のメガネにワンタッチで装着可能です。

「ノーズマスクピット(バイオインターナショナル)」は、鼻の穴に直接差し込むタイプのマスク。鼻が詰まることなく、花粉や粉じんなどの侵入をフィルターで防ぎます。「鼻に詰め物をしている」ことが周囲から悟られないところもポイント。一般的なマスクをしていてお化粧崩れが気になる方や、メガネの曇りを解消したい方にもおすすめです。

鼻のかみ過ぎで赤く荒れてしまいがちな状況を避けたい人は、ティッシュに気を配ってみるのもひとつの手。「鼻セレブ(ネピア)」は、保湿に優れた高級ティッシュ。ティッシュ自体が空気中の水分を取り込み、天然グリセリンがその潤いをキープすることによって、やわらかでしっとりした感触となっています。ちなみに同社は以前、3枚重ね構造でアロマオイルの香りがついた、1箱1500円の「超鼻セレブ」も限定発売していました。




ある日突然、アレルギー。日本人の3人に1人が悩まされる

現在、日本人の3人に1人が、なんらかのアレルギー症状を持っているといわれています。

小さな子どもからご年配の方まで幅広い層がアレルギーに悩まされていますが、その数は年を追うごとに増加傾向にあります。大気汚染やスギ花粉の飛散量の増加、さらに身の回りに化学物質が増えたり、食事が欧米化するといったさまざまな要素が増加の原因になっているといわれていますが、まずはアレルギーのメカニズムを簡単に紹介します。

アレルギー症状をひとことで表現すると、「免疫系が過剰になること」です。もともと免疫とは、体に入ってきたウイルスなどの敵を退治してくれるシステムのこと。敵(異物)が入ってきた際、免疫システムを構成する白血球が「IgE抗体」という“警備員”を作ります。この警備員が大量に出現し、さらに過剰に反応して、本来は敵ではない花粉や食品、金属などのアレルゲン(原因物質)を取り押さえてしまうことによってアレルギー反応が起こります。IgE抗体は花粉などを取り押さえた際、肥満細胞と合体。そうすると肥満細胞から“かゆみ”や“腫れ”をもたらすヒスタミンなどの物質が放出される仕組みです。

こうした免疫の過剰反応は、免疫力や体力のない高齢者や子どもに起きやすいといえます。しかし昨今では、大人になって突然、アレルギーを発症するケースも増えていることをご存じでしょうか?
原因としては、仕事場や家庭において生じるストレスによって免疫のバランスが不安定になり、発症していることが考えられます。特に女性の場合は、ストレスや不眠によって女性ホルモンのバランスが崩れやすくなりがち。ホルモンバランスの乱れにより、免疫が正常に機能しなくなってアレルギーを発症することにつながります。更年期や閉経を迎えるにつれて、その可能性は高まるといえるでしょう。

それホントに花粉症? なにか別の原因かも!
鼻が詰まる、鼻水が止まらない、目がかゆい…今のシーズンにそんな症状に陥った場合、誰もが「花粉症だ!」と一度は思うはず。しかし、実は花粉症ではない別の症状であることも多いそうです。
最も多い“花粉症もどき”の原因は風邪です。目のかゆみ、鼻水、喉のつらさ、さらにだるさや微熱が続いたりと、その症状は限りなく花粉症に似ています。また、花粉ではなくハウスダストなど他の物質が原因となっている「アレルギー性鼻炎」である可能性も。その際、花粉症対策をしても意味がなく、お部屋の掃除をするほうが先決です。
さらに「花粉症だと思っていたら虫歯だった」というケースも。虫歯によって奥歯の上にある「上顎洞」、これは鼻にもつながっている空洞ですが、ここに膿がたまることによって鼻水や鼻づまりが生じやすくなります。
大陸から飛んでくる「黄砂」にも注意が必要。ちょうど花粉症の時期に偏西風が吹き、日本に大量の黄砂が到達します。鼻水やくしゃみ、涙が出るといった症状も、花粉症と似通っています。黄砂の粒子は花粉よりもかなり小さいため、花粉症対策用のマスクよりもウイルスの侵入を防ぐ風邪用マスクの使用をお勧めします。
いずれにしても花粉症だと自分で決めつけず、まずは医師の診断を仰ぐことが大切といえるでしょう。




要注意!アレルギーになりやすい生活習慣とは?

