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生薬ものしり事典 26 老化を防ぐ健脳の木の実「くるみ」


強い抗酸化力で
心臓血管病や認知症予防に!

養命酒商品開発センター 丸山徹也 研究員

私の住んでおります長野県はくるみの生産量が1位の県で、くるみはいろいろな料理に用いられています。たとえば「五平餅」という郷土料理があり、通常はごま味噌が使われますがくるみ味噌もあり、くるみと味噌を混ぜて山椒の風味でおいしくいただけます。この他ほうれん草のくるみ和えのようにして用いられます。他県ではNHKのドラマ「あまちゃん」に登場した郷土料理「まめぶ汁」の中に入れる「まめぶ(団子)」にくるみが使われています。

くるみ味噌の五平餅

ほうれん草のくるみ和え



漢方でくるみは胡桃肉(ことうにく)または胡桃仁(ことうにん)と言われ、腰や膝をケアする作用があるとされ、腰痛、腰が重い、下肢の無力という場合に杜仲、補骨脂のような他の生薬と組み合わせて用いられます。薬膳では老化を防止する「健脳の木の実」として料理に用いられたりしています。それを裏付けるように脳を保護し、認知症の1種であるアルツハイマー病の発症リスクを抑える可能性を示唆した論文もあります。
またくるみには強い抗酸化力があり、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツなどのナッツ類の中では最も抗酸化力が強いとされています。これはくるみは生のまま食べるのに対してくるみ以外のナッツは必ずローストしていることによります。くるみは抗酸化力が強いだけでなく、心臓血管障害を予防するオメガ3(スリー)というタイプの脂肪酸が豊富に含まれています。これらの相乗効果により、心臓血管系の病気のリスクを低減させるとの論文が提出されています。
日本ではまだ表示が認められていませんが、EU諸国ではくるみに対して「血管のしなやかさの改善に寄与します」という機能性表示が認められています。ナッツ類でこのような表示が認められているのはくるみだけです。
抗酸化作用が強い食品は酸化を受けやすいとされますが、くるみの場合には殻が酸化による劣化を守っています。くるみの抗酸化作用を期待する場合は殻つきを購入して、食べる時に割って食べるのが理想的です。くるみの殻を割るにはくるみ割り器のような専用の道具が必要となりますが、長野県のくるみの産地の住民の多くの方はなんと素手でこれを割ることができます。くるみを2つ使用して、硬いところと割れやすいところを合わせて力を入れることがコツのようです。
ところで私が小学校低学年の頃に「素浪人 月影兵庫(つきかげひょうご)」というテレビドラマがあり、主人公が常にくるみを2個持っていてこすり合わせて鳴らせていました。この動作は握力を強化するだけでなく、くるみの不規則な凹凸が手のツボを刺激して認知症の予防にもつながるとされています。
くるみは食べて健脳、心臓血管系の病気の予防、食べなくても手のひらで動かして認知症予防ができるすぐれものです。