HOME > 生薬百選 > 【2011年5月号】生薬百選 86 ボタンピ
冬の長い信州も5月ともなればやっと温かさも増し、寒がりの私もようやく厚着を止める事が出来るようになります。冬の寒さがすっかり遠ざかり、夏の暑さもまだまだ来ないこの時期には、多くの植物が花を咲かせます。
花と言えば、昔から綺麗な女の人を花に例えて「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言いますが、これら3つの植物はただ綺麗なだけではなく、昔から薬用植物としても利用されてきました。芍薬、百合に関しては以前にこのコーナーで紹介致しましたので、今回は牡丹について紹介したいと思います。
牡丹の花
牡丹はボタン科ボタン属の落葉小低木の植物で、原産地は中国西北部と言われています。生薬としては根の皮が使用され、成分はペオノール、ペオノライド、ペオノサイド、ペオニフロリンといったものが含まれています。用途は主に消炎、解熱、鎮痛に用いられています。牡丹皮を使用した漢方薬には大黄牡丹皮湯、六味地黄丸、八味丸といったものがあります。
ボタンピ
また、牡丹は大きく華やかな花が咲くことから、中国では古くは唐の時代に観賞植物として人気を博し、「花の王」と言われるようになりました。その後も園芸植物として長く愛され続け様々な品種が生まれ、中国を代表する花の一つとされています。
日本にも早くから輸入されており、平安時代には既に栽培され、文学に登場したのは「枕草子」が最初でした。以降、日本でも様々な文学、絵画に題材として取り上げられました。
美人の例えとして用いられる一方で、花言葉が「王者の風格」であったり、「百獣の王」との組み合わせである「牡丹に唐獅子」が広く好まれたりと、勇ましいイメージもまた持っているのは、牡丹の花の威風堂々とした雰囲気からでしょうか。