アレルギーになる理由は、先天的な場合もありますが、特に大人の場合は生活習慣によるところが大きいといえます。アレルギーの原因物質を増やしてしまったり、免疫系のバランスが崩れがちになりやすい、「つい、やってしまいがち」な生活習慣をいくつか挙げてみました。思い当たるふしは、ありませんか?

じっくり“お風呂”!

熱いお風呂や長風呂はNG。肌をガードしている脂質が溶けてしまい、肌が乾燥してアレルギーの原因物質が体に侵入しやすくなります。40℃以上の熱いお湯や、長時間の入浴は避けるようにしましょう。また、ナイロンタオルで体をゴシゴシ洗いすぎるのも、同様に肌の脂質を奪い、肌を乾燥させてしまうので要注意。洗顔も、なるべく水かぬるま湯で行うのがおすすめです。

“油もの”大好き!

紅花油やコーン油など「オメガ-6系」と呼ばれる油を使った食事が多くなると、アレルギー反応を引き起こしやすくなる物質(ロイコトリエン)が精製されてしまうことに。摂り過ぎは禁物です。「オメガ-6系」の油も一概に有害とはいえませんが、しそ油やアマニ油などの「オメガ-3系」の油を使ったり、「オメガ-3系」を多く含むイワシやサバなど青魚中心の食事にシフトしてバランスをとりましょう。

“お掃除”ニガテ!

お掃除をサボると、どんどんホコリやダニの死骸・フンなどのハウスダストが蓄積してしまいます。特に大切なのが寝室のケア。週に1度はふとんを干すか乾燥機を使い、その後は掃除機をかけて、ダニの死骸やほこりを取り除くことが大切です。昨今では、ふとん掃除用のノズルも多種販売されています。また、シーツや枕カバーもこまめに洗濯すること。エアコンのフィルター掃除や空気清浄器の使用も効果的です。

ギラギラ“夜更かし”!

夜更かしをして睡眠不足に陥ると、免疫系のバランスが崩れやすくなり、アレルギー反応を起こしやすくなります。とりわけ、午後11時から午前2時頃までの間は、成長ホルモンが分泌され、新陳代謝が活発になる時間帯です。この時間帯は、肌や粘膜の再生にエネルギーが存分に使われるよう、寝ていることが大切となります。

体質改善に良い食材は?
アレルギー反応は、肌や口、鼻、目といった“外界との入口”に起きます。そのため、まずは「強く、健康な肌・粘膜」を作るために、食事にも気を配りましょう。意識して摂りたいのは、以下の3つの栄養素です。

【ビタミンA】
汗腺や皮脂が正しく分泌させる効果があり、肌や粘膜を乾燥から防いでアレルギー物質を体に入りにくくします。ビタミンAが豊富なのはレバーやうなぎ。また、βカロチンは、体内で必要な分だけビタミンAに変化する「βカロチン」を多く含むにんじんやかぼちゃ、モロヘイヤもおすすめです。

【ビタミンC】
皮膚や粘膜の代謝・再生を促すビタミンです。いちご、みかん、キウイ、レモンといったフルーツをはじめ、ブロッコリーや小松菜などに多く含まれます。特にほうれん草はビタミンAも豊富ですので、アレルギー対策としておすすめの食材。ちなみにタバコを吸う方は体内のビタミンCが失われがちなので、意識して摂るようにしましょう。

【タンパク質】
皮膚や粘膜の“素材”を作る栄養素です。肉、魚、乳製品、大豆などに多く含まれます。ただし過剰に摂ると、逆にアレルギーを引き起こす原因になるともいわれています。一方で、肉や魚を敬遠して野菜ばかり食べるダイエットをしている方は、タンパク質が足りずに肌が荒れがちに。毎食ごとに1品、肉か魚を食べる「ふつうの食生活」を送ることが大切です。




“【体験レポート】「血液検査」でアレルギーの原因を知る!

