利尿や歯痛などに利用された生薬 |
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8月の前半は真夏の太陽が容赦なく照りつけ、日中は暑さのために木々の緑も弱々しく見えます。しかし、夕暮れが迫って辺りが薄暗くなってくると、大形の白いユウガオの花が目立つようになります。淡く澄んだ香りを漂わせ、夕闇にほんのり浮かぶ姿はとても優雅です。
ユウガオはアフリカまたは熱帯アジア原産のウリ科の蔓性一年生植物です。葉、蔓、果のいずれも軟毛が生えており、夏の夕方、葉腋に直径5~10cmほどの大形の白色合弁花を開花させます。しかし、翌日午前中にはしぼんでしまう、はかない命の花です。
ユウガオの名の付く植物の歴史を調べると、古代エジプトや紀元前の中国、ローマ時代にその名が使われていました。もっぱら瓶や容器に利用する栽培種だったことから、瓢箪か瓢の可能性が考えられます。 ユウガオの花を観賞用に楽しむのは日本だけで、1000年頃からユウガオを観賞するようになったようです。その代表が『源氏物語』(1001年頃)で、「夕顔の巻」では薄幸の女性にユウガオの花を重ね合わせた様子が描かれました。また、『枕草子』(1001~1004年頃)でも取り上げられています。江戸時代には、花の観賞を兼ねて夕顔棚の下で涼をとるのが盛んになり、絵画や詩歌の題材にされるようになりました。
心あてに それかとぞ見る 白露の 光そへたる 夕顔の花 夕顔は 煮て食ぶるに すがすがし 口に噛めども 味さえもなし 夕顔の 花で洟(はな)かむ おばばかな
日本名のユウガオは、夕方に花咲くことから名づけられ、「夕顔」と書くことが多いです。漢名は「壺蘆」ですが、「扁蒲」を使うこともあります。別名に「乾瓢」「瓢」「夜顔」「黄昏草」などがあり、名前の由来は用法や花の咲く時間帯です。学名のAgenaria leucanthaですが、属名はその果形から瓶の意で、種小名は花の姿と果実の形態から白い花という意味です。 出典:牧幸男『植物楽趣』 |