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健康診断の雑学


バリウムはなぜあんな味?500円で検査が受けられる意外な場所とは?なぜ「人間ドック」って呼ばれてるの?──健康診断にまつわる雑学です。


バリウムが使われている、意外な“夏の風物詩”とは?


胃や食道、腸などのX線撮影(レントゲン)の際に飲む白い液体、バリウム。つらい思いをして飲み干した経験のある方も多いと思います。

バリウムは、原子番号「56」の元素。ギリシャ語で「重い」を意味する「barys」が語源になっているだけあって、実際に重いアルカリ土類金属です。レントゲン撮影の前に飲むのは硫酸バリウムという化合物。なぜ飲むのかといいますと、バリウムにはX線を通さない性質があるからです。バリウムを飲むことにより、消化器官の形や壁面を鮮明に撮影することができるようになります。

そんなバリウムですが、年々改良が進み、飲み干す量も昔に比べて随分と減ったそうです。中には、グレープやメロン、イチゴなど果物の香料をつけたものも登場しています。とはいえ、ほのかに果物の香りがするくらいで、当然ながらジュースのような美味しさはありません。「もっと美味しくできないの?」と思われるかもしれませんが、あまり美味しいと、胃が活性化して胃酸が過剰に出てしまい、正しく撮影できなくなるそうです。“美味しくない”ということも、検査には一役買っているというわけですね。

ちなみに、バリウムの他にもX線を通さない物質はあります。鉛などもそうですが、体にとって安全であること、比較的安価であることからバリウムが造影剤として使われています。ちなみにバリウムは、塗料や顔料、ゴム、プラスチックなどにも使われています。意外なところでは花火。炎の中で、バリウムは緑色の炎色反応を起こします。バリウムが夜空に打ち上げられているとは驚きですが、そう考えながら花火を観ると、ちょっと風流さに欠けますね(笑)。

健康診断の「ドライブスルー」!?


会社勤めの方は健康診断を受診する機会も多いと思いますが、それ以外の人々に対してのケアや健康診断の機会をどのように作るかが、社会的にひとつのテーマになっています。

今年の4月、山陰自動車道の淡河PAと三木SAで施行されたワンコイン(500円)の健診サービスもその一環です。「健康診断を受けたいけれど、時間がない」という方に向けたサービスで、主な対象者はドライバーの方々です。ドライバーの健康不良は、交通事故にもつながりかねません。血糖値や総コレステロール、中性脂肪、骨密度・血圧、肺年齢など、1項目につき500円、すべての検査を受けるセットメニューだと、少しお得な2000円という価格設定で実施されました。

この取り組みをNEXCO西日本と共同で行ったのが、東京・中野でワンコイン健診を実施している「ケアプロ中野店」。血糖値と総コレステロール、中性脂肪の検査を各500円で受けることができます。さらに保険証も予約もいらず、診断結果は受診後30分以内に携帯サイトで確認することも可能とあって、自営業者の方やフリーターにも好評を博しているそうです。

その一方で、体の隅々まで総合的にチェックする「人間ドック」を利用する方もいます。「体の異変をチェックする」という目的は通常の健康診断と同じですが、検査項目の多さが特徴です。検査項目が多い分、拘束時間も長く、短くても半日を要すことが一般的。中には、高級ホテルの宿泊や温泉地のツアーをセットにしたコースを設けているクリニックもあります。

人間ドックは1954年に、国立東京第一病院(現在の国立国際医療研究センター病院)で始まりました。初日となった7月12日は「人間ドックの日」として記念日になっています。といっても当初は「短期入院精密身体検査」というお堅い名前でした。このサービスを報道した新聞が、初めて「人間ドック」という言葉を見出しで使い、インパクトの強さから普及していったといわれています。「ドック」とは、もともと船を停泊して修理を行う施設のこと。作家の山田風太郎は自著の中で、明治時代の陸軍大将、大山巌が「人間も船と同じでドックに入って検査しないといかん、と言っていた」と書いていますので、もしかすると命名のルーツは大山巌かもしれません。

忙しい現代社会ではありますが、元気に暮らせるのはひとえに健康であればこそ。お手軽な健診から人間ドックまで、自分に合ったスタイルで健康をチェックしてくださいね。

富裕層限定?中国のニッポン健康診断ツアー


中国に端を発する東洋医学にも、当然ながら人間の健康状態を見極める“診断”があります。その基本になっているのは「四診(ししん)」と呼ばれる4つの方法です。

まずは「望診」。「望」は“見る”の意です。体つきをはじめ、眉間や頬、眼球、皮膚など、色や艶などを細かく見て診断します。舌をみて診断する「舌診」もそのひとつ。色や苔、乾燥具合などで判断します。

次に「聞診」。声のトーンや調子、息遣いの荒さやペース、体臭や口臭などの匂いを観察することも含まれます。病状にもよりますが、西洋医学ではあまり行われず、東洋医学ならではの診断法といえます。

「問診」は、医師の問いかけに患者が答えること。「今、どこが痛いか」という直接的な質問だけでなく、普段どんな食事をしているか、どんな部位に冷えを感じるか、自身やその家族はこれまでどんな病気をしたかなど、細かく聞いていきます。

「切診」は、“切る”わけではなく“押さえる・触れる”という意味合いの診断です。主に、手首の動脈にあたる部分などを触り、体を巡っている経脈を診断する「脈診」と、お腹を触って診る「腹診」があります。腹診の研究は日本でも盛んに行われてきました。西洋医学でもお腹を触って診ることはありますが、足を曲げて触る西洋に対して、東洋は足を伸ばして診る等、触り方や診断方法が異なります。

東洋医学ではこの4つを行い、総合的に判断することになります。ただ、現在の中国で伝統的な東洋医学を施す病院でも、健康診断時には、西洋医学にみられる血液検査などを導入しているところがほとんどです。これに加えて、従来の「四診」を適宜活用している状況です。

ただ、中国の方の中には「観光するついでに、医療水準が高い日本で健康診断やがん検診を受けよう」という富裕層もこのところ増えつつあります。昨今、西洋文化が一気になだれこんでいる中国都市部では、日本と同様にメタボや生活習慣病が問題化しつつあります。それらのリスクを日本で測ろう、というわけです。気になるお値段ですが、中国の平均的なサラリーマンの年収と同じくらいになるケースもあるほど!まさに富裕層限定ですね。

ちなみに、中国人の健康意識は元々高いといえます。具体的な例ですと、お茶。日本ではコンビニに行けばすぐに冷たいウーロン茶が手に入りますが、中国の場合は冷やしてお茶を飲む習慣がありません。「お腹が痛くなったりして体によくないのに、なぜ冷たいものを飲むの?」という感覚です。事実、中国のコンビニでは、夏の盛りであっても通常の棚にペットボトルのウーロン茶や缶ビールが並んでいることが多く、常温で飲む方が多いようです。冷蔵ケースもありますが、日本よりも温度が高めに設定されていることがほとんどです。

健康診断を受けることはもちろん、普段の生活の中でも健康を意識して、日々を元気に過ごしたいものですね。