アレルギー対策として、まず真っ先に着手したいのは「アレルギー症状の原因となっている物質を遠ざける」こと。花粉症なら花粉を、ハウスダストが原因ならこまめなお掃除をすることが大切となりますが、そのためには「何によってアレルギー症状が出ているか」を突き止めなくてはなりません。

これまで述べてきたように、アレルギーの原因は多岐に及びます。「きっと花粉が原因だろう」と決めつけるのは禁物。そこで、実際に本誌の編集部員が、医師による血液検査を体験してきました。

皆様こんにちは、編集部員のIです。実は私、昨年の夏ぐらいから頭がかゆくなりまして、それに伴って肌にもかゆみを覚えるようになりました。

「きっとこれは汗疹(あせも)の一種だ。うん。間違いない!」と思っていました。しかし夏が終わり、秋が来て、冬がやってきた今もまだかゆい。それどころか、掻いたところに赤い湿疹ができて、それがどんどん体じゅうに広がってきました。もともと肌は弱く、これまでも似たような症状が出たことがあるものの、ここまでひどいのは初めて…ということで、クリニック(内科)へ行ってきました。

アレルギーのような症状が出た場合は、症状が出る部位の診療科(目なら眼科、肌なら皮膚科、ぜんそくなら呼吸器科)に行くことが一般的です。しかし私の場合は、肌と目に出ていたため、まずは内科で診てもらうようにしました。

症状をみた医師は「これはひどいですね」と一言。そして、以下のステップを提示してくれました。

体験レポート

まずは(1)から。これは、血液中にどれくらいアレルギー抗体(非特異的IgE)が存在するかを調べるもの。アレルギー抗体が多すぎると、体に侵入してくる物質に対して過剰に反応しすぎてしまい、ひいてはかゆみなどの症状が出るということです。この日は採血して終了。1週間後に再び足を運んでみると、医師が開口一番…

「とんでもない数値が出ました!」

とのこと。アレルギー抗体(非特異的IgE)の基準範囲、つまり正常な人は、数値が170以下になるところ、なんと私の場合は「4419」!医師いわく「重度の花粉症の方で、たまに4000を超えることがある」とのこと。これは…体験レポートにするには深刻すぎない!?


【STEP1】の検査報告書。重いアレルギー症状が出ている 人ほ ど、血中のアレルギー抗体(非特異IgE)の数値が高く なる。結果は、あからさまな陽性に!

しかし、良い機会と考えて治すしかありません。ステップは(2)に移ります。私と医師との間で、細かいディスカッションをして「何が原因か」を探ることになりました。喫煙の有無(なんと、タバコの煙の中にもニッケルが入っているとのこと!)、ペットの有無、夏から秋にかけての過ごし方、食事、自宅の周辺環境(植物の有無)など、事細かに質問され、それに答えていきます。うーむ、なんだか探偵さんと話をしているみたいだ。そこでひとつ、疑惑のカギを握る場所として浮上したのは「寝室」でした。夏、新しいクッションを購入し、枕と併せて使うようにしていたんです。「クッションの中の羽毛、もしくは海外製だと、羽毛を洗う際に化学物質を利用することもあり、それがアレルギーの原因になることもあります」と医師。その他、枕カバーとシーツをこまめに洗い、ふとんにも掃除機をかけることをアドバイスされました。

そしてステップは(3)へ。なぜ血液検査を2回に分け、間にディスカッションを挟むのかというと「基本的に、検査項目が一つ増えるごとにお金が加算されるんです。スギ、卵、ハウスダストの3つを調べたら、1つ調べた際の3倍の料金がかかります。経済的な意味でも、ある程度絞り込んでから検査したほうがいいんです」と医師。なるほど、ご配慮ありがとうございます。私はハウスダストやダニ、羽毛などいくつか調べてもらうことになりました。

結果は、やはり羽毛!さらにハウスダストやダニに対しても反応が出ました。原因はひとつに限らず、複合的に生じることも多いそうです。さっそくクッションを廃棄し、寝室の掃除も「これでもか!」というくらいにやっています。内科の医師から紹介された皮膚科にも通い、現在はほとんどかゆみを覚えなくなりました。ただ、掻きむしってしまったところが、治っても色素沈着して黒ずんでしまったのが難点…これも時間が経てば目立たなくなるとのことですが、やはり肝心なのは「早めの対応」です。アレルギーは、放っておくと悪化するもの。ぜひ皆さんの「怪しいな」と思ったら、まずは医師の診断を仰いでみるようにしましょう!