今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「石膏(セッコウ)」をピックアップしました。
解熱薬や下痢止め薬にも使われる |
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今回の生薬ものしり事典は、過去にご紹介した生薬百選より「石膏(セッコウ)」をピックアップしました。
生薬石膏の主成分は、含水硫酸カルシウムです。光沢のある白色の繊維状結晶塊で、砕くと針状もしくは繊維状の粉末となります。石膏は東洋医学では体を冷やす「寒」の性質があるとされ、漢方処方としては解熱用の「防風通聖散」や、止渇用の「白虎加人参湯」などが知られています。「小青龍湯」や「葛根湯」の効き方を変えることを期待して、石膏を加えて煎じる場合もありますが、石膏が湯液中に多少溶解するだけで薬効が変わるかどうかは不明です。ただ、石膏が溶解した湯液の組成を調べると、組成に変化が見られることから、石膏にはそれ自体の薬効だけでなく、他の生薬成分に影響を及ぼして湯液全体の薬効を変える働きもあるのではないかとみられています。
生薬で用いられる石膏は「繊維石膏」ですが、生薬以外に用いられる石膏には、無色透明の「透明石膏(セレナイト)」や、細かい粒状の「雪花石膏(アラバスタ)」などがあります。また、砂漠のオアシスが干上がるとき、水に溶けていた硫酸カルシウムが析出し、結晶が花弁のようになったものは「砂漠のバラ(デザートローズ)」と呼ばれ、パワーストーンとしても知られています。砂漠のバラは白っぽいものから赤褐色のものまであり、大きさもさまざまです。写真は500円硬貨の何倍もある大きな標本です。側面から観察すると凹凸に富んでいますが、こうした形状になる理由はいまだ解明されていない神秘的な鉱物です。
このように、石膏と一言でいっても、形状も色もバリエーションに富んでいます。冒頭では大顔面の像をご紹介しましたが、石膏は生薬から建築材に至るまでさまざまな顔を持つ非常にユニークな鉱物といえます。 |