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生薬百選 90 牽牛子(ケンゴシ)


2011年8月8日 撮影
暑い日が続いて言いますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。今回は私達にとって最も身近であり、夏の風物詩ともいえる植物、「アサガオ」の話です。
我が家では昨年から、小学2年生になる息子が種を播き、日々水やりをして育てています(実は母親の仕事)。右の写真は今年育てている最中のアサガオで、7月25日頃から花が咲き始めました。

アサガオといえば美しい花を連想しますが、生薬になるのは種の方で、花や葉ではありません。そしてその生薬名は「牽牛子」(けんごし)といいます。その名の由来は、当時高価であった種子が手に入ると、牛を牽(ひ)いていき謝礼にしたという説や、七夕伝説に登場する牽牛星から来ているという説があるようです。また、牽牛子には黒っぽい色の黒牽牛子(黒丑)と白っぽい色の白牽牛子(白丑)がありますが、色による使い分けは明確ではないようです。

生薬としての牽牛子は粉末にして、下剤として用いられてきました。作用が強く、ファルビチンという瀉下成分を含んでいますので、使用の際には医師・薬剤師等、専門家の指導が必要です。

牽牛子(けんごし)
牽牛子(けんごし)


さてこのアサガオ(Pharbitis nil Choisy)、昔から日本にあった植物だと思っていましたがそうではなく、平安時代(奈良時代とする記述もあります)に中国から渡来してきたと推測されています。
もともとは薬用の目的で伝来したようですが、花が大変美しかったため、観賞用植物として広まりました。特に江戸時代には品種改良が盛んになり、園芸植物としては稀にみるほどの、様々な種類が生み出されたとのことです。
来年は子供を連れて、どこかの「朝顔市」にでも出向いてみたいなと思いました。


■林 克彦(養命酒中央研究所・基礎研究グループ)