暑い夏に食欲をそそられるスタミナ料理といえば、代表的な食材なのがニンニク。少量でも存在感溢れるその強烈な香味は、中国料理や韓国料理、フランス料理、イタリア料理、スペイン料理など、各国の料理に欠かせません。ネギ属の多年草であるニンニクは、食用には主に球根を使いますが、葉や「ニンニクの芽」と呼ばれている花茎を香味野菜として料理に使う場合もあります。
ニンニクは生薬としてもさまざまな効能が認められており、現代医学でも「がんを抑制する食べ物」の筆頭に位置づけられています。また、疲労回復にも役立つとされ、栄養ドリンクや健康サプリメントなどにもニンニクの中の薬効成分が使われていることがあります。そんな多彩なニンニクの薬効成分について、養命酒中央研究所の鈴木和重研究員が解説いたします。
多彩な薬効成分がぎゅっと凝縮したニンニク 養命酒中央研究所 鈴木和重研究員 |
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ニンニクは生薬名を「大蒜(たいさん・だいさん)」と言い、古くから胃もたれや腹痛、下痢、寄生虫症などに応用されています。また、最近の研究では高血圧、高脂血症に対する効果や血液が固まるのを防ぐ作用があることが報告されています。 ニンニクに含まれる成分として、イオウ化合物のアリイン、アリシン、スコルジン、アホエンやビタミンB1などが知られています。 アリインそのものは無味無臭ですが、細胞内の酵素によって刺激的かつ独特なにおいを有するアリシンに変化します。 スコルジンは、ニンニク特有のにおいに関係しない無臭の成分で、血液の流れをスムーズにする働きや血中の余分なコレステロールを排除する働きがあります。 ビタミンB1は、疲労回復に重要な成分ですが、アリシンと結合してアリチアミンという物質になると酵素によって分解されにくくなり、体内で有効に働きます。
アホエンには、強い抗酸化作用や血液凝固抑制作用、記憶力向上作用があることが知られています。このように、ニンニクは成分同士が密接に関係しながら効果を発揮する特徴があるといえます。 また、ニンニクの成分や効果は、料理法によっても変化します。アリシンの抗菌作用を期待するときは生のスライスが効果的であり、抗酸化作用の強いアホエンはニンニクを低温加熱すると得られるので、さっと炒める方が効果的といわれます。また、スコルジンはニンニクを高温加熱した際にアリシンが変化して作られます。 なお、ニンニクは一度にたくさん食べると貧血や腸内細菌のバランスを崩したり、胃を荒らしたりする可能性もあるので、食べすぎにはくれぐれも注意したいものです。 。